<前編>doredo OPEN Meeting vol.1イベントレポート『消費者から生活者・共感者へ』|住まいのヒント

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<前編>doredo OPEN Meeting vol.1イベントレポート『消費者から生活者・共感者へ』

目 次
  1. 1モノから思いへ。消費者から生活者・共感者へ。
  2. 2住宅産業も、循環して繋がり続けるべき
  3. 3doredoと過ごす時間が、doredoの本質
  4. 4視聴者Q&A

近年、サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉を聞く機会が増えています。これは、地球の資源は有限であるという現実を直視し、これまで廃棄していた製品や原材料を資源と捉え、廃棄物を出さずに資源を循環させる経済を指します。環境保全の機運が高まり、資源の再生を前提にしたモノづくりが求められる社会の中で、住宅産業にも変化が必要です。スクラップ&ビルドではなく循環経済社会における住まいはどうあるべきか? サーキュラーエコノミーのために住宅産業ができることは何か? 明確な回答のない問いに向き合うために『doredo OPEN Meeting vol.1』と題してオンラインイベントを開催しました。 ここでは、2021年4月22日に4人のゲストを迎えたトークイベント『循環型社会における住まいのあり方と国産材によるものづくり』の模様を前後編でレポートします。

doredo open meeting

ゲスト
・林野庁 林政部 木材利用課長 長野麻子さん
株式会社ロフトワーク 共同創業者取締役会長 林千晶さん
VUILD株式会社 代表取締役CEO 秋吉浩気さん
・株式会社リビタ R100 TOKYO事業部長 浦川貴司

モデレーター
及川静香さん

モノから思いへ。消費者から生活者・共感者へ。

モデレーター及川静香(以下モデレーター):最近、自分の暮らしに向き合ってモノを選ぶという文脈が出てきていると感じます。たとえば、モノを買うときに背景を知って自分で選択するとか、廃棄されそうな食品をレスキューする感覚で購入するというように。林さんから見て、消費者の意識の変化、購入する時の行動変化は感じますか?

林千晶(以下林):自分が服やモノ・食べ物をどんなふうに買っているか考えると、最近は知っている作り手からしか買わなくなってきました。20代の頃は憧れのブランドがあって、そのブランドのモノを買いたいと思っていたけれど、今はブランドに全く憧れがないんです。海外ブランドの洋服よりも、たとえば山形県の米富繊維が作っている『COOHEM』というブランドのほうがかっこいいと思う。

例えば、米富繊維はOEMでいろんな会社の洋服を作っていた。でも、社長が「これだけいろんなものを作れる技術があるのなら、自分たちのブランドで勝負しよう」と提案したんです。最初は社員全員が反対をしたらしいけれど、実際にやってみたらすごく上手くいっている。こんなふうに、私は作っている人を応援したいとか、ものづくりの過程に共感する部分を見てモノを買っています。

あと、消費者と言うと“モノを買う人”だけれど、今は“生活者”に変わっている気もしています。

doredo open meeting

モデレーター:『消費者から生活者』、面白いキーワードが出てきました。秋吉さんはどう考えますか?

秋吉浩気(以下秋吉):今はいろんなメディアがあって、作り手が何を考えて作っているのか発信しやすくなっているから、共感しやすいし購買意欲も湧くと思います。ただ、住宅や林業で言うと誰がどんな場所で企画してどんな環境で生まれているのかほとんどブラックボックス化して見えないようになっている。一方で、最近大きな変化だと思うのは、関わり白の持てる余白を求める人が増えてきたこと。買えないものは自分で作ってみたいと考える人が多くなってきました。我々の事業形態の特殊性から、こういった動きが目に入りやすい側面はあると思いますが、自分に必要なモノは自分にしか作れないのではないかという人もいる。

林:たしかに、モノの強さはあるよね。つまり、モノには「あの時こんな事をしたね」という思い出が含まれる。思い出を想起させる結果として「モノ」に落ちてくる。

秋吉:そうですね。思いや経験を織り込むためのものがおそらくモノだし、フェチズムというか、フェティッシュな物事を投影するのはやっぱりモノだと思います。

林:ただ、「モノ」も含めた「コト」が大切になってくるとは思うんです。コンピュータもモノとして売るのではなく、初めてディスプレイを開ける行為を通じて、「あ! この感じは、あの時の感覚だね」というような体験と結びついて売っていくようになる。これからの作り手は、「何で思い出してほしいか」ということを考えるようになると思う。

そもそも、消費者ってすごく失礼な言葉だと思っていて。足りないモノがいっぱいある時代は、メーカーが足りていないモノを作って、それを買いたい人がいたから“消費者”だった。でも今は満ち足りていて、そういう時代はモノを作っても要らないから消費者ではない。消費者という言葉は、過去の時代の言葉だと思っているんです。少なくとも私は消費者ではなく生活者だけれど、それよりむしろ共感者とか、そういう人を求めるようになってくると思います。

doredo open meeting

住宅産業も、循環して繋がり続けるべき

浦川貴司(以下浦川):消費者・生活者の分け方が無くなってきている気はします。住宅で言うと、戦後の住宅が足りない時代から満ち足りるまでは、まずは足りないところに供給しなければいけなくて、トレーサビリティの視点どころではなかったと思います。ただ、完全に足りてしまっている状況では、いわゆるマスが無い。誰が買い手で誰が作り手かという前に、「自分はどう暮らすのか?」「どういう体験をしたいのか?」を考えるし、そういう人たちがモノを供給する側に回るべきだと思っています。そうしないと、誰が使い手なのか、誰が生活者なのか分からない。“誰”を突き詰めると自分の生活だったりするわけで、これはおそらく住宅だけではなく流通するモノには通底することだと思います。

これを言うと怒られちゃうかもしれませんが、「住宅は絶対に買うものなのか?」という疑問があります。住宅を買うことがゴールではなく、幸せになるために家があった方がいいなら買う。住宅は資産という考え方もありますが、合理的に考えたら歴史や思い出のあるおばあちゃんの家を再生させた方がいい。実は、一戸建てを手放す方とマンションを手放す方では思いが全く違います。我々が一戸建てを買い受ける時、「家族の思い出があるから本当に大切にしてくれる人に使ってほしい」と言って急いで売らない家族が多い。住宅に思い出を保存できるわけではないけれど、スクラップアンドビルドではなく、改修して残っていてくれることが嬉しいんです。全部が合理的に行われるわけではない。

doredo open meeting

――サーキュラーエコノミーの視点から見ても、住宅産業は生活者と長く繋がり、関わり合うことが大切になっていきそうです。

浦川:住宅に限らず、繋がり方、繋がり続ける大切さはどの産業にもあると思っています。コロナ禍の少し前から、働き方や居場所に自由度が出てきて、暮らしが柔軟になってきました。会社も住まいも、一つの居場所に留まり続けることが全てでは無くなってきて、生活者が変化しています。生きる自由度が広がってきた時に、住宅が連動していくのかというと全くそうではない。家を買おうとすると35年という住宅ローンの長さを前提に話が進みます。将来が分からない怖さがあるのに、35年をfixしないといけないのはおかしなことで、生活者と向き合っているとは言えません。昔の住宅は10・15年経って変えるものだったけれど、今は3年で生活が変わって住まいも変えたいという世界です。こんな希望を受け入れるサービスや仕組みがあると、長い関係が築けると思います。

フィンランドにある『Artek』という家具ブランドは、過去に売買したスツールをリペアして価値を高めて再流通させている。まさにサーキュラーエコノミーですね。使う責任もさることながら作る責任も持っていて、良いモノを作ったから自分たちで買い戻し、次の担い手にバトンタッチする循環がある。住宅にもこの仕組みがあれば、次の担い手に渡す循環が生まれるし、生活者と長い関係が生まれる。すごく素敵です。

モデレーター:先ほど秋吉さんは、住宅業界はブラックボックスという言葉を使いました。住宅は、まだ生活者に合わせた提供というところまでは変化していないということでしょうか?

秋吉:これまでの大量供給時代の消費が、「これがすごく良い暮らしだよ」というコマーシャルに洗脳されて、外発的に良さそうなモノを買うということであれば、それがまだ続いているのなら結構ヤバいと思う。流通を見える化・分散化したり、簡単なプロダクトシステムを用意したりして、内発的な方法で住宅産業を塗り替えるところに面白さを感じています。我々が大事にしたいポイントは、感情を投影して自分の感情のままに良さそうなものを選択して作ってみるということです。それを消費者と言うのかどうかは分からないけれど、そう変容するべきだし、そもそも時代がそういうふうに変わってきていると思います。

doredoと過ごす時間が、doredoの本質

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不確実性の高い社会の到来でライフスタイルの変化予測が立てづらいなか、住宅産業も個人的ニーズに応えようという思いから、リビタとVUILD株式会社の協働で生まれたプロダクトが『doredo』。組み立て式のdoredoを使えば、生活者の必要なタイミングで職人の手を借りることなく間取り変更ができ、住まいを変えても持っていくことが可能です。
https://note.com/doredo_note

林:doredoは引っ越しをしても持っていきたくなるものであって欲しいと言うことだよね? でもね、今の私だったら引っ越しの時に捨てちゃうかもしれない(笑)。何故かというと、今のdoredoは模様替えで何度か使って、よくやってくれたなと思うけれど、これはこの家で使ったものであって新しい家には持っていかないと思ってしまいそう。愛着が湧いて、新居にも持っていこうって意識まで高められたらものすごいことだよね。そこをどう実現するのかは、これからの勝負だと思う。持っていくことを実現すれば初期の売上は減ることになるけれど、doredoはそこが良いという発想に変われるかどうか。引っ越しても持っていこうと思うようなモノを作れば、それはどんどん広がるから、結果的には売り上げも増える。

浦川:doredoを作る時、スケルトンとインフィルの分離の話をしていました。doredoだけでは暮らせない。でも、スケルトン自体の流通は住宅流通の個数と同じぐらいあるわけで、“箱の中身”はもっと民主化してもいいと思ったんです。doredoを入れる“箱”はその時々で違うけれど、その“箱”をきちんと流通させることができれば自分が持っていきたいものを持って、行きたい場所に行ける。もちろん、インフィルは様々なもので構成されているので、それだけではありませんが。

林:民主化するというのは賛成です。ただ、今のままのdoredoだと「仕切りが自由に変えられるインフィル」と映っているから、そこに興味を持つ人しか買えないかもしれない。でも、doredoはインフィルというより、「これを使うことで今まで出来なかったこんなことが出来る」とストーリーを想起させるものという気がします。

秋吉:今は、お金を払って内壁や部屋の間仕切りを作っても資産にならない。doredoは、家がエイジングしても価値が上がっていくという世界にきちんと転換することを目指しています。愛情を込めて、こんなふうにエイジングしながら暮らしたということが、最終的にそこに投資した人に還ってくるような環境にしていきたい。doredoというプロダクトには、家をきちんと資産として残したいという想いが込められています。

モデレーター:林さんが冒頭で「知っている作り手から買いたい」とお話しされました。モノへの想いが重なっていくと、引っ越し先にも持っていこうという気持ちが高まるのかもしれません。

浦川:「壁の間仕切りだけを持っていこうと」だと、生活者にとって素敵ではなくて、他の家具メーカーさんのいわゆる仕切り家具で良いかもしれません。今回doredoを試行錯誤している中で、doredoだからできる形状は何かを考えました。社内で実際にdoredoを触りながら考えるのが面白くて、大人たちが寄ってたかって「こんな形もアリだね」と言いながら組み上げていると、レゴブロックで遊んでいるような気持ちになったんです。プロダクトのアウトプットよりも、体験がモノを醸成するその時間も含めてdoredoの価値である必要があります。

林:今のdoredoの見え方は、「どんなふうに間仕切りを変えていけるのか」というモノの売り方になっている。でもまず、doredoで作る行為が楽しいというベネフィットが伝えられるといいですね。あと、部屋をdoredoで仕切ったときに隙間から息子が見えて会話が増えるとか、長期的には、子どもが独立して実家を出るのは寂しいけれど、doredoで自分一人の空間に作り替えて気持ちよく暮らそうとか。こんな物語を積み重ねていけば、doredoは捨てられないものになっていきますね。

浦川:名は体を表すで、doredoは『Do(実行する) とRe Do(やり直す)』なんです。そのモノを名前で表現するよりも、モノから生まれる行為を名前に落とし込みました。実は、doredoのマーケティングは子どもたちに聞いたんです。「これはどう? イケてる?」って。合理主義的に捉えて、誰に目に留まるようにして妥当な価格を算出して……ということよりも、直感的にモノを使う体験が目に浮かぶのかどうかを子どもに聞いてみようと思ったんです。

積み上げて作り上げてゴールというモノもありますが、作り上げることよりも壊せること、作り直せることが大切だと思います。大きな視点で言うと、社会も、作って失敗してもやり直せるほうが良い。そういう意味も含めて、doredoはすごく良いネーミングだと思っています。

秋吉:もともとdoredoのコンセプトは“家族になる家”が起点になっています。空間をユニット化することで、家が「私はココに積んで欲しいんだ」と語りかけてくれるところまでいけると面白いと思っていて。Do とRe Doという行為の中に、家自体が家族と同じようなレベルで擬人化できるところまでいけると良い。最終的にはそこまでの話になっていくべきだなと改めて思っています。

doredo open meeting

視聴者Q&A

―ー視聴者からdoredoについて質問がきています。『プライベートが担保できるのか心配です。たとえば子どもが反抗期になったときなど自室がきちんと無いのは精神的に心配な面もあります』ということです。doredoのプライバシーや防音について補足をお願いします。

秋吉:先ほど浦川さんからスケルトンとインフィルの話がありましたが、doredoはインフィル=“空の建物の中に置くアイテム”であるものの、その木の箱にさらにアドオンで付けられる様々なアイテムを用意しています。たとえば、吸音する資材や有孔ボードなど。doredoはインフィルでありながら、その中にまたインフィルがあるという構造なので、家族の暮らし方や子どもの成長過程に沿ってカスタマイズすれば、家族に寄り添うものになれると思っています。

>>>後編『サーキュラーエコノミーと国産材活用』に続きます。

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