住まいの魅力を紐解きアップデートするリビタのリノベーション済みマンションとは?|住まいのヒント

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住まいのヒント

住まいの魅力を紐解きアップデートする
リビタのリノベーション済みマンションとは?

目 次
  1. 1そこにある豊かさを掘り下げ、可視化していく
  2. 2「一番いい場所で大切な人と過ごす価値」を継承
  3. 3使い方を固定しない、自由で連続性のある空間
  4. 4既存の価値を読み解き、時代に合わせて洗練させていく豊かさ
  5. 5あとがき

リビタが手掛けるリノベーション済みマンションは、ただ内装を新しくするだけではありません。建物だけでなく、周辺環境や街の魅力を掘り下げ、現在のライフスタイルに合わせて「住まいの価値」や「暮らしの質」をアップデートするためにリノベーションを行っています。建物が積み重ねてきた時間、そこに折り重なる歴史や文化に向き合い、空間とともに潜在的な価値や魅力を含めて、ひとつひとつの部屋を丁寧に読み解き、一点ものの住まいをお届けしています。今回リビタが手掛けたリノベーション事例「ロワール駒沢」に関わった建築家の伊藤維さん、mui Lab株式会社の廣部延安さん、リビタの福田大輔さんに、リビタのリノベーション済みマンションがつくられる過程をお聞きし、その背景にある考え方やつくり手の想いを紐解きます。

プロフィール

左から
mui Lab株式会社 廣部延安さん
mui Lab共同創業者兼クリエイティブディレクター。CMFデザイン分野で社内デザイナーとして活躍した後、情報テクノロジーのサポートによって人のウェルビーイングに寄与するため、本物の木でつくられたタッチパネルディスプレイ「muiボード」を開発。

伊藤維建築設計事務所 伊藤維さん
伊藤維建築設計事務所代表。2008年に東京大学建築学科卒業。設計事務所勤務を経て、2014年にハーバードデザイン大学院に留学。スイス連邦工科大学で助手を努めた後、2020年に帰国。岐阜市を拠点に東京との2拠点で活動中。

株式会社リビタ 福田大輔
設計事務所から大手リノベ再販会社を経て、2018年にリビタに入社。建築ディレクターとしてリノベーションマンションの企画・ディレクションを担当。

そこにある豊かさを掘り下げ、可視化していく

――ものづくりにおけるみなさまの考え方に、それぞれ共鳴する部分があった結果、協業が実現したとのことですが、まずは伊藤さん、廣部さんがものづくりをするときに大切にしていることを教えてください。

伊藤さん 昔からそこにあったもの、人が関わってつくったものに興味があり、それを知る・学ぶ、あるいは想像することがすごく好きなので、建築を計画するときは新築でもリノベーションでも、周辺環境やそこに関わってきた人のことを考えます。周辺の町を歩き回って、その町のことを知りたいと思うんです。リノベーションの場合は、建物がすでにあるので、その建物が建てられた時代背景や経緯、そこで過ごしてきた人たちの暮らしなど、掘り下げる情報はとても多く、それが醍醐味でもありますね。

伊藤維建築設計事務所 伊藤維さん

廣部さん mui Labはテクノロジーを使ってサービスをつくっている会社ですが、人が実際に提供するサービスには敵わないと思います。だからこそ人のサービスをどこまで想像できるか、それをテクノロジーでどこまで代替できるかを大切にしています。そして、mui Labがつくるサービスの目的は、人と人をつなぐものであることが前提。そのサービスがあることで、人が集まって会話が生まれて、関わりが生まれることを目指しています。

伊藤さん mui Labのカームテクノロジーの世界観は、自分たちの周囲にどれだけセンシティブな感覚をもてるかということを、テクノロジーの視点から問いかけていると思います。「muiボード」は、暮らしに溶け込む木のタッチパネルディスプレイで、手触りや佇まいを大切にしていたり、さりげなく天気や季節の変化を伝えてくれたりする。自分たちの周囲にある豊かさを可視化するインターフェースになっていて、とてもいいなと感じます。

福田 リビタはリノベーションによって、住宅の機能性を高めて設備やデザインを新しくすることをしていますが、建物のもつ歴史や現代にも通じる豊かさ、価値あるものを活かして継承しながら、今のライフスタイルに合わせて文脈を再編集するような気持ちで、一つひとつのプロジェクトに取り組んでいます。暮らしやすさや居心地の良さを丁寧に紐解くことで、住んでいただく方にも長く愛着をもって暮らしていただけると信じているからです。IoT領域にも取り組んでいますが、機能や利便性だけを求めたアイテムは、住まいの中で流れる時間軸と噛み合わないことがあります。「muiボード」は家具と同じような存在感で、本質的な心地よさを感じさせるインターフェースであるところが、リビタの届けたい住まいと相性がいいと感じていますね。

株式会社リビタ 福田大輔

「一番いい場所で大切な人と過ごす価値」を継承

――今回の「ロワール駒沢」にも、そのような考え方が活かされているのでしょうか。この物件の企画・設計時に考えていたことをお聞かせください。

伊藤さん この建物は1975年竣工、築48年です。建てられた当時、何を大切にして、どのようにプランニングされたのかを読み解き、現代のライフスタイルの変化に合わせて、よい形で更新していきたいと考えました。

既存図面  
リノベーション後の図面

伊藤さん 既存の間取りでは、東側の中央に客間があり、床が切られていたのがとても印象に残っています。バルコニーには花台があり、あふれるほどの植物を丁寧に育てている住人の方も多く、町並みにも寄与してきた建物なのだと感じました。おそらく庭付き一戸建てのような暮らしをマンションで実現しようとしたのではないかと。1970年代の世田谷区で、緑に囲まれつつも憧れの都会的な家族の暮らしを体現するようなマンションとして企画されたのではないでしょうか。客間があった場所は、この住まいの中でもっとも静かで日当たりもよく、吐き出し窓とバルコニーもあります。きっと一番いい場所で大切な客人をもてなすゆとりが反映されているのだなと想像しました。それを現代のライフスタイルに置き換えて、大切な人と過ごす場所はどこだろうかと思いながらいくつかのプランを考えていきました。最終的に集約していったのが、そこへダイニングを配置する案です。

福田 ダイニングは家族と食事をする場所でもありますが、現代ではお客さまをもてなす場所でもあります。家の中でも一番いい場所で大切な人と過ごしたいという価値を継承しながら、現代的な解釈でリノベーションを施した場所だと考えています。

使い方を固定しない、自由で連続性のある空間

――客間を継承するダイニングを起点に、その他の場所はどのように導いていったのですか?

伊藤さん ダイニングを中心として南北に個室があるのですが、両方ともガラスの引き戸+カーテンで仕切れるようにして、間仕切り壁には杉材を使うことにしました。ガラスの引き戸を開けておけば、ダイニングの延長として広く使うことができますし、必要なときに閉めて個室にすることもできます。杉板は壁なのですが、表情のある素材感によって家具のように空間に馴染み、南北の視線の抜けや空間全体としての開放感を妨げないような効果を狙いました。

福田 杉板の間仕切り壁も横断面の切り口に表情があって、まるで可動壁のように軽やかで、全体がワンルームのような開放感のある雰囲気を強調する存在になっています。杉板の壁面の目地と建具の横桟、キッチンの腰壁などの高さが揃っていることも、空間の連なりを感じさせる要素の一つになっていますね。

伊藤さん 南側にはバルコニーに面してリビングスペースをつくり、さらにその奥に個室があるのですが、その扉も引き戸にしたことで、家全体がよりつながっている印象になっています。引き戸を使って境界を曖昧にすることで、どの部屋を寝室や書斎にするかなどを固定せずに、住み手が空間とアクティビティを自由に組み合わせて使うことができるような住まいになりました。これも既存の間取りにあった和室が連なった空間の自由さ、奥行きのある連続性のメリットを読み解いて活かすようなプランニングになったように思います。

福田 奥の個室を寝室にしてもいいのですが、床はフロアタイルになっているので、植物を置いてサンルームのように使ってもいいし、ワークスペースとしても集中できる空間になっていますよね。花台のあるバルコニーや町ともつながっているような気分にさせてくれる場所でもあります。リビングが奥まっているのも、夕食後にゆったりとした時間を過ごすのによさそうです。ライフステージや価値観の変化にも柔軟に対応できるプランになっていることも特徴です。この住まいで暮らし始めたことをきっかけに、自分の好みに合わせて空間の使い方をアレンジすることで、暮らしを豊かにしていってくれたら嬉しいなと思います。

既存の価値を読み解き、時代に合わせて洗練させていく豊かさ

――現代のライフスタイルに合わせてアップデートされた部分はありますか?

伊藤さん 象徴的にアップデートしたのはキッチンです。既存のキッチンは独立して奥まった位置にありましたが、家の中心であるダイニングに対面するオープンキッチンにしたことで、家族やゲストと料理をしたり、家事をしながら家族と一緒に過ごせるような空間となっています。1970年代の日本では、キッチンは人に見せる場所ではなく奥まった場所にあるものでしたが、現代では人を招く場所にもなっている。こういったところは、時代の変化に合わせたアップデートが必要になってきます。

――「muiボード」がダイニングから玄関や個室に向かう動線上に設置されています。「muiボード」も現代的なアップデートの一つだと思いますが、既存の床の間に象徴されるゆとりを引き継ぐような存在なのでしょうか。

廣部さん 「muiボード」はネットワークにつながって外の世界の情報を取り入れる道具なので、昔の人が床の間に花や掛け軸を飾って、自然や季節を室内へ持ち込んで客人をもてなしたことにつながる部分もあると思います。大黒柱や神棚などにも近いかもしれません。

伊藤さん 「muiボード」は佇まいを大事にしているので、家具や窓のような周囲の建築の要素と同じくらいさりげない存在感であってしかるべきだと考えました。そのため、できるだけ自然に空間に溶け込む場所に設置するようにしています。まさに神棚のように、いい場所にあってリスペクトしているんだけど、日常的には意識せずに暮らせるような存在であることが理想ですよね。

廣部さん 窓のような道具と捉えてもらえるといいかもしれないですね。窓から外の景色を見るときに、窓枠を意識する人はいないように、「muiボード」を使っているときは、道具の存在を忘れるくらい透明性のある存在になったらいいなと思っています。

mui Lab株式会社 廣部延安さん

福田 今回の物件が建てられた1970年代初頭は、日本が最先端の技術を取り入れてどんどん進化していこうとしていた時代でした。でも進化には限界があって、現代ではより洗練させていくことが豊かさの潮流になっています。「muiボード」はまさにそれを体現しているツール。伊藤さん、廣部さんと一緒に、既存の価値を読み解きつつ、現在のライフスタイルに合わせて洗練させていくことを話合ってきた中で生まれた深い共感が、今回のリノベーションの完成度をより高めてくれているのだと感じました。

あとがき

リビタがリノベーションで大切にしている建物の文脈を読み解き、住まいの価値をアップデートすることは、建築家の伊藤さん、mui Labの廣部さんのものづくりへの考え方と共通する部分が多いことが分かりました。アウトプットの形は違っても、根底にあるのは、そこにある価値と丁寧に向き合い、積み重ねられてきた時間や人の営みをリスペクトしながら、現代のライフスタイルに合わせて洗練させていくことで、より暮らしを豊かにしていこうとする姿勢です。伊藤さん、廣部さん、リビタが大切にしている想いや価値観が込められた「ロワール駒沢」のリノベーションプロジェクト。一つひとつの住まいをを丁寧に紐解いて、現代の暮らしに合わせてアップデートしてつくっていく一点もののリビタのリノベーションの本質を体感できる住まいとなっています。たくさんの思いや文脈を引き継いだこの住まいで、新しく始まる暮らしがどんな物語を描いていくのか楽しみでなりません。

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