建築家二人暮らしさんインタビュー自分軸をはぐくみ、私らしい暮らしの心地よさを見つけよう|住まいのヒント

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住まいのヒント

建築家二人暮らしさんインタビュー
自分軸をはぐくみ、
私らしい暮らしの心地よさを見つけよう

目 次
  1. 1豊かな暮らしは、自分軸を見つめ直すことから
  2. 2小上がりから広がる、暮らしの選択肢
  3. 3「都会か田舎か」に正解はない
  4. 4あとがき

建築家のご夫妻によるYouTubeチャンネル『建築家二人暮らし』。建築家目線で発信する暮らし方が共感をよび、チャンネル登録者数は20万人を超えています(2023年8月現在)。今回は、『建築家二人暮らし』のお二人がリビタとともにリノベーションの企画から設備・素材選びまで手掛けた『デュオ・スカーラ市ヶ谷 -あえて、小上がりのある暮らし-』を通じて、「豊かな暮らしとは何か」について話を聞きました。

豊かな暮らしは、自分軸を見つめ直すことから

-『建築家二人暮らし』のYouTubeには「マイミニマリズム」という言葉が出てきます。マイミニマリズムとは何ですか?

妻:ここ数年、ミニマリストやシンプリストといった言葉をメディアなどでよく目にするようになりました。私自身、極端に物が少ないわけではなく、ミニマリストやシンプリストを意識して生きてきたわけではないですが、人から「荷物が少ないね」「家にあまり物がないね」と言われることがよくありました。

確かYouTubeを始めるまえに、ミニマリストとして有名な方の本がたまたま書店で目に留まったので読んだんです。その方は、自分にとって大切な時間である「友人や親族と囲う食卓の場」に使うテーブルや器類はほとんど捨てることはなかったそうです。この考えに、すごく共感しました。大事なのは、自分は何に時間とお金を使って、何に重きを置くのかを、自分自身がしっかり理解しておくことだなと思って。

メディアでミニマリストが取り扱われるとき、私たちの目には、モノをどんどん捨てることが目的になっているように見えました。私たちは、モノが少ないわけではありません。そこで「マイ」を付けて、自分たちにとって必要なものがある状態が重要だということを「マイミニマリズム」という言葉に込めて発信しようと考えました。
「マイ」に自分軸という意味も込めて、「マイミニマリズム」なんです。

-自分にとって本当に大切で優先するものは何か?自分で感じて、考えてほしいということですね。

夫:ある意味では、僕たちの発信は視聴者を突き放しているかもしれません。「私たちはこうです。あなたはどうですか?」と表現していて、「コレがすごく良いですよ! 皆さんもどうぞ」という発信はしないように心がけています。

妻:そう、「これが正解です」というコンテンツは作りたくなくて。「発信している内容はあくまで自分たちの考えだ、というスタンスに共感します」というコメントをもらったことがあります。この想いに気づいている方がいることを知った時は嬉しかったです。

チャンネルが成長するきっかけになった「部屋を広くする家具選び」というコンテンツがあります。ダイニングのテーブルをハイカウンターにすることでテーブル下の収納力が上がることを伝えていますが、すべての家庭で実現できることではないです。このコンテンツで伝えたいことは、「70cmという標準のテーブルの高さについて何も考えずに選ぶのか、高さを変えることで可能性が広がると知って選ぶのか」ということ。テーブルの高さにはいろんな選択肢があるけれど、私たちはコレを選びましたと伝えています。

デュオ・スカーラ市ヶ谷-あえて、小上がりのある暮らし-

-「自分で感じて、考えてほしい」という発信スタンスにした理由は?

妻:YouTubeって誰が見ているかわからないんです。どこで、どのくらいの年齢の方が、どんなプロセスで『建築家二人暮らし』のチャンネルにたどり着いたのかわからない。だからこそ、「これが正解です」という言い方はふさわしくないと思っています。

夫:たぶん「これが正解です」と言ったほうが、動画を見てくれる人は増えます。 僕たちが「これはダメー!」とジェスチャーしながら語ったほうが、グッドボタンが押されて評価も上がりやすいと思う。でも、二人の根っこの想いには、そういう発信はやめておこうという共通認識があるんです。

妻:たいていの人は、正解をくれたほうが楽だと思います。でも、そういう発信には抵抗があるので、いろんな選択肢がありますよという伝え方になるんです。

-他者の答えを自分の考えとして置き換えるのではなく、自分の価値観と向き合って考える。ネット上に答えらしきものがたくさんある今の時代には、なかなか難しいことです。自分軸の豊かな暮らしを考えるヒントがあれば教えてください。

夫:基本的に豊かさとは主観なので、自分軸で豊かだと感じられればいいんです。では、どうやって自分軸の豊かさを見つけるかといえば、無数のアプローチがあると思います。大前提は、いろんな情報に触れることです。自分軸で考える時には何かを選択しているはずなので、まずは選択する情報に触れる。その上で、主観になりやすい状況をつくっていきます。

たとえば、インテリアを北欧風にすることから入ってしまうと、そこに自分の感性が入っているかどうかわからなくなります。それよりも、「座った時に心地良いか」といった主観に触れやすいことを起点に考え始めてみる。部屋全体がまとまっているかどうかは別として、自分が居心地の良いほうを選んでいくと、他者からの価値基準を少しずつ排除する思考になれると思います。

夫:あと、部屋の一箇所の解像度を上げると良いです。いったんソファ周りだけを考えて、クッションとラグがあったほうが居心地が良いとか、ソファにいる時間が長くなりそうだから照明も考えてみるとか。部屋全体のコーディネートだと処理する情報が多すぎるから、小さな範囲で思考を積み重ねていく。そのほうが、自分軸で考えた部屋になりやすい気がします。

小上がりから広がる、暮らしの選択肢

-『デュオ・スカーラ市ヶ谷-あえて、小上がりのある暮らし-』は、小上がりをつくることで、住まいに思考の選択肢を増やしていますね。

夫:小上がりがあることで、住まい手には床座と椅子座の選択肢が生まれます。そして、2つの選択肢が共存している空間があると様々な家具のあり方も想像できます。家具は置かずに畳の上で生活したり、フローリングにデスクとベッドを置いてもいい。どちらの暮らしも捨てないで済む寸法を確保しました。

-当初、リビタ側では、小上がりが販売の足かせになるのではないかと心配していたそうですね。でもお二人と話すうちに、広い空間で自由に暮らすよりも小上がりのある空間のほうが暮らし方に選択肢が増えて、クリエイティブな発想を広げられると確信したのだとか。

夫:今回は不動産・建築・家具の垣根を越えようという大きなテーマがあったんです。つくっている方はそれぞれに暮らしの価値を提供しているけれど、利害関係もあって業界に垣根がある気がしていました。でも、住む人の興味って、「ここに家具を置きたい」という暮らしそのものが対象です。僕たちは、CGなどを使って家具のレイアウトに様々な選択肢があることを提案しています。今回のプロジェクトでは、小上がりとそこでの暮らし方(家具レイアウト)の選択肢を具体的にお伝えすることで、住まう方自身がそこでのワクワクするような暮らしをイメージするきっかけとなり、不動産・建築・家具の垣根を少しでも崩せないかと考えました。

「都会か田舎か」に正解はない

-『デュオ・スカーラ市ヶ谷-あえて、小上がりのある暮らし-』は、リビタが企画している『mydot.』シリーズの一つです。dotを打つように都心の使い勝手がいい拠点を持ち、行きつけの店や地域拠点にもdotを打っていくことで、都心コンパクトをポジティブに捉え自分らしい暮らしを実現していく。お二人が発信している都心でコンパクトに住むスタイルと考え方が似ています。

夫:僕たちは、以前から『mydot.』に近い考えを持っていて、拠点をたくさん持つライフスタイルを望んでいます。たとえば、僕たちがつくった別荘をシェアで所有しつつ、東京にも拠点を持つというように。東京の良さは、まちが変わっていくことです。ただ歩いていても、いろんな場所に情報が落ちていて刺激をもらえる感覚が好きです。

妻:暮らしに選択肢があることを知るって、良いことだろうなという感覚は元からあって。『mydot.』シリーズを知ってから考えていたのは、都心でコンパクトに住むことに豊かさを感じる人もいるし、田舎の大きな平屋で暮らすことが豊かだと感じる人もいて、どちらが正解なんてないんです。

「◯LDK・◯平米・◯万円」と同じような表現をするため、どんな場所に建てても変わりない同じような住宅って多いですよね。そうすると住まいには一つの選択しかないように見えるけれど、実は選択肢ってたくさんあります。この部屋に住む方には、都心の立地でコンパクトに暮らすことで、「なんか、選択肢が広がったな〜」って感じてもらえるとうれしいです。

夫:ここを使い倒してほしいですね。小上がりの畳は思ってもみなかった暮らし方の選択肢を発見するきっかけになりやすいと思うので、暮らしの再発見を楽しんでほしいです。

僕たちが開発した「部屋を広くする家具 LIVING BED」という商品があるのですが、購入された方に使い方を聞いたら、ベッドを小上がりとして使って、寝袋で寝ている方もいました。僕たちには思いもよらない使い方をしていて、それがおもしろくて良いなと思ったんです。

-人の発想って他人には想像がつかなくて、おもしろいですね。

夫・妻:そう。人って、おもしろいんです。

あとがき

住む人の数だけ暮らし方があり、豊かな暮らしは自分軸を磨くことで実現できる。どんな暮らしかたも肯定してくれるような優しいインタビューでした。
この記事を読まれた皆さまは、すでに多くのインテリアや物件情報を見聞きしているのではないでしょうか。情報収集が終わったら、次はじっと五感を澄ませて自分軸の豊かな暮らしを見つけてみませんか。

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