長く使えて、暮らしになじむ。
家電との「ちょうどいい関係」を考える
暮らしの中で、気づけば私たちはさまざまな家電製品とともに過ごしています。けれど、壊れたら買い替え、飽きたら手放す——そんなサイクルを知らず知らずのうちに繰り返してはいないでしょうか。今回の「学ぶシリーズ」では、シロカ株式会社の梶桂輔さんをゲストに迎え、家電との「ちょっといい関係」を築くためのヒントを伺いました。家電選びのポイントから、長く心地よく使うコツ、買い換えの際に意識することまで。日々の選択を少し変えるだけで、暮らしはもっと自分らしく、そして環境にもやさしいものになるかもしれません。

暮らしになじむ家電を選ぶためのポイントは?
——住まいにフィットする家電製品を選ぶためには、どんなところに気をつければいいのでしょうか?
ほとんどの家電製品は、「使っている時間」よりも「ただそこにある時間」の方が長くなります。だからこそ、まずは自然と暮らしに溶け込むような佇まいを備えているかどうかが、家電選びのポイントになるはずです。
もうひとつ大切なのが、「オーバースペックな製品を選ばない」ということです。
もちろん、さまざまな機能を備えた家電の便利さを否定するわけではありません。ただ、実際にお客様にお話を伺ってみると、そのすべてを使いこなしている方は、それほど多くはないようです。「あれもこれも」と欲張るのではなく、自分にとって本当に必要な機能を軸に選ぶことが、結果的に心地よい暮らしをつくる近道になると思います。

家電製品を選ぶ際には、サイズ感を気にする方も多いはずです。そのときに注意してほしいのは、「モノとしての大きさ」と「使用時に必要なスペース」は異なるということ。たとえば、トースターやレンジなら、スムーズに扉を開け閉めするには、どれくらいのスペースを確保しておけばいいのか。そんなところまで視野に入れておくと、より「収まりのいい家電」を選びやすくなるはずです。
また、これはできる範囲で構いませんが、同じメーカーの製品を揃えると自然と空間全体にデザインの統一感が生まれます。ボタンやディスプレイなどの操作感にも共通点が多いため、「どう使えばいいか」も直感的にわかる。些細なことかもしれませんが、そうした小さな快適さの積み重ねが、暮らしの質をじんわりと底上げしてくれるのではないでしょうか。

——御社では「暮らしに溶け込む家電」をつくるために、どのようなことを意識していますか?
まず意識しているのは「主張しすぎない」ということですね。「親しみやすさ」をデザインのテーマのひとつに掲げているため、丸みを帯びたフォルムや落ち着いた色合いの製品が多いことも特徴だと思います。
その上で、何よりもこだわっているのが「生活者目線」です。新製品の開発では、まずは自社の社員がいちユーザーとして徹底的に製品を使い込みます。「シロカクラブ」という当社のファンコミュニティを通じて、お客様にインタビューを行うことも少なくありません。そうやって家電というよりも、暮らしにすっとなじむ「道具」をつくるような感覚で、一つひとつのプロダクトに向き合っています。

ひとつの家電と、長く上手に付き合うために
——ひとつの家電を長く使うために、気をつけるべきことはありますか?
こまめに手入れし、きれいな状態を保つことで、家電製品の寿命はぐっと延ばせます。ホコリやゴミがたまると、それが熱を持ち、製品に余計な負荷をかけてしまうからです。だからこそ、手入れのしやすさも製品選びの重要なポイントになるでしょう。たとえば当社では、キッチン家電はもちろん、扇風機のような季節家電でも、汚れやすい部分を工具なしで分解できるため、お手入れがしやすい設計にしています。
それでも万が一、不具合が生じてしまったときは、すぐに買い替えるのではなく、まずはメーカーのサポートセンターに相談することをおすすめします。ちょっとしたトラブルなら、それだけで解決することも少なくありません。そういった意味でも、アフターケアの充実度は、メーカー選びの判断基準のひとつになるはずです。ちなみに私たちも自社でサポートセンターを運営し、お客様からのお問い合わせに迅速に応えられる体制を整えています。

——ひとつの製品をなるべく長く使ってもらうために、ほかに工夫していることはありますか?
たとえばキッチン家電では、本体に付属するレシピブックとは別に、定期的にオリジナルのレシピコンテンツを提供しています。「購入して終わり」ではなく、そこから新しい使い方や楽しみ方を提案していくことで、ひとつの製品をより長く、愛着を持って使っていただければと考えています。
また、せっかくご購入いただいた製品をすぐに手放されてしまうということは、お客様にとっても私たちにとっても望ましいことではありません。そうしたミスマッチを減らすために、当社が一部の製品で導入しているのが、購入前のレンタルサービスです。実際に使い心地を試してからご購入いただくことで、結果的に製品を長くご利用いただけるケースが増えていると感じています。
人にも環境にもやさしい「ちょっといい選択肢」
——家電を買い替える際には、どういうところに意識すれば自然環境にも配慮した「ちょっといい選択」ができると思いますか?
先ほどの話にも重なりますが、まずは「長く使いたいと思える家電」を選んでいただくことではないでしょうか。そもそも家電製品は、製造や流通の過程で少なからず環境負荷がかかっています。だからこそ私たちもメーカーとして、一つひとつのプロダクトを丁寧につくりこみ、その時点でフルスペックの製品を提供することで、製品のライフサイクルを伸ばすように心がけてきました。とはいえ、やはり最も大きいのは、お客様がその製品を長く使ってくださること。それが何よりも環境への配慮となるはずです。

また当社では、「やむを得ない事情でほとんど使われずに返品された製品の中から、不具合や故障等がなく、まだ使用できる製品」を、専門のスタッフが点検・クリーニングして「リファービッシュ品(整備済み製品)」として販売しています。買い換えの際に、こうした選択肢をご検討いただくことも、「ちょっといい選択」につながっていくと感じています。
暮らしの主役は、あくまでもお客様。私たちの製品は、その日常に静かに寄り添う「相棒」のような存在でありたいと考えています。たとえば、家事の手間を減らしたり、自分の時間をつくる手助けをしたり。ふとした瞬間に「あってよかった」と思える製品を、これからも丁寧につくっていきたいと思っています。
家電との向き合い方が変われば、きっと暮らしも変わってゆく
今回ご紹介したのは、暮らしにフィットした家電を長く使い続けるために、日常でできる工夫やヒントです。家電との向き合い方を見直してみることは、きっと暮らしの質を高めることにもつながっていくはず。「心地よさ」や「豊かさ」は人それぞれです。あなたにとってのそのかたちを、ぜひ探してみてください。
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