「地域との共生」を目指すリビタのホテルブランド『THE SHARE HOTELS』|まちとのつながり

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まちとのつながり

「地域との共生」を目指す
リビタのホテルブランド
『THE SHARE HOTELS』

目 次
  1. 1土地の人も旅人も集う『THE SHARE HOTELS』のはじまり
  2. 2「Sharing with locals」地域と共生する、開かれたホテル
  3. 3ずっと前から、地域の方とのつながりを大切にしてきた
  4. 4「ユニークベニューになるか?」を問いつづける
  5. 5地域とホテルの「歯車」をサスティナブルに回していくこと
  6. 6これからシェアしたいのは…「お金」
  7. 7あとがき

あなたは地元が好きですか? 2020年以降、コロナウイルスの影響で外国人観光客が激減し、全国のホテルや旅館は「地元客」に向き合い始めています。こうした活動は、実はリビタがずっと前から『THE SHARE HOTELS』でやってきたこと。『THE SHARE HOTELS』は「地域との共生」をコンセプトに全国展開するリビタのホテルブランドです。空き物件をリノベーションし、運営する同シリーズのホテルは、地域のプレイヤーたちと一緒に「開かれたホテル」として地域にたくさんの出会いと刺激を生み出しています。今回は『THE SHARE HOTELS』のスタートから現在、これからを担う北島優さんにインタビューしました。

土地の人も旅人も集う
『THE SHARE HOTELS』のはじまり

ー 『THE SHARE HOTELS』は2016年、1店舗目の〈HATCHi 金沢〉を金沢にオープンしたのがはじまりで、今では全国に9店舗を展開していますね(20224月現在)。どのホテルも古くからある建物をリノベーションしているから、それぞれの個性を強く感じます。リビタのホテル事業はどのようなきっかけでスタートしたのでしょうか。

実際に事業としてスタートしたのは2014年頃です。でも2012年の入社のときには「地方の使われていない建物をホテルに再生できたらいいな」と思っていました。イメージしていたのは海外のホステルみたいな場所。泊まるだけじゃなく、地元クリエイターのコミュニティがあって、世界中の旅人が惹きつけられるホテルをつくりたかったんです。でも当時のリビタでは、ホテルや地方事業をやっていなかった。入社当初はPR部や遊休不動産の活用提案などを手掛けるコンサルティング部(当時)に所属していました。その時に横浜みなとみらいの街のシェアスペース〈BUKATSUDO〉の企画・プロデュースを手掛けました。

ー 当時まだ日本にはコミュニティが根付くようなホテルがなかったのですね。

まだ少なかったと思います。ところが2014年ごろから、日本でも古い建物をリノベーションしたホテルが注目されるようになってきました。世の中の流れが変わってきたんですね。そんな背景があったので、リビタにあらためてホテル事業を提案したら、みんなにすんなりと理解してもらうことができたんです

ー それで『THE SHARE HOTELS』の1号店を、北島さんが育った街である金沢にオープンしたんですね。コミュニティの場をつくろうとしたとき、既にノウハウを持っていた「シェアスペース」ではなく「ホテル」じゃなければいけなかったのはどうしてですか?

そこが都会と地方の違いなんです。都会は人口が多いので、シェアスペースの利用者が一定層いて採算がとれます。でも人口の少ない地方にそのままビジネスモデルを持っていってもうまくいきません。それで地方では、ホテル事業を軸に宿泊で収益を得つつ、ホテルの共用スペースを街に開くのがベストだと考えました。

〈HATCHi 金沢〉ロビー
〈HATCHi 金沢〉ロビー

「Sharing with locals」
地域と共生する、開かれたホテル

ー 「ホテルの共用スペースを街に開く」といっても、人を集めるのは大変そうです。具体的にどういった方法をとられたのでしょうか?

共用スペースに地域の人が集うようにするため鍵となるのが、やっぱり人です。僕たちは、ホテルづくりも地域プレイヤーと一緒に取り組み、開業後の運営や様々なイベントも地域プレイヤーと一緒に取り組んでいます地域プレイヤーとは、地域のアーティストや伝統産業の担い手、街づくりに取り組む方々などHATCHi 金沢や〈KUMU 金沢のときは、トークイベントをしたり、九谷焼や酒蔵のイベント、伝統工芸のワークショップ、アーティストのアトリエをめぐるツアー、アートフェアなど、たくさんのコンテンツを地域プレイヤーと一緒に取り組みました。そうすると地域プレイヤーの方々や知り合いを含めて、人が人を呼び、自然とこの場を楽しもうという人たちが集まるようになるんです。

ー ホテルというと、地元よりも外部の旅行者が利用するイメージがありますが『THE SHARE HOTELS』は違っていますね。地元と外部、両方が「一緒におもしろい体験をしよう」という空気で利用しています。それは地元にとってもよいことですか

もちろんです。地域プレイヤーの方は自身の活動を地域だけに発表するよりも、エリア外の人が集まるような広いプラットフォームで発表した方が魅力を広く拡散できます。『THE SHARE HOTELS』が地域の方々に提供できるのは、こうした広いプラットフォームです。

一方で旅行者に提供しているのは「本当の地域の魅力」です。ホテルには地域の人たちが集まるため、旅行者はその地域の今の空気が凝縮されたリアルなローカルを感じることができますし、なかには地域の人との会話や出会いもあったりします。

ずっと前から、
地域の方とのつながりを大切にしてきた

ー リビタの目的がホテルを経営すること以前に、地域を豊かにするということが前提にあるから、THE SHARE HOTELS』のような独自のスタイルが成り立つんですね。

そうだと思います。2020年以降はコロナ禍で観光客が減りましたが、マイクロツーリズム(短距離旅行)的なホテルの利用で地域の方々に助けられたことで、地域との関係の重要性を再認識するきっかけとなりました。地域との多様なシェアリングによって地域と共生すること、一緒に文化をつくり続けること。当初から目指してきたことですが、軸を通すという意味で「Sharing with localsにタグラインを先日改めたところです。

ー コロナ禍では多くの宿泊施設が苦戦していましたよね。その結果、ホテルや旅館に「地元客」を重視したプランが生まれました。でもリビタはオープン時から地元客に目を向けていたんですね。

そうですね。地域との関係性を短期間で築くのはむずかしいのですが、これまで集合住宅でもオフィスでもコミュニティに向き合ってきたリビタは、地域における「ホテルの役割」が明確だからこそ、地域の方にも受け入れてもらいやすかったんだと思うんです。コロナをきっかけに、これまでやってきたことの意義を再確認できました。

「ユニークベニューになるか?」
を問いつづける

ー『THE SHARE HOTELS』は東京、金沢、函館、京都、広島、奈良それぞれのホテルごとに強い個性がありますね。どのホテルもイメージが全く違っていて驚きました。企画のときに意識していることはありますか?

それぞれの土地に根付く独自の考えや文化を大切にしていますし、そもそもリノベーションですから、それぞれ元の建物の形状やデザインを極力活かそうとすると、結果的に個性のあるホテルが出来上がるんだと思います。

また、「ここがユニークベニュー(唯一無二の場所)になるか?」ということには特にこだわってホテルづくりをしています。たとえば〈KIRO 広島〉の屋内プールを改修したバーラウンジ「THE POOLSIDE」には、オリジナルな空気感があるんです。大きな空間がトップライトから注ぐ光で明るく満たされ、プールだった時代の趣に包まれ、他のどこにもないような場所です。地域プレイヤーに「ここから発信したい!」と思ってもらえるようなステージをどうやってつくっていくか。それが大事だと思っています。

それから「どれだけ地域の人を巻き込めるか」。地域に愛着を持って発信してくれる作家さんや職人さんのようなプレイヤーとの関わりを、ホテルづくりのフェーズと運営フェーズ双方でつくることも私たちの仕事です。

地域とホテルの「歯車」を
サスティナブルに回していくこと

ー ホテルが完成したら、今度は「存続していく」というむずかしさがあるんですね。そのために、どのようなことを心がけていますか?

地域の循環に入り込んで、共存できているかということです。イベント・コミュニティスペースとして成立している我々の店舗でも、イベントの運営は毎回大変です。本当に好きじゃなければできないくらい。はじめは僕たちがイベントを主催して盛り上げていますが、どの店舗でも少しずつ「イベントをやりたい」という地域プレイヤーが出てきて、うまく回りはじめますそして人が人を呼んでいく。こんなふうに地域とホテルという歯車を「いかに無理なくサスティナブルに回していくか」が重要になってくるんです。

サスティナブルなコンテンツ運営に意識的に取り組んだのが〈KAIKA 東京です。〈KAIKA 東京では、作品の保管場所に頭を抱えるアートギャラリーに対して、共用スペースを「見せる収蔵庫」として小割にして安価に貸し出しています。収蔵庫ですから、ゲストに対して美術館の裏側を覗き見るような非日常体験を提供すると同時に、作品の出し入れが頻繁に発生して、訪れるたびに見ることができる作品が変化します。加えてアートアワードも2年に一度開催していて、入選作品を館内に収蔵展示することで、才能あるアーティストの発掘・支援もしています。我々が寄与できることをしっかりと捉えて、歯車をつくることができていると感じています。まだ開業2年ですが、関わっていただくギャラリーやアーティストと無理なく続けていけそうな手ごたえを感じています。

宿泊者のみ閲覧可能なART STORAGE
宿泊者のみ閲覧可能なART STORAGE

これからシェアしたいのは…「お金」

ホテルづくりのプロセスや街に開いた共用スペース、ひいては地域の魅力までさまざまなものをシェアしているんですね。これから「シェア」がもっと広がる可能性はありますか?

広げていきたいと考えています。実はいま新たに取り組みたい「シェア」は、「お金のシェア」。経済的にも地域と共生できたらと考えています。

ホテルの利益の一部を、地域に還元する仕組みをつくろうとしているのですが普通に「利益の何パーセントを還元しますとしてしまうと、コロナ禍のように利益が出づらいときには打ち切られてしまいます。そこで自社サイトからご予約いただけたら、他社ポータルサイトで予約した場合にかかるはずだった手数料の一部を地域に還元するというもの。さらに連泊時に清掃なしやエコ清掃(環境保護のための簡易清掃)を選んでいただけたら、その一部も還元できるようにするつもりです。お客さんと一緒に無駄なコストを削減して、地域に回すお金を生み出していくようなイメージですね。

ー 「お金のシェア」という発想、とてもユニークですね。ホテル業界全体としては、これからどのような方向に向かっていくのでしょうか?

コロナ禍で見えてきたことは、「ホテル」という用途自体が曖昧になってきたということです。友人と過ごすための遊び場として客室をご利用いただいたり、リモートワークなど働く場としてご利用いただいたり、二拠点居住や中長期滞在など住居のようにご利用いただいたりと、ホテルと地域の人々の暮らしが地続きになってきています。

ライフスタイルホテルというと、ある種ファッション的にとらえられがちですが、僕たちは本当の意味でのライフスタイル、つまり「暮らし方」「生き方」を提案するようなホテルとしてもチャレンジしていけたらいいなと思っています。

<KAIKA 東京>の今いるこの部屋はデュアルライフ(二拠点居住者)向けに改装した部屋です。入居者の不在時にホテルとして貸し出すことで、家賃を減額するプランとして販売しています。

のような不確実な世の中では、先を見通すことは難しいですが、固定概念を持たずたくさんのことにチャレンジしていくしかないかな、と思っています。

あとがき

北島さんの話を聞き終えると、これまでの旅行を振り返ってしまいます。観光地を巡り、ホテルに泊まり、おいしいものを食べて帰る。もちろんそれも楽しいけれど、たとえば地元の陶芸作家の作品に出会うことができたら? 地元のDJやミュージシャンの奏でるサウンドでちょっとした夜遊びができたら? 心地よい方言の中でたのしくおしゃべりできたら? うまく想像できないけれど、もっとインパクトのある思い出深い旅に変わっていたかもしれません。その土地のカルチャーにどっぷり浸かって、地方を味わい尽くす醍醐味を忘れていたような気分になりました。

そんな懐の深いホテルを作るためには「地域の方々とのつながりがとても大切だ」と繰り返し話してくれた北島さん。コロナ禍がはじまるずっと前から続けてきた活動が今、より強い個性を放ちながら注目を浴び、『THE SHARE HOTELS』の存在を揺るぎないものにしています。

その土地の人と、そこに訪れた人をつなぐ『THE SHARE HOTELS』は、これからもあたらしいホテルのかたちをつくり続けていくはずです。

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