リノベーションで叶える理想のキッチン
家族が集まる空間5選
忙しい日々の中でも、食事の時間を通じたコミュニケーションを大切にしている家庭は多いのではないでしょうか。リノベーションによって、キッチンは単なる調理のための機能的な場所から、家族や友人との団らんを育む空間へと生まれ変わります。
そこで今回は、コミュニケーションを深める理想的なキッチンをつくるためのポイントを、具体的な事例を交えながらご紹介します。
コミュニケーションが深まるキッチンをつくるには
コミュニケーションを生み、家族や友人との関係性を育むキッチンとは一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、5つの観点から家族の中心になるキッチンのつくり方を見ていきましょう。
・オープン/セミオープンの選択
キッチンとダイニングをひと続きにするオープンスタイルや、一部だけ繋げるセミオープンにすることで、開放感を演出できます。どちらも互いの顔を見てコミュニケーションを取りながら調理や食事ができるのが魅力ですが、セミオープンであればキッチンの生活感を程よく隠せるメリットもあります。
また、アイランドキッチンは料理をしながら会話を楽しむための中心的な場としても最適。まるでレストランやバーのようなくつろぎ空間を演出できます。
・視覚的なつながりをつくる
料理をする人とくつろいでいる人が交流しやすくするためには、空間に視覚的なつながりを持たせることが大切です。キッチン内の視線が通りやすいように、目線よりも低いデザインの収納家具を選んだり、透明感のある素材を使用した仕切りを選ぶなど、空間がシームレスになるよう意識をしてみましょう。そうすることで、ちょっとした声かけやアイコンタクトを取りやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。
・くつろげる座席エリアを設ける
キッチン内に座ってくつろげるスペースを設けるのもポイントです。カウンターにハイチェアを設置すれば、バーのようにお酒を楽しむことができ、ホームパーティーでも活躍します。椅子やベンチを配置することで、立ち仕事に疲れたときは座って休憩することもできます。家事とくつろぎを近付けることで、より居心地のよい空間となるでしょう。

・暖かな色合いと素材選び
キッチンの色味や素材感は、空間全体の雰囲気に大きな影響を与えます。コミュニケーションの場として選ぶなら、人をホッとさせるような暖かな色味や、木材・タイルなど質感を感じられる素材がおすすめです。リラックスできるような空間づくりを心がけることで、自然と会話が弾むようなスペースになるでしょう。
照明にも電球色など柔らかな光を用いることで、居心地の良い空間を演出できます。
・収納の配置を工夫する
収納への工夫がコミュニケーションを促すこともあります。お皿やコップなどの食器収納はキッチンに置くことが一般的ですが、あえてリビング側に設けるのもひとつのアイデアです。「お皿を出して」や「コップをしまって」など、家族が手伝いやすい環境をつくることで、キッチンに立つ習慣が身につくかもしれません。特に、料理が好きなご家庭ならみんなでつくる楽しさを日常的に感じられ、より充実した時間になるでしょう。
家族が集まる居心地のよいキッチン事例5選
それではリノベーションによって、理想のキッチンを実現した事例を5つご紹介します。
1:仕事と暮らしが調和するキッチンへ
築19年の中古マンションをリノベーションしたFさん夫婦。企業に勤めながら楽曲制作を趣味とする旦那さまと、料理研究家として活動する奥さまにとって、住まいは活動拠点でもあります。

夫婦それぞれの仕事や趣味のための専用スペースを確保しながら、キッチンが中心となるようなLDKにしたことで、自然とコミュニケーションが生まれる工夫を施しました。
料理の撮影やアシスタントと作業をするため、広めのキッチンが必要だったFさんは、キッチンと作業台、収納を並べて設置。これにより複数人で立っても余裕のある作業スペースを実現しました。
さらに収納スペースの窓際にデスクワークできるスペースを設けたことで、テレビや雑誌の撮影時もスムーズに仕事を進められるようにしています。
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<リノベーションデータ>
所在地:埼玉県川口市
居住者構成:2人
専有面積:80.22㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:2003年
リノベーション竣工年:2024年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/21034
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2:家飲みキッチンから臨む都会の眺望
建築好きという共通の趣味を持つTさん夫婦は、スカイツリーを眺めながらゆったりお酒を楽しめる空間を求めてリノベーションをしました。

最初に決めたのは、キッチンを住まいの中心に配置すること。料理をすることやお酒を嗜むことも夫婦共通の趣味ということで、キッチンに立つ時間をより豊かになるよう心がけました。

ラワン材のキッチンカウンター側面、樹脂モルタルの天板が、フローリングのチーク材と調和し、温かみのある雰囲気を醸し出しています。
収納の工夫にも注目です。キッチンのダイニングテーブル側にお茶碗や取り皿、グラスなどを収納しています。これにより、食事中にお皿が足りなくなったときも、ダイニング側から器を取り出せるようになりました。
お手伝いが好きなお子さんのために、収納できるスライド式の専用台座を設置。家族での食事の時間を豊かにする工夫が詰め込まれています。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都墨田区
居住者構成:夫婦+子ども1人
専有面積:64.77㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:2003年
リノベーション竣工年:2019年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/7271
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3:料理上手なクリエイター夫婦のフラットなキッチン
コンロと作業台、ダイニングテーブルをフラットにつなげた一体型のキッチンを設置したMさん夫婦。ふたり揃って大の料理好きで、休日は揃ってキッチンに立つことも多いため、互いがスムーズに動きやすく、ストレスなくすれ違えるよう回遊性を確保することが必須でした。
採用されたⅡ型キッチンは、シンクが壁側、コンロがテーブル側に配置され、振り返るだけで作業ができる効率的な設計に。ダイニングテーブルを挟んで2本の動線があるためキッチン内を回遊できるようにして、のびのびと作業できるようにしています。

キッチンの引き出しなどのアイテムにIKEAを採用し、表面の仕上げだけを造作しています。DIYした上部の棚には、日常的にもよく使うデザイン性の良いキッチングッズを置いています。一方、隠したいものはしっかりと隠す収納を目指しました。
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<リノベーションデータ>
所在地:神奈川県横浜市
居住者構成:夫婦+子ども1人
専有面積:86.38㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:1973年
リノベーション竣工年:2017年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/1105
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4:ランチタイムとバータイムのあるキッチン
東京への転勤を機に、築浅のマンションをリノベーションして、暮らしやすくつくり替えたOさん夫婦のお住まいです。料理好きの旦那さまの希望の「キッチンが住まいの主役の家」を実現しました。

LDKの中心には、窓を背に横向きに配置されたオープンキッチンを設置し、床が一段高くなった小上がりのダイニングテーブルと連続させています。

昼間は家族でカフェのように食事やティータイムを楽しみ、夜には照明のトーンを落とすことでバーのような落ち着いた空間に早変わり。
キッチンの壁には大判のグレータイル、頭上には黒いスチールのペンダントライトを設置。

ペンダントライトは調光機能付きで、時間帯によって光の強さを調整し、空間の印象を変える効果もあります。並べられたお酒のボトルと相まって、バーカウンターのような雰囲気を演出しています。
キッチンの配置をはじめ、照明や素材感の工夫によって、同じ場所ながら時間帯によって異なるシーンが生まれるユニークな空間が実現しました。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都多摩市
居住者構成:夫婦+子ども2人
専有面積:72.50㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:2013年
リノベーション竣工年:2022年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/15341
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5:厨房を参考にしたL型ステンレスキッチン
月に1~2度は友人を招き、料理の腕を振るうというFさん夫婦。「自分が思い描く通りのキッチンをつくってみたい」というテーマでリノベーションしました。

飲食店での調理経験を持つ奥さまが希望したのは、業務用厨房さながらのオールステンレスのL型キッチン。

熱いものを直接置ける、掃除をしやすいというメリットを活かしつつ、シンクの上には重い鍋やフライパンなどを置けるステンレスのつり棚もつくり付けました。シンクや家電が両側から使えるように設計されているのもポイントです。

綿密な収納計画にも注目。お気に入りの器から調理道具まで、使う頻度に合わせて収納できるよう、オープンな棚やリビング側から取り出せる引き出しなど、予め使用シーンを想定してつくり付けています。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都大田区
居住者構成:夫婦+子ども1人
専有面積:66.46㎡
間取り:1LDK
既存建物竣工年:1984年
リノベーション竣工年:2016年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/1008
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キッチンリノベーションで気をつけること
理想を実現させたそれぞれの事例を見て、意識すべきポイントがわかったところで、実際にリノベーションをする際に気をつけるべき点を解説します。
①配管やレイアウトの制約
理想的なキッチンの配置が実現できるかどうかは、既存の配管や移動可能な範囲によって変わってきます。特にマンションのリノベーションでは、配管の位置や壁の構造によって移動できる範囲には制限があることが多く、理想とするキッチンを叶えられないこともあります。
そのため計画の初期段階で、住まいづくりの専門家としっかり相談し、既存の状態を確認した上で、実現可能なレイアウトを検討しましょう。
②メンテナンス性を考慮に入れる
キッチンは油はねや水垢汚れなどが起こりやすい場所でもあるため、メンテナンスをしやすい素材や構造を選ぶことが大切です。例えば、汚れが付きづらく拭き取りやすい素材の天板や継ぎ目の少ないシンクを選ぶことで、清潔な空間を保つことができます。デザインと合わせて機能性や掃除のしやすさにも配慮してみましょう。
③収納計画の重要性
オープンなキッチンは、コミュニケーションの中心となるのが魅力ですが、一方で、生活感が出やすくなる傾向にあります。理想的な空間を保つため、事前に収納計画をしっかり立てておきましょう。食器や調理器具、食材などを十分に収納できるスペースを確保することで、美しいキッチン空間を維持できます。
見せる収納と隠す収納を組み合わせたり、造作家具を設置するなど、家族のスタイルに合わせて最適な収納方法を検討してみましょう。
理想のキッチンを思い描いて
リノベーションによってキッチンは、単なる調理場所という枠を飛び越え、コミュニケーションの中心となる空間へ生まれ変わります。リノベーションを通して、家族が思い描くキッチンを実現させ、理想のライフスタイルへ近づけてみませんか。