ダークトーンの大人空間を、家具やアートで彩る
- マンション
- 所在地:
- 東京都北区
- 居住者構成:
- 1人
- 専有面積:
- 62.94㎡
- 間取り:
- 1LDK
- 既存建物竣工年:
- 1992年
- リノベーション竣工年:
- 2021年
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玄関を入ると左手に約4.8帖の寝室。そこからつながる約3帖のウォークインクローゼットもある。右手に浴室、洗面室とトイレが一体となった水まわりがあり、キッチンへとつながる動線にもなっている。廊下の先には約18.6帖のリビングダイニングキッチンが広がる。水まわりとキッチン、窓辺の一部の床にタイルを採用し、空間にメリハリをつけている。
2回目のリノベーションとして、リビタの一棟まるごとリノベーションの物件を選んだTさん。自由設計でこだわりを詰め込み、自分好みの空間を実現しました。時間をかけて選んだ家具やアートが加わり、ようやく完成したという理想の住まい。建物全体の資産価値を高める一棟まるごとリノベーションの魅力をはじめ、自分のライフスタイルに合わせた間取りのつくり方など、経験者ならではの視点が活きた住まいづくりについてお話を聞きました。
建物全体の資産価値も向上させる
一棟まるごとリノベーションの魅力
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――リビタの一棟まるごとリノベーションの物件を選んだ経緯を教えてください。
Tさん 実は分譲を購入してリノベーションするのは2回目で、最初のリノベーションでは、間取りを少し変えて、仕上げもシンプルなものを選んで住んでいました。満足して暮らしていたのですが、いろいろなものを見聞きしているうちに、もっとこだわって思い切ってリノベーションをやってみたいという気持ちが大きくなってきたのです。賃貸暮らしも経験し、次のステップに進みたいと考えて住み替えをすることに。そんなときに、たまたま見つけたのがこの物件です。前に住んでいたエリアより少し都心から離れるのですが、川が近くにあり、自然豊かな周辺環境にとても惹かれました。ちょうどコロナ禍で働き方が見直されていた時期。リモートワークが増えて、家で過ごす時間も多くなっていたので、静かな落ち着いたエリアで暮らしたいと感じていました。
――一棟まるごとリノベーションについて、魅力を感じたポイントなどはありますか?
Tさん 構造や共用部、配管など、建物全体をしっかり調査して、必要なリノベーションがされているところです。将来的にも安心して住み続けられることはもちろん、自分の住戸だけではなく建物の資産価値も向上していると感じています。1階にはレンタルスペースがあるのですが、日替わりでカフェなどを営業していて、イベントが開催されることもあります。ファミリーが多く、ママたちがランチに集ったり、学校帰りの子どもたちといっしょにお茶を楽しんだりしている様子もよく見かけます。マンションにコミュニティスペースがあっても、なかなか利用されないケースがあると思いますが、ここでは街に開かれた場所として、住人やご近所の方々が交流できる場所になっている。こういった場所が住まいの一部にあることは大きな楽しみの一つになっています。
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――同時期に棟内で複数の物件が販売されていたと思いますが、この部屋を選んだ理由などはありますか?
Tさん このマンションはファミリータイプの部屋が多い中で、面積が一番コンパクトだったことと、低層階のほうが予算的にも条件に合っていたので、3階の60㎡強のこの物件を選びました。角部屋で採光が2面から取れるのも大きなポイントでしたね。低層階ですが、ちょうど窓の高さから河川敷の緑が見えて、抜けもあり、高層階とは違った景観の魅力があると感じています。
ワークスペースはつくらずLDKを充実。
広々とした水まわりと回遊動線も実現
――自由設計で、間取りも仕上げもフルリノベーションされていますが、どのようにリクエストされましたか?
Tさん LDKをできるだけ広くしたかったのと、明るく白っぽい空間ではなく、少し暗めのダークトーンで、どちらかというと男性的なイメージの住まいにしたいとお願いしました。読書が好きで、本がたくさんあるので本棚を造作でつくりたいというのもマストでした。細かいところでは、「FUTAGAMI」というブランドの真鍮のスイッチプレートを使いたいとか、森田恭通さんがデザインした「SUTTO」という水栓を使いたいとか、ディテールのパーツなどもイメージしていたものがあったので、具体的にお伝えしました。
――スイッチプレートや水栓など、具体的なアイテムを指定することで、空間のデザインを導くきっかけになりそうですね。
Tさん 採用したいと決めていたものは、具体的にお伝えしました。リノベーション全体のテイストについては、「床はウォルナットに」「黒のスチールを使いたい」とか、もっと具体的に伝えることもできたと思うのですが、「男性的」という抽象的な表現で伝えて、建築家の方に自由にアイデアを提案してほしいと考えました。
――造作の本棚はイメージしていたデザインなどはあったのですか?
Tさん 壁一面の本棚に憧れがあったのですが、壁の一部を青のポーターズペイントで塗装したいという希望があり、壁として残す面積とのバランスから、このくらいの高さがいいのではとご提案いただきました。圧迫感もなく、二面の壁を好きな色で塗装できてとても気に入っています。
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――リモートワークも多いとのことですが、ワークスペースはつくらず、LDKと寝室というシンプルな間取りになっていますね。
Tさん リモートワークのときは、ダイニングテーブルで作業しています。私は個室やワークデスクがないと集中できないというタイプではないので、最初からワークスペースをつくるつもりはありませんでした。寝室もベッドが置けるだけの空間にして、その分LDKを広くしてゆったりと過ごせる場所にしたかったのです。ダイニングテーブルで仕事や食事をする以外にも、ソファで本を読んだり映画を観たり、ほとんどの時間をLDKで過ごしています。
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――ワークスペースをつくらない分、水まわりも広々としていて、回遊できる動線やたっぷりの収納など、全体的に余裕のある空間になっていると感じます。
Tさん 水まわりは洗面とトイレを一体にして、猫のトイレを置けるようにゆったりとつくってもらいました。トイレを個室にしなかったことで、広さをキープできていると思います。普段は扉を開けたままにしているので、猫も家中を自由に回遊できて快適に暮らしている様子です。
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時間をかけて探した家具やアート。
必要なピースが埋まって住まいが完成
――リモートワークのときに、仕事と暮らしの切り替えで工夫していることなどはありますか?
Tさん もともと仕事と暮らしはシームレスでも気にならない方で、ダイニングテーブルでノートパソコンを開けば、すぐに仕事モードに切り替えることができます。気をつけているのは、夜までダラダラと仕事を続けないこと。窓から自然光が入ってくる時間帯に集中して作業をするようにして、できるだけ定時に仕事を切り上げるようにしています。昼と夜ではLDKの雰囲気も異なるので、夜になると自然にプライベートな時間という感覚になるのかもしれません。夜はミニマルな間接照明で暗めの空間にして、プライベートな時間を楽しんでいます。
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――ダイニングテーブルやソファなど、存在感のある家具が目を引きます。家具はどのように選んだのですか?
Tさん 家具は住み始めてからいろいろ探して、最近ようやく納得できるものが揃えられたと感じています。ダイニングテーブルとシングルソファは、「マルニファニシング」のものです。マルニ木工が自社の古い家具を、現代の暮らしに合わせて、塗装や張り地を直してアップサイクルして販売しているもので、家具のリノベーションともいえる取り組みです。デザインはもちろんですが、そのコンセプトにも共感して、これらの家具を選びました。このシングルソファをSNSで見た瞬間、クラシカルな脚に釘付けになり、これを置いたらどんな素敵な空間になるだろうとワクワク。すぐに購入を決めました。「HIROSHIMA」というチェアもマルニ木工のもので、ずっと憧れだったもの。こちらは新品を購入しました。ドットのファブリックのチェアは「ミナ ペルホネン」のもので、こちらも北欧の中古家具をミナの生地で直し販売されているものです。IDEEの2人掛けのソファはもともと持っていたものですが、ファブリックをマルニファニシングさんで張り替えてもらい、使い続けています。
――壁に飾られた写真やアートなども空間のアクセントになっていますね。
Tさん 青い壁に青っぽい窓の写真が映えそうだなと思って、展覧会で一目見て購入を決めました。廊下の壁はソファに座ったときに目線がいく場所で、ほっとするような温かみのあるアートを飾りたいと思って、探していたところ見つけたものです。入居してから3年くらいかけて、ずっと悩んでいた家具が決まって、アートや写真なども偶然の出会いがあって、必要なピースが少しずつ埋まっていき、今やっと理想の住まいが完成したという感覚。住まいづくりは間取りや仕上げだけではなく、家具やアートがとても大切だと実感しています。