家族全員分の個室があるシェアハウス的住まい|お宅拝見

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家族全員分の個室があるシェアハウス的住まい

目 次
  1. 1プライベートな空間を求めて2回目のリノベーションで住み替え
  2. 2ガラスの建具で仕切った約3.4帖の3つの個室が並ぶ
  3. 3意匠も機能も暮らしのハブとなる住まいの中心にあるオープンな洗面

Mさん夫妻は、14歳の長女、12歳の長男との4人家族。子どもたちの成長に合わせて2回目となるリノベーションをすることに。家族全員分の個室をつくり、「楽しく快適なシェアハウス」というコンセプトで住まいづくりに取り組みました。それぞれのプライベートな空間と、ホームパーティーもできる広々としたリビングダイニングを両立したリノベーションについてお話を聞きました。

プライベートな空間を求めて
2回目のリノベーションで住み替え

――Mさんご家族は、以前もリノベーションした住まいで暮らしていたとのこと。どのような住まいだったのですか?

 以前はここから徒歩5分ほどのところにあるテラスハウスをリノベーションして住んでいました。集合住宅ですが3階建てで、子どもがまだ小さかったので、足音などを気にせず暮らせることがメリットでした。2階にオープンなキッチンを中心としたLDKがあり、1階から3階までが階段で立体的に空間がつながっていて、常に家族がお互いの気配や声を感じられるような造りの住まいでした。

――今回は2回目のリノベーションになりますが、住み替えをしようと思われた理由やきっかけはありますか?

 子どもたちが小さいうちは、以前の住まいでとても楽しく暮らしていたのですが、子どもの成長とともに、家族全員が自分のスペースが欲しいと感じるようになってきていました。とくに長女は読書をするなど1人で静かに過ごすのが好きなタイプ。私も同じで、みんなどちらかというとそういう空間を求めていました。子どもたちも自分のプライベートスペースをもって、好きなものを置いたり飾ったりして自分で管理したい年頃になってきているのを感じます。コロナ禍もあり、全部の空間がつながっていると隔離がとても難しいというのも気になっていたところでしたね。

――今回のリノベーションでは以前の住まいと同じエリアにある、115㎡以上の面積のあるマンションを選ばれましたが、この物件を選んだ決め手を教えてください。

 子どもの学校などの関係で同じエリアで、面積は100㎡以上で探していたので、そもそも選択肢があまりなかったのです。このマンションは前から知っていて、管理状態や環境がよいことはわかっていたので、空き物件が出たら候補として考えようと思っていました。この物件は4階なのですが、高台に建っているので景観や抜けがすごくいい。広いルーフバルコニーもあって、開放感があるところに惹かれました。

お施主様ご提供

 このエリアは駅から離れているのですが、その分とても静かで落ち着いていて生活環境として気に入っていました。食べたり飲んだりが好きなので、夫とふたりなら駅近で飲食店が多いエリアに住みたいと思うかもしれないけれど、今の私たち家族にはこのエリアが最高です。子どもたちと一緒に暮らせるのもあと10年くらいかもしれませんから、今後数年間のフェーズは同じエリアで、家族で楽しく暮らせる住まいをつくりたいと思っていました。

ガラスの建具で仕切った
約3.4帖の3つの個室が並ぶ

――リノベーションの設計についてはどのようなリクエストをしましたか?

 「楽しく快適なシェアハウス」というキャッチコピーをつけました。家族全員分の個室が欲しいというのが一番の希望で、それぞれが自分のプライバシーを守りながら、みんなで集まって豊かな時間を過ごせる場所も欲しいということで、シェアハウスというイメージがぴったりだなと思っていました。それから、私たちは友人を家に呼ぶことも多く、多いときは20人くらい集まってホームパーティーをすることもあります。だからリビングダイニングは広くて開放感のある快適な空間にしたいと希望しました。

 私は料理が好きで、休日やホームパーティーのときはキッチンにいることが多いです。人が集まったときのことを考えて、オープンキッチンにしたいという希望もあったのですが、このマンションが壁式構造で、現状のリビングダイニングとキッチンを隔てている壁を撤去できなかったため、キッチンはセミオープンスタイルに。リビングダイニングの方にキッチンを出すことも考えたのですが、かなり狭くなってしまうので、この開放感を活かすために、オープンキッチンは諦めました。でも現状のプランにして、結果的にリビングダイニングがとても居心地のよい空間になってよかったと感じています。

――リビングダイニングからオープンな洗面エリアの前を通って、ガラスのドアの向こうがプライベートスペースになっています。ガラスの建具で仕切った同じ広さの個室が3つ並んでいて、まさにシェアハウスのような雰囲気ですね。

 設計を担当したフーニオデザインさんが提案してくれたプランに、このアイデアがあり、これを見たときに「これだね!」と、私も夫も面白さを感じました。子どもたちもすぐに賛成してくれて、「俺は真ん中!」などと言ってその場で部屋の割り振りも決まったくらい、家族全員が気に入ったプランでした。

――この3つの個室は、それぞれどのように使っていますか?

 一番手前が私の部屋で、真ん中が長男、一番奥が長女の部屋になりました。長男と長女の部屋には通路にデスクと収納があり、学校で使うものをしまったり勉強したりできるようになっています。私は家ではデスクを使わないので通路に収納をつくってもらいました。各個室は3.4帖ほどでコンパクトですが、建具がガラスで各部屋に窓もあるので明るくて抜け感があり、圧迫感や狭さは感じません。こもり感と包まれている感じもあって居心地は抜群。毎晩快適に眠れています。

 デスクが通路に並ぶので、子どもたちが勉強する場所が個室内ではなくなってしまうのは大丈夫なのかなと心配しましたが、子どもたちはそれが面白いと思ったみたいで、自分で使いやすいように工夫して、快適に過ごしているようです。長女からカーテンを付けたいと希望があり、長男と長女のスペースの境界はカーテンで仕切れるようになっています。

――もう一つの個室は、玄関側にある広めの部屋ですね。

 そこが私の個室です。洋服やものが多いので、私は広い部屋を使わせてもらうことにしました。夫は本を読んだり仕事をしたりするのはリビングで、個室では1人でゆっくり寝られたらいいということだったし、私が家にいる時間が一番長いということもあって、現状の部屋割りに落ち着きました。

意匠も機能も暮らしのハブとなる
住まいの中心にあるオープンな洗面

――洗面スペースが住まいの中心にあって、パブリックとプライベートを切り分ける場所にもなっていますね。

 構造の壁の影響から脱衣室の面積があまり取れなかったので、外に出そうということになったのですが、デザイン的な希望としてタイルを使いたいとも思っていたので、洗面に使うことで意匠としても象徴的な場所となりました。起床後に個室から出てきてここで身支度をする生活動線のハブ的な場所になっていますし、お客さまにも手を洗うのに気軽に使ってもらえるので、オープンになっていてよかったと感じています。オープンになっていることで、いつも清潔にして気持ちのよい場所にしておきたいという意識にもなるのがいいですね。洗面の前のスペースは通路でもあるのですが、1つの部屋くらいの広さがあるので、ここがよい余白になっていて、植物を飾ったり、猫と遊んだりする場所にもなっています。洗面台の下に猫用のトイレを置いて、出入口もつくってもらったので、猫のためのスペースにもなっています。

――仕上げの素材はどのように選んでいったのですか?

 タイルとガラスブロックを使いたいという希望を伝えて、タイルは洗面とキッチンの壁に使ってもらいました。ガラスブロックは玄関の壁の一部に使うことで採光にも役立っています。リビングダイニングの床を磁器質タイルにしたこともこだわりの一つですね。以前の家も床がタイルだったのですが、メンテナンスがしやすいことと、空間がキリッと引き締まるような感じがして好きです。

 テイストとしては、ホテルライクな空間にしたいという希望もあり、全体的にシャープな印象の素材で仕上げてもらいました。タイルの色は洗面がグリーンで、キッチンがブルーですが、鮮やか過ぎない色味を選んでいます。

――リビングのソファは造作ですか?

 このソファはリクエストして造作してもらいました。前の家にも造作ソファがあり、家族で過ごす場所としてとても居心地がよかったので、そのエッセンスを引き継ぎ、この住まいでもぜひつくりたいと思っていたのです。4メートルほどあり、背もたれを外してベッドとして使うこともできます。友人が泊まりにきたときには、ここがゲストスペースになりますね。背もたれの裏に間接照明が設けられていて、夜はバーのような雰囲気になって居心地も変わるのです。夜はソファで夫とお酒を飲んだり、映画を観たりしてリラックスした時間を過ごすことも多いです。

――2回目のリノベーションを経験して、感じたことなどを教えてください。

 子どもの年齢によって住まいに求めるものが大きく変わることを、身をもって実感しました。リノベーションは物件の予算を抑えられる分、家族のフェーズに合わせて自由に空間をつくることができる住まい方だと思います。

 都内であればマンションはリセールバリューが高く、住み替えもしやすいので、その都度ライフスタイルに合わせて、物件を買い替えてリノベーションをすることは予算的にも合理的だと感じています。私たちも家族4人で暮らす最後の10年を楽しく過ごすために、今回のリノベーションに臨みました。子どもたちが独立したら、またそのときの状況に合わせて住まいを柔軟に選んでいきたいと考えています。

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文:村田保子/撮影:古末拓也
取材・撮影:2024年1月
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