<後編>doredo OPEN Meeting vol.1 イベントレポート『サーキュラーエコノミーと国産材活用』|住まいのヒント

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<後編>doredo OPEN Meeting vol.1 イベントレポート『サーキュラーエコノミーと国産材活用』

目 次
  1. 1不当に安い国産材を、地域内エコノミーに活用する。
  2. 2思いや愛情がのったモノに、国産材の活路がある
  3. 3視聴者Q&A

近年、サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉を聞く機会が増えています。これは、地球の資源は有限であるという現実を直視し、これまで廃棄していた製品や原材料を資源と捉え、廃棄物を出さずに資源を循環させる経済を指します。環境保全の機運が高まり、資源の再生を前提にしたモノづくりが求められる社会の中で、住宅産業にも変化が必要です。スクラップ&ビルドではなく循環経済社会における住まいはどうあるべきか? サーキュラーエコノミーのために住宅産業ができることは何か? 明確な回答のない問いに向き合うために『doredo OPEN Meeting vol.1』と題してオンラインイベントを開催しました。 ここでは、2021年4月22日に4人のゲストを迎えたトークイベント『循環型社会における住まいのあり方と国産材によるものづくり』の模様を前後編でレポートします。

doredo open meeting

ゲスト
・林野庁 林政部 木材利用課長 長野麻子さん
株式会社ロフトワーク 共同創業者取締役会長 林千晶さん
VUILD株式会社 代表取締役CEO 秋吉浩気さん
・株式会社リビタ R100 TOKYO事業部長 浦川貴司さん

モデレーター
及川静香さん

>>>前編『消費者から生活者・共感者へ』はこちら

不当に安い国産材を、地域内エコノミーに活用する。

――サーキュラーエコノミーに欠かせないテーマとして、国産材活用があります。大量の木材を使う住宅産業は、国産材活用の側面でサーキュラーエコノミーの先導役になれる可能性があります。

長野麻子(以下長野):今は都会じゃなくても仕事が出来るようになって、いろんな場所に住める環境になってきました。自然と触れ合う時間を取れるようになると、動物としての本能で生きる力を高めたいとか、モノを作ってみたいという欲求が出てくる気がしています。そして、自分でモノを作ろうとするときに木は加工がしやすいです。日本書紀(編註:西暦720年に完成したと伝わる日本の歴史書)に記述されているように、私たちは昔から身近にあるスギやヒノキを使ってきました。戦後は禿山になりましたが、そこから育ててちょうどいま先人たちの植えた木がフサフサになってきた。都会の人たちはその木材を使う術を失ったけれど、shopbotのような木材加工の技術が出てきて、木の加工が民主化してきたと思います。それに伴って、木材利用の術を取り戻そうという文脈も出てきました。木は生き物なので愛着が湧きやすく思い出がのりやすいので、国産材活用のチャンスが訪れていると思っています。

SDGsを分解すると人間界の社会や経済成長が目標になっていますが、これを支えているのは森・海・川などの自然です。自然がきちんと成り立っていないと、私たちの社会はうまくいかないと思っています。菅(義偉)総理が、2030年に温室効果ガスを46%削減すると発表されましたが、排出量はすぐにゼロにはできないので、吸収することが必要です。そして今、温室効果ガスの大半を占めるCO2を最も吸っているのは森です。日本は国土の約7割が森で、そこでほとんど吸収しているわけです。そして、森の木を使って家具などを作ることで、街の中でも炭素を貯められます。今後、木が高齢化していくと森による吸収は減ってしまうので、なるべく木を街の中で使って、すぐに燃やしたりせず長く使ってもらうことで2030年目標にも貢献できると思っています。

住宅で言うと、鉄筋コンクリートやプレハブの住宅に比べて木造住宅はたくさんの炭素を貯蔵するので、他の資材と比べてCO2の排出が少ないんです。WOODCHANGEを進めれば、地球環境に良いということを伝えたいです。それを役所が言っているだけではダメで、民間のみなさんにも協力していただきたいということで、ウッド・チェンジ・ネットワークという活動をしています。セブンイレブンさんやマクドナルドさんも木造化をしてくれたり、ヒューリックさんも銀座に木造の12階建のビルを開発中です。こういう動きをどんどん広げていくときに、ぜひ国産材を使っていただきたいと思っています。

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秋吉:国産材を使わなくてはいけないけれど、ウッドショックと言われても国産材の製材は高いから使えないという話があります。今回のdoredoの開発でも地場の材料を製材したものを小ロットでかつモジュールで使うとなると、通常の家具を作るよりも二重で木材が必要になり単価は上がるわけです。コスト優先の合理主義者からすると、外材の合板で壁一枚にしてビスでガチガチに止めておけばいいということになってしまう。短期的にはその価値観でいいかもしれないけれど、長期的に見て合理的な価値観をどうやって壊すかが大切です。モジュール化することでコストは上がるが解体が容易になり、継続的に使える。また、材料はどこから運んでくるのが環境に良いのか、安い価格は経済統計に現れないシャドーエコノミーに乗っかっているかもしれないとか、CO2を排出しながら運んで製造することが環境にどれだけ影響を与えるかなどを考える必要があります。

今回僕たちがdoredoでやろうとしているのは、小ロットの国産材の製材で一般的に比較すると高いと思います。ただ、価格の高い・安いという話で進めると国産製材は使えなくて……

長野:実は、日本の木材は世界で一番安いんです。ウッドショックで今は外材が高騰しているという理由もありますが、私は国産材が不当に安いと見ています。今の価格ではとても再造林できません。私たちの孫たちが日本の山の木を使いたいと思っても、残してあげられないんです。ですから、この機会に正当で適正で再造林できる価格に戻しながら、皆さんが長期的に国産材を使うという関係が理想だと思っています。

浦川:国産材だから安いとか、使わなきゃ、という単略的な考えは健全じゃないと思います。国産材を選ばない人がダメなわけではなくて、正しい知識と情報、正当性と透明性のある選択肢があればいい。たとえば、住宅も中古か新築かリノベーションか他の選択肢か、この10数年でユーザーが適正に選べる環境が整ってきました。木材も、「国産材だから良い」ではなく、国産材は何が良くて外材にはどんなメリットがあるのかといった適正な情報があると、健全な流通が生まれると思います。

秋吉:ひとことで国産材と言っても、大規模流通用に皆伐に近いかたちで工場で作られた国産材と、地場で一本切って製材する国産材では値段が全く違う。doredoは地域圏内で循環させようという考え方でやっていて、それで小ロットだと価格は高くなると思います。大規模流通で木材の川上に戻る利益率と、地域の中で小ロットでやる利益率は違うので、価格の問題に加えてどれだけ地域に戻るかという側面も大事だと思います。

長野:過疎が進んで、林業が無くなってしまった山村は多いです。日本にはこれだけ山があるのに、いま国産材を使いたいと言っても伐る人がいません。今後はできれば地域で国産材を使っていただいて、地域内でお金が回って人が戻ってくるということができればいいと思っています。秋吉くんがやっているデジタルと木工の組み合わせという新しい世界も広がってきているので、地域のインフラ整備も含めてやっていきたいと思っています。

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思いや愛情がのったモノに、国産材の活路がある

モデレーター:いろんな地域の木材を誰かがまとめて購入して加工するのではなく、地域の中で回す仕組み作りが進んでいないのですね。林さんが2015年から取り組んでいるヒダクマの活動について、6年前からどんな変化が起きていますか?

林:先進国で最も森林率が高いのはフィンランドで約72%、2番目に高いのが日本で約70%なんですね。フィンランドと日本が違うのは自給率で、フィンランドは100%を超えているのに対して日本は37.8%(2019年・林野庁「令和元年(2019年)木材需給表」の公表について)。これでも少しずつ上がっているけれど、フィンランドとはすごい差があるわけです。フィンランドは木をどんどん輸出していて、林業が国の経済を支える産業のひとつだと思っているのに、日本では林業と言うとほとんどの人が「えっ」と言う。若い人で林業をやっている人はいない、そういう認識を変えないといけないと思います。

では、なぜ自給率が低いのか? 日本の林業が難しいのは山が急峻で、木を伐って下ろしてくるのに予算がかかってしまう。そのため森を長期的に管理するのが難しいんです。でも、日本はお米を作るために段々畑にしたりして、工夫している。本当にまめに地形に合わせて田んぼや畑にしている。それが何故、森でもできないのかな、出来るよね?! という気持ちで林業をやっています。

またひとつ質問ですが、林野庁は広葉樹のことを森と思っていないですよね(笑)?

長野:針葉樹偏重ではありますね。でも今度の基本計画では広葉樹も書きます。

林:日本の森は、広葉樹と針葉樹の面積がほぼ半々です。たとえば机は、基本的に堅い広葉樹じゃないと作れない。でも今は、ほとんどの家具が輸入した広葉樹の木材で作っている。それを国産材で作れば良いと思っているんです。針葉樹を使うのは基本的に家の躯体部分で、壁紙の中に入っているから見えないけれど、人間は見えるものじゃないと欲しいと思わないんです。だから、壁紙の中に入っている針葉樹のスギやヒノキより、それこそ秋吉くんがプロデュースしている『まれびとの家』のように、目に見えてすごくカッコいいと思わせるような国産材の事例を増やしていくのが良いと思っています。

秋吉:食だと、地域で採れたものを食べられるから距離が近いですよね。自己投資が目に見えて分かる。でも、林業は投資期間が長いし、「私の家は、あの山の木で出来ている」という感覚が遠いので、それをどれだけ近づけられるかという距離感の話と、目に見える形でカッコいいと思ってもらうことが大事だと思っています。

林:今の林業は、注文が入ってから作り始めるようにしていて、在庫を持たないようにしている。在庫期間がいかに短いかが、企業の経営として求められていますよね。でも私はなんか違うかなと思っていて(笑)、10年・20年と在庫して会社として日本に寄与するのがヒダクマが目指していることです。

doredoもそれに近いものを感じるんです。今後人の暮らし方が多様になっても、doredoの形を変えていくことで暮らしの多様化に適用する。それって10年・20年先を見越しているっていうこと。これからは、どれだけ売れたかということではなく、どれだけ愛されたかでビジネスを組み立てる社会に変わっていくんじゃないかなと思っています。

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視聴者Q&A

モデレーター:『テーブルになるような太い木は短期間で育ちません。素材を木などの再生できるものにすることには価値がありますが、いま製品になっているモノを多世代が使い続ける土壌の生成は必要だと思いますか?』という質問がきています。

長野:必要だと思います。使って捨てた方が短期間の経済は回るかもしれませんが、法隆寺が1300年経った今もあるように木は長く使えます。ヴィンテージの方が価値があるという世界もあった方が、木が育つサイクルに合うんです。50年かけて育てた木を20年で廃棄するとサイクルに合わなくなってくる。私たち人間は、そのサイクルに合わせていく努力をした方が良いと思っていて、そのサイクルの中で技術も発達して、経済にも繋がるようにしないといけない。たとえば、メルカリが出てリユースが当たり前になりつつあるように、木の世界にもご質問いただいたように多世代が使い続けるような世界があったら良いなと思います。

モデレーター:もう一つ、『多世代で使い続けている製品を、現代に合うように改修するための担い手も必要だと思いますが、その担い手はどう育てるのでしょうか?』という質問がきています。

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秋吉:どうしたら担い手が増えてくるのか、難しいですが……初等教育には図工があるけれど、大人になるにつれてものづくりから離れてしまう。日常の行為の中にどれだけものづくりが入っていけるかはポイントだと思います。あと、ものづくりは大変でキツい部分もありますが、それがカッコよくて楽しいという価値観に繋げていくのも大事だと思います。

一番重要なのは教育のシステムだと思っています。建築学科でも、ほとんど木材に触れないんですね。二級建築士的な木造の世界はないがしろにされる部分があるので、そこをどう変えていくのか。僕は「作り方の手軽さ」とよく言うのですが、最終的なクラフトマンシップのすごくコアな部分は、かなり職人技が必要でなかなかデジタルで置換できないところです。デジタルを入り口にして、そのディープコアなところをどう開花させるのかは大変だと思っています。ポジティブな面でいうと、VUILDでインターンをしていた子が大工修行に行ったんです。デジタルなものづくりの面白さというラフなところから入って、最後にディープな部分に入る人はいるので、まずはラフにデジタル環境でものづくりをする人を増やして、そこからディープな職人技の部分に入る人を増やしていければと思っています。

林:ヒダクマは江戸時代の古民家に惚れ込んで、再生して今はカフェにしています。日本人の中には、多世代が使い続ける土壌がけっこうあるんです。土壌づくりも必要だけれど、古いものを再生させたモノは素敵だなという価値観が広がるのも大切です。デザインに関わる人間が、古いモノだからこそのカッコ良さがあるんだよというのを見せるためにも、どんどん古いモノを再生させて作っていかないといけないと思う。

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気候変動のような社会課題や国内産業課題を私たちの日常生活の中で直接的に自分事と捉えられる機会は、これまであまりなかったかもしれません。ただ、ブランド名ではなく顔の見える作り手から買おう、とか、ものづくりのストーリーやビジョンに共感した会社から買おう、というように生活者の購買行動は徐々に変容しているように思います。

サーキュラーエコノミーはモノだけの循環システムではなく、ユーザーである生活者が主体的にその取り組みに関わることで、循環型社会が構築されていきます。その時、供給者と消費者という対の関係性ではなく、すべての人が生活者としてどのような社会をつくっていくかを考え、自立共生的なあり方を意識すべきではないでしょうか。

自立共生的な社会においては、共感性を高め愛着が醸成していくような長い時間軸でのビジネスモデルへとシフトしていくと言われています。住宅産業や森林産業においても、生活者との関係作りを長期的な展望からデザインしていくべきでしょう。これまでの一方向的な情報提供のあり方やブラックボックス化してしまった産業構造を変えていくことで、生活者が主体的に関われる環境にシフトしていくと思います。

>>>前編『消費者から生活者・共感者へ』はこちら

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