『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDOがオンラインとオフラインの垣根を超えて『拠りどころ』をつくる|シェアする暮らし

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『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDOがオンラインとオフラインの垣根を超えて『拠りどころ』をつくる

目 次
  1. 1みんなで集まる理由をつくりたかった。
  2. 2リアルな場を持ちながら、場にこだわりすぎないように。
  3. 3オンライン・オフラインの垣根を超えて、みんなの“拠りどころ”に。

2014年、横浜・みなとみらいの造船ドック跡地に誕生したシェアスペース『BUKATSUDO(読み:ブカツドウ)』。「大人の部活が生まれる、街のシェアスペース」をコンセプトに誕生したこちらの施設は、キッチンやアトリエとして使えるレンタルスペース、仕事や勉強部屋になるワークラウンジ、趣味や街づくりなどコミュニティ活動の拠点にできるBUSHITSUという3つの要素を持つ空間で構成されています。これまでに、BUKATSUDOが開催した講座は390本、生まれた部活は15個と、街のシェアスペースとして様々な出会いを生み出してきました(2020年5月時点)。 BUKATSUDOは、新型コロナウイルスの影響拡大で約2ヶ月間休業しました。この休業期間中に、BUKATSUDOが発表したのが、外出自粛中の日々を原稿用紙に綴る大人の自由研究『わたしたちのstayhome * 』です。今回は、BUKATSUDOのオープンから6年間、様々な部活や講座・イベントを起こし、集う人やコミュニティと絶えず対話しながら、場を作り上げてきた川島史さんと平賀めぐみさんに、その企画意図を聞きます。 自粛期間中は多くの人が、オンラインのメリットを受けていたはず。これは一方では、リアルな場所の価値転換が起こるということ。BUKATSUDOのお二人が自粛中に考えたことは、私たちがwithコロナの暮らしかたを考えるきっかけにもなりそうです。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
BUKATSUDOコミュニティマネージャーを務める川島史さん(左)と、講座やイベントを担当している平賀めぐみさん(右)

みんなで集まる理由をつくりたかった。

―『わたしたちのstayhome』は、自粛期間中の日々を専用の便箋に綴って、BUKATSUDO GALLERYに展示するという企画です。この企画はどのように生まれましたか?

川島:新型コロナウイルスが落ち着いたら、おうちで皆さんが何をしていたのか知りたいと思ったんです。私自身もそうなのですが、自粛期間中は自宅で過ごす日々の暮らしをどうやったら楽しめるのか考えていました。『わたしたちのstayhome』が、これからの暮らしを考えるきっかけになったり、この期間に考えたことや日々の暮らしを何らかのかたちで記録に残す手段になったらいいなと思います。それに、みんなで集まれる日が来たときの“集まる理由”をつくっておけば、その過程も楽しめるのではないかと考えました。

―この企画のポイントは、専用の原稿用紙を用意するという紙を使ったところだと思います。アナログでやることにこだわりがあったのですか?

川島:私の感覚ですが、外出自粛により人とのリアルなコミュニケーションが制限されてから、オンラインイベントに参加したり、閲覧することが増えました。仕事もオンラインで、ゆっくりくつろぐときもオンラインで……暮らしにデジタルのものが増えすぎていると感じました。私は、この状況に疲れていることに気がついたんです。自粛中もBUKATSUDOの利用者さんたちとやりとりをしていたのですが、皆さんも同じ感覚を持っていることが分かった。だから、『わたしたちのstayhome』はアナログでやろうと決めました。また、オンラインだと情報が流れてしまうので、モノとして形に残しておきたいという思いもあります。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
本企画のためにオリジナル原稿用紙を3種類用意されたそう(illustrated by towatowato5(バナー)/designed by 本村綾子(原稿用紙))

―まだ募集中ですが、具体的にどんなものが作られているのでしょうか?

平賀:私自身は、今まで気がつかなかった家周辺での発見を、写真と文章でつけています。こうやって記録することで、これまでは自分の家の周りのことに目を向ける余裕がなかったんだと気がつきました。BUKATSUDOの利用者さんの様子を伺うと、カメラ部の方は日々の写真を撮ったり、かもめ句会の方は俳句を詠んだりと、それぞれの好きな表現で取り組んでくれているようです。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
平賀さんが日々綴っている原稿の一部。ご自宅の周辺の様子を自由に書き溜めている

リアルな場を持ちながら、場にこだわりすぎないように。

―BUKATSUDOというリアルの場を運営してきたお二人ですが、緊急事態宣言でその場が使えなくなりました。場の価値を知るお二人にとって、そこの閉鎖はキツい選択だったと思いますが、どんなことを考えていましたか?

川島:BUKATSUDOの施設の中心にはBUKATSUDO COFFEEというコーヒースタンドがあるのですが、たとえば、そこで知り合い同士の2人が話していて、フラッと通りかかったもう1人が会話に入る……こんな風景はリアルの場では当たり前です。私がその場にいたら、3人の知り合いでなくても、話が合いそうな人が通りかかったら声をかけて紹介をする、こんなふうに空気を読みながら行動するということを無意識にしていたことに気がつきました

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
BUKATSUDOの中心にあるコーヒースタンド。平日には、コーヒーだけ買いにふらっと顔を出すオフィスワーカーの方もいらっしゃるよう

川島:自粛生活に入ってから、人とのコミュニケーションはクリエイティブなことだなと気がついたんです。相手の様子を見ながらお互いにコミュニケーションをとって関係性を築くというのは、とても創作的なことだと。私にとっては人と人を繋げること、お客様やスタッフのみんななど、誰かとコミュニケーションをとること自体が表現で、その表現の機会が失われたような、そんな気持ちになりました。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
参加者全員でぐるっと円をつくり作家ご本人を交えて課題図書についてたっぷり語り合える「贅沢な読書会」の様子

平賀:イベントでいうと、リアルの場を使えなくなったことで失ったものは、意外にも少なかったように思います。BUKATSUDOは比較的小規模のイベントで、長く続けてきたものが多かったので、オンラインでやってみてもスムーズにコミュニケーションがとれました。リアルの場でやっていたことを全てオンラインで実現するのは難しいけれど、オンラインの特性に合わせて開催することで、お客様やパートナーと繋がり続けるかたちを見つけてきた2ヶ月でした。

―その話は、裏を返せば自粛が明けてリアルの場でイベント開催ができるようになっても、向いているならオンラインを選べる。オンライン・オフラインを混ぜ合わせると、イベントの可能性は広がりそうですね。

平賀:先日、『つきいちスパイスカレー部!』をオンラインで開催したのですが、そこに青森から初めて参加してくださった方がいました。その方は講師のバラッツさんのお知り合いだったのですが、ずっと参加したかったけれど遠くて来られなかった。オンラインならと申し込んでくれたそうです。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
メタ・バラッツさんが講師を務める月に1度の『つきいちスパイスカレー部!』の様子。常連さんから初めましての方まで様々な方が参加している

平賀:趣味や好きなことなら、場所を問わずに繋がれると思うんです。好きなことなら、近くにいる人だけでなく遠くにいる人ともシェアしたい。実際の距離を問わないオンラインで“好き”をシェアして、今度は実際に会ってシェアしましょうという時に、BUKATSUDOを選んでいただけたら嬉しいなと思っています。私たちは、場所を持ちながらも場所にこだわりすぎず、もっとあらゆるコミュニケーションの可能性を見つけていきたいです。

―その可能性は、大きく見れば人の可能性でもありますね。好きとか興味があるというポジティブな感情を広くシェアすることで、新しい何かが生まれるかもしれない。

川島:BUKATSUDOのオープン初期にできたレコード部は活動として成熟期を迎えていて、イベントの開催頻度はすこし落ち着いてきていました。ただ、自粛中に部員の皆さんがオンラインで出来るイベントの可能性を探りたいと言われて、もう一度活動が活発になってきています。こんなポジティブな動きが広がっているのも、この時期ならではだなと思いました。決してネガティブなことばかりではないと思っています。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
自粛中にオンライン開催されたレコード部の活動。自粛明けに、どんな活動がはじまるのか楽しみ!

オンライン・オフラインの垣根を超えて、みんなの“拠りどころ”に。

―首都圏の緊急事態宣言が解除されて、これから少しずつ自粛も解かれていきます。これからのBUKATSUDOはどうなっていきますか?

川島:しばらくの間はレンタルスペースの利用は多くないと思います。一方で、働き方はがらりと変わってコワーキングスペースの需要は増えてくるのでは? と思っています。今は施設全体をワークラウンジとして使えるように、レイアウトを変更しています。

『わたしたちのstayhome』-街のシェアスペースBUKATSUDO
BUKATSUDOのコワーキングスペース「WORK LOUNGE」は、ドロップインのほかお得な回数券や月額利用など利用頻度に応じたプランを用意している

川島:私自身、自粛中は仕事と暮らしが融合したような生活を送っていて、それがすごく心地よかったんです。仕事と仕事の合間に家事をするとか……そういう働き方は、自分で仕事と暮らしのバランスを考えられて心地よかった。もちろんお客様にとって安心できて居心地の良い場を提供することが前提ですが、スタッフの安全性とこころの安定も考える、自分の快適さもきちんと求める、その場にいる全員が気持ちいいかどうかを考えるようになりました。

―面白いですね。もともとBUKATSUDOには様々な“偶発性”を生み出す空間の工夫がある。そこに、お客様だけでなく働いている人の快適さも加えて想像すると、場の可能性はまだまだ広がりそうです。

平賀:偶発的な出会いがあるのがBUKATSUDOの魅力で、そこはこれからも広げていきたいところです。双方向のコミュニケーションでお互いが納得できる会話を楽しめる場所にしながら、やっぱりリアルな場にも行きたいなと思ってもらえるような場づくりをしていきたいです。

川島:いま気がついたのですが、拠点って“拠りどころ”とも言えますね。その場所にいるかどうかにこだわらず、BUKATSUDOは戻ってくる気持ちの居場所でもありたいです。これからは、オンライン・オフラインという垣根を外して、“拠りどころ”の視点で考えていきたいです!

* * *

4月7日の緊急事態宣言の発令以降、私たちの暮らしのスタイルは否応なく変わりました。自粛前は抵抗のあったオンラインコミュニケーションも、実際に運用してみれば効率の良さというメリットに気がつくことが多かったように思います。withコロナの暮らしかたは、オンラインのメリットを引き出しながら、人間の本能として欠かせない直接的なコミュニケーションが混ざり合う新しいスタイルになりそうです。
暮らしを支えるツールの選択肢が増える中で豊かな暮らしをおくるためには、インタビュー中に川島さんが話したように、自分が快適かどうかをきちんと考え、その選択肢を選びとることが必要になってきそうです。

*「わたしたちのstayhome」とは

「お元気ですか?」そんな気持ちを込めて、それぞれの日々の暮らしなかで感じたことや心が動いたことを原稿用紙に綴る、「BUKATSUDO」企画の大人の自由研究プロジェクトです。次にまた集まる日を楽しみに、一人ひとりの時間を写真・文章・イラストで記録した作品を募集してします。状況が落ち着いた頃に、希望者の方のみBUKATSUDO GALLERYでの展示を予定しています。募集締め切りは6月30日(予定)。
https://bukatsu-do.jp/?eventschool=watashitachino_stayhome

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