青木 耕平さん・佐藤 友子さんインタビュー北欧のライフスタイルに教わった「フィットする暮らし」の心地よさ。|住まいのヒント

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青木 耕平さん・佐藤 友子さんインタビュー
北欧のライフスタイルに教わった
「フィットする暮らし」の心地よさ。

目 次
  1. 1ショップオープンのきっかけは、北欧のライフスタイルから受けた衝撃
  2. 2「フィットする暮らし」の編集に役立つコンテンツを提供していきたい
  3. 3全員18時退社に社内保育。「当たり前の暮らし」を送るための働き方
  4. 4オフィスの「家化」が促すコミュニケーションとクリエイティビティ
  5. 5住まいに求めるのは「居心地の良さ」と「編集できる余地があること」

食器、日用品、ファッション小物など、暮らしの道具を紹介している『北欧、暮らしの道具店』。日々を心地よく暮らすための提案が詰まったさまざまな読み物も人気のネットショップです。ショップを運営する株式会社クラシコムは、「全員18時退社残業なし」というワークスタイルを徹底しながら業績アップを続ける企業としても注目を集めています。今回はクラシコムの代表取締役・青木耕平さんと、『北欧、暮らしの道具店』の店長も務める同社取締役の佐藤友子さんに、「フィットする暮らしづくり」についてお話を伺ってきました。

ショップオープンのきっかけは、北欧のライフスタイルから受けた衝撃

―青木さんと佐藤さんはご兄妹だそうですが、お二人で『北欧、暮らしの道具店』を始めることになった経緯を教えてください。

青木さん 2006年頃に行った、北欧への旅行がきっかけでした。当時の僕は不動産関係の事業を立ち上げ、佐藤にも手伝ってもらっていたのですが、それが全然うまくいかなかったんですね。ちなみに、不動産会社を介さずに、オーナーと入居希望者が直に交渉して賃貸物件を契約するという、『Airbnb』(※1)の賃貸版のような事業でした。今の時代ならもしかしたらうまくいったかもしれませんが、当時はまったくでした(笑)。

佐藤はそれ以前に一度、北欧へ旅したことがあり、かねてから「北欧は良かった」「もう一回行きたい」と話していたんです。それで、兄の起業の夢に付き合わせたことへのお詫びのつもりで北欧への旅行を企画しました。

でも僕も商売人なので、ただお金を使うだけの旅になるのは嫌だった。そうしたら佐藤が、北欧のビンテージ食器が日本で人気があると言うんですね。それだ!と思って、現地で食器を買い付けて国内で売ることを思い立ち、会社の口座に残っていた100万円ほどのお金と僕のクレジットカード全てを持って、北欧へ行ってきました。

佐藤さん でも、当時のほぼ全財産を費やして買ってきた食器たちは、日本に届いたら半分以上が割れていて…。買い付けたはいいものの、輸送のための梱包の仕方をよくわかっていなかったんですね。あの時は立ち直れないほど落ち込みました。

青木さん 割れずに残ったものをすべて売っても元が取れるかはわからない。でもせっかく買ってきたのだから、ちゃんと自分たちの財産になるような形で生かすことはできないかと考えました。さまざまなビジネスを研究していた僕は通信販売にも興味があったので、ネットショップを立ち上げて、そこで販売することにしたんです。

佐藤さん
 そうしたら、思いがけず反響があったんです。ショップのプレオープン段階からたくさんの問い合わせを頂いて、慌ててメールマガジンへの登録をご案内しました。そして後日、ショップの正式オープンをメールマガジンで通知したら、その日のうちにほとんどの商品が売れてしまったんです。

青木さん
 「北欧で買ってきた食器たちを売る」と決めた時点では何も考えていなかったんですが、当時は映画『かもめ食堂』が公開された頃で、北欧のものやライフスタイルへの国内の興味が高まってきていた頃。たまたまですが、タイミングがとても良かったんですね。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー
クラシコムの代表取締役である青木耕平さん(右)と取締役であり『北欧、暮らしの道具店』の店長も務める佐藤友子さん(左)。

―佐藤さんは1度目のご旅行の際から北欧に好印象をお持ちだったそうですが、北欧のどんなところに惹かれたのでしょうか?

佐藤さん 滞在中に、北欧の人々の暮らし方や働き方に触れる機会がいくつかありました。彼らは、まだ薄暗い朝の8時くらいから出勤して、17時には帰宅するんです。現地でできた友人の家に招かれた時には、夫婦で料理を作って振舞ってくれたり、食後はキャンドルを灯して一緒にお酒を飲んだり。浴室やトイレにまでキャンドルが灯っているんですよ。日本に居たら帰るどころかまだまだ会社にいる時間を、そんな風に過ごしているんです。

日本だったら「オシャレ」として肩肘張ってやるような日常の演出や過ごし方を、北欧ではみんなが普通に、自然体でやっている。家具もほとんどIKEAだったりするんですね。暮らしのディテールに気を配って、日常を少しでも豊かに暮らそうという姿勢が、当たり前のものなんですね。それまでの自分の価値観がひっくり返るような経験でした。同時に、彼らが当たり前にできることが日本ではできていないということに、悔しさも覚えました。

我が家には、最初の北欧旅行の際に買ったカップ&ソーサーがあるのですが、このカップ&ソーサーがこれからの暮らしをきっと変えてくれるだろう、と感じたんですね。北欧で感じたことを日常で思い出すためのシンボルになるだろうなと思って買ってきたんです。

北欧のものを売るということは、私に起こったことと同じようなことが、お客様のもとでも起きていくんじゃないかと思ったんですね。ただものを売るのではなく、私たちがお届けするものを通じて、北欧のライフスタイルへの共感を呼び起こすことができたら。彼らの日常をそのまま真似することはできないかもしれないけど、北欧のライフスタイルのエッセンスを日常に取り入れることはできるんじゃないか。そんな思いをお客様と共有したいという思いを抱きながら、『北欧、暮らしの道具店』を始めました。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

「フィットする暮らし」の編集に役立つコンテンツを提供していきたい

―現在の『北欧、暮らしの道具店』では、北欧以外の国や日本のアイテムも扱っていますが、アイテムはどのような視点でセレクトしているのですか?

佐藤さん 北欧のライフスタイルに通じるもの、お客様に“『北欧、暮らしの道具店』らしさ”を感じて頂けるセレクトを心掛けていますね。それと、私たちが本当に欲しいと思えるものであることを何より大事にしています。

青木さん
 好きじゃないものを人に薦める文章を書くには、テクニックが必要になります。テクニックを持っている人を採用するのは大変なので、本人が思ったことを書けばOKというのは、マネジングする上でもスタッフ採用の面でも、非常に合理的なんですね。クラシコムでは自社サイトでしかスタッフ募集をしていないので、応募してくれる人はほとんどが『北欧、暮らしの道具店』のお客様か読者。なので、ほとんど教えなくても『北欧、暮らしの道具店』らしい文章が書けてしまうんです。

―『北欧、暮らしの道具店』の商品紹介は、商品へのスタッフの思い入れが感じられて読み応えがあります。商品紹介以外にも、収納や料理の特集、スタッフのお気に入りアイテムを紹介する連載など読み物が豊富で、まるで雑誌を読んでいるような気持ちになります。

青木さん ある時期までは広告を使って集客していたのですが、「広告ゼロで収益アップ」という理想を実現する方法はないか?と考えたんです。妄想レベルの理想で、当時はスタッフにも白い目で見られましたが(笑)、最初から無理だと決めつけてはいつまで経っても理想にたどり着けません。そこで思い至ったのが、サイトのメディア化でした。

広告は出す側と、受ける側がある。受ける側は、読者に対して常に有益で面白い情報を提供しているから、そこに読者が集まるわけですよね。僕らのお客様が喜んでくれるような情報を読み切れないほど提供していこう、とショップの内容を転換していきました。

それまでも開店当初からブログの発信やメールマガジンの発行をしていて、商品紹介記事も大量に作っていましたから、もともとメディア的だったんです。変えたことといえば、スタッフそれぞれがパーソナルペースで取り組んでいたコンテンツ作りを、企画ベースにしたこと。あとはショップ向きの人材からメディア向きの人材確保へシフトしたことぐらいでしょうか。

僕らにとっては読み物もアイテムと同じくお客様への提供物。『北欧、暮らしの道具店』というメディアを通じて、「ものや「こと」を発信していくことが僕らのサービスなんです。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー
撮影場所にも使われるオフィスの打ち合わせスペース。天井が高く、窓から燦々と光が注ぐオフィスには、爽やかな空気が漂う。

―メディアとしての『北欧、暮らしの道具店』は、どんなコンセプトで編集しているのでしょう?

佐藤さん 北欧の人々の暮らしぶりに衝撃を受けたという話をしましたが、私には彼らが、他者や他国との比較ではなく自分で自身の暮らしを肯定している、自足しているように感じたんです。クラシコムが掲げる「フィットする暮らし、つくろう」というビジョンが、『北欧、暮らしの道具店』の編集方針そのものでもあるのですが、私たちが伝えたいのは「自分の物差しで、満足できる暮らしをつくっていきましょう」というメッセージ。

私たち自身も、フィットする暮らしを求めて日々模索している生活者のひとりで、コラムや特集で自分たちの暮らしに触れたり、さまざまな方の働き方や暮らし方をレポートさせて頂くのも、読者の方にたくさんの「物差し」のサンプルを見て頂きたいという気持ちからなんです。

例えば、子どもが小さくて、自分にはお金も手間も掛けられない、子どもが散らかすのでインテリアにもこだわれない。でも、こんな工夫をしたら、少し心地よくなるかも。こんなアイテムなら、今の暮らしでも取り入れることができるかも。そんなふうに、自分で自分の暮らしを編集することの意欲を引き出すきっかけになることができたら。大げさな言い方かもしれませんが、社会全体を元気にすることにも貢献できるんじゃないか、そんな思いで取り組んでいます。

青木さん 「豊かさ」や「幸せ」の概念は人それぞれで、計ることができないものですよね。「みんなで幸せになろう」だと、何を以って「幸せ」とするのかが共有しにくいんです。でも「フィットする」というのは生理的な感覚であって、気持ちいい、気持ちよくないというふうに自覚がしやすい。

自分の生き方に対して「このやり方が自分に合っているな」「今の暮らし方は悪くないな」と思えることは素晴らしいことだし、そんなふうに自分の生き方を認められたら、物事にも寛容になると思うんです。そんな人が増えたら世の中が幸せになりますよね。

佐藤さん 「暮らしの編集」には終わりがなくて、その時々の自分にフィットするように続けていくことなんですよね。生きていれば歳も取るし、いろんなことがある。「今の自分はこうだけど、もうちょっとこうなりたいな」という希望を抱いていただけるような、そんなコンテンツを提供していきたいと思っています。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

全員18時退社に社内保育。「当たり前の暮らし」を送るための働き方

―クラシコムは「9時出社18時退社、残業なし」を実践しながら業績アップを続ける企業としても注目されています。現在のワークスタイルに至った経緯を教えてください。

青木さん 北欧へ行ったとき、僕は現地の人々の働き方に刺激を受けました。北欧には、日本人でもその名を知っているようなグローバル企業がたくさんありますが、その企業のビルが19時くらいになるともう真っ暗なんです。僕ら日本人よりも短い勤務時間で経済的に成功していることに驚きを覚えました。さらに、国民一人当たりの名目GDPも日本よりはるかに高かった。佐藤とはポイントが異なりましたが、僕も北欧の人々の暮らしぶりを見て起こった感情は、悔しさだったんです。

彼らより長い時間を働いてビジネスが成長したとしても、勝っていることには全然ならない。なら、同じ条件でやってやろうじゃないか、と(笑)。日本の企業では「デスクに長くいること」が求められがちですが、決められた時間内に成果を挙げることができるほうが優秀だし、認められるべきことですよね。そうした合理的な考えも、9時出社18時退社のワークスタイルを実践している理由です。

それから、北欧では女性がみんなパワフルに働いていることも印象に残ったことでした。国の経済を担ういち働き手として、社会での立場が確立されているんですね。女性のエクゼグティブも多くて、そういう人たちが夕方になったら子どもを保育園に迎えに行き、会社に連れて来て、オフィスの一角で絵を書かせたりして遊ばせて、定時になったら一緒に帰る。そうした光景にも衝撃を受けました。

―青木さんと佐藤さんのお子さんも、学校や保育園のあとはオフィスに来て過ごしているそうですね。

青木さん 結婚して子どもを産んで育てて、ということは、食事や睡眠と同じように、日常の中で起きる出来事。社員が日常的な生活を送ることで潰れてしまう会社なんて、やばいですよね(笑)。子育てしながら働くということは日常であり、決して特別なことではないんです。

僕らの会社は事業内容的に、女性のスタッフが中心になることは目に見えていました。産休を取ったり、子育てしながら働くスタッフが出てくることは想像がついたし、創業当時、僕自身すでに子どもがいて、共同創業者である佐藤も数年以内にそうした状況になる可能性が高かった。そうなっても、それまでと変わらないペースで事業を稼働できる体制と環境をつくることは、創業当時からの取り組みでした。

最終的には、社内保育ができる環境をつくりたいと思っています。今はまだ子どもがいるスタッフは少ないのですが、スタッフの平均年齢的に今後、ペースが加速すると思っています。保育スタッフの採用が次の段階ですね。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー
子連れ出社に対応すべく、オフィスの一角に設けられた畳スペース。働く親たちの姿が見えるようにと大きな窓を設置。

―最近オフィスを増床して、子連れ出社するスタッフが作業できるようにと畳スペースをつくられたそうですね。オフィスづくりでこだわったのはどんなことですか?

青木さん 物件として求めたのはワンフロアの広さと、自然光での撮影するための採光性が確保されていることでした。今のオフィスは最初、下のフロアだけ借りていたのですが、先日上階も借りてリノベーションしました。

リノベーションの設計は建築家の井田耕市さんにお願いしました。ナチュラルでシンプルなデザインを得意とされる方で、過去のオフィスも同じく井田さんの設計です。撮影場所の位置やオフィススペースの広さといった、スペック的なところはもちろん意見しますが、テイストについては完全に井田さんにお任せ。こだわったポイントを挙げるとすれば、それは「居心地の良さ」かもしれません。

天井はできるだけ高く開放的に、スタッフ1人あたりのデスクもなるべく広く。白い壁天井と無垢のオーク床というナチュラルな内装も、できるだけリラックスできる空間にしたいという思いから。スタッフが感じるあらゆるストレスをなくすことは、会社の生産性を上げるための何よりの手段だと思いますね。

オフィスの「家化」が促すコミュニケーションとクリエイティビティ

―ソファコーナーも最近、新たにつくったスペースだそうですね。

青木さん スタッフ同士やエクゼクティブとの間に、自然なコミュニケーションが生まれる場になればと思って設けました。純然なネットショップとしてやっていた頃は、いかに生産性を高く実行するかということが求められる、オペレーティブな会社だったんです。でも今はメディア色が強くなり、食品などのオリジナル商品の開発製造や広告のビジネスも始め、クリエイティビティが求められる会社になってきました。クリエイティビティを発揮するためには、コミュニケーションは欠かせないものです。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー
30人以上いるスタッフの社食をつくるキッチン。広々して明るいキッチンは、スタッフの憩いの場にもなっているそう。

―北欧カラーで彩られたキッチンも素敵です。このキッチンで社食を作ってらっしゃるそうですが、社員食堂を始めた理由も社内コミュニケーションの促進だったのでしょうか?

青木さん きっかけは、スタッフの声でした。僕らの会社は合理主義的かつ個人主義的なところがあるので、18時になればみんなパッと帰るし、スタッフ同士でランチを食べに行くこともあまりなく、「自由だけど、寂しい会社だよね」と言われてしまったんです。そこで、業務時間内にそうした機会をつくるために、ランチタイムに社員食堂を導入しました。週に2回、料理家のフルタヨウコさんに社食を作っていただいています。

佐藤さん スタッフが増えてくると、一人ひとりと話す機会がどうしても減ってきてしまうのですが、朝のコーヒーを淹れるタイミングだったり、キッチンからいい匂いが漂ってきたりすると、みんながキッチンに集まってきて、会話が生まれるんです。キッチンをつくったときにはそこまで想定していなかったのですが、今ではキッチン自体がコミュニケーションの場になっています。

―キッチンを始め、無垢のフローリングやソファ、畳スペースなど、クラシコムのオフィスは住まいのような要素がたくさんあります。

青木さん 「居心地の良さ」を求めたら、家っぽくなりましたね。先ほど会社としてクリエイティビティが求められるようになってきたという話をしましたが、緊張した雰囲気の中では、クリエイティビティって湧いてこないと思うんです。デスクに座っていることが重要ではなくなってきている中、オフィスが家化していくのは当然の流れだと思いますね。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

住まいに求めるのは「居心地の良さ」と「編集できる余地があること」

―お二人のお住まいについてお聞きしたいのですが、これまでの住まい遍歴を教えてください。

佐藤さん 以前は国立市内にある築年数の古い団地に住んでいました。団地ができた当時からほとんど改装されていない、『天然生活』や『クウネル』に出てきそうな味わいたっぷりの部屋でした。分譲賃貸だったのですが、オーナーの方が「自由に手を加えていいよ」と仰ってくださって、自分たちで好きに手を入れながら暮らしていたんです。南向きで明るく、窓の外には森のような緑もあって、すごく気に入っていました。

子どもが生まれてからもしばらくはそこに住んでいたのですが、もっと会社の近くに住んで生活効率を上げたいという気持ちから、4年ほど前に駅からも会社からも近い築浅マンションに引っ越して、今も暮らしています。

今のマンションは、床も壁も天井もとにかく真っ白なんです。天井も高くて、箱のような空間なんですね。賃貸でそこまでシンプルな物件ってなかなかないじゃないですか。自分たちの色を加えていける余地があることに、好奇心を掻き立てられました。

今の家は改装NGなんですが、できないなりの工夫を楽しんでいます。壁紙を傷つけずにきれいに剥がせるフックだったり、賃貸でも壁に取り付けられる棚とか、ホームセンターに行ってはそんなアイテムを探しています。こうした経験は店のコンテンツづくりにも生きていて、賃貸暮らしでもできる部屋づくりのアイデアを紹介したりしています。今の家に住み始めて「改装できなくても、工夫次第で自分らしい空間づくりはできる」ということが習得できましたね。

青木さん 僕も、国立で最初に住み始めた家はUR賃貸住宅の団地でした。その次にマンションに住んで、今は一戸建ての賃貸に住んでいます。

今の住まいは、オーナーの知り合いが声を掛けてくれてたまたま出会った物件でした。オーナーが終の住処として建築家と建てたもので、普通のハウスメーカーが建てる家は経済合理性が優先されますが、そういうのがまったくない、一切妥協せずこだわったことが見て取れる家なんです。1階も2階も各部屋が引き戸で仕切られていて、開けるとひとつの空間になるようになってるんです。小さな窓も各所にあって、とにかく風通しが良い。天然素材もふんだんに使われた、非常に凝った家なんですね。

僕はものすごく出不精なので、家から一歩も出なくても気持ち良く過ごせることが気に入っています。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー
ソファコーナーでのリラックスタイムはアイデアの発想に欠かせないもの。無垢フローリングも、まるで住宅のリビングのような心地よさを演出。

―お二人は「いつか家をつくってみたい」という願望はありますか?

青木さん 「家を持ちたい」という願望はあまりないのですが、もし持つことになったら、「ロの字型」の家を建ててみたいですね。外側には窓がひとつもなくて、空気孔しかない。でも、内側はたくさん窓があって開かれているような。完全に引きこもりの発想ですが(笑)。

佐藤さん 私はいつか絶対リノベーションをしたい!と思っているんです。私は青木と会社を立ち上げる前はインテリアコーディネイターの仕事をしていたくせに、まっさらな空間でいちからつくっていくということが苦手で(笑)。もともとの間取りや内装があるような、制約がある空間のほうががぜん燃えるタイプなんです。このマンションだったら間取りをこう変えて、こういう家具を作って、こんな照明を付けて…というふうに、家づくりしてみたいですね。

―職場も住まいも国立というお二人ですが、国立の街の気に入っているところを教えてください。

佐藤さん 国立の街は子育てがしやすいし、なるべく長く住んでいたいと思っています。この街に住もうと思ったきっかけになった大学通りも、街の雰囲気も気に入っています。仕事で都心に出掛けて夜に国立に帰ってくると、空気が違うんですよ。「気持ちがいい」と思えることが、飽きずにこの街に住み続けていられる理由かもしれません。

青木さん 僕も、大学通りの気持ちよさや、住宅街らしい落ち着いた雰囲気が国立の好きなところですね。僕は住む街や家に対するこだわりはあまりなくて、決め手になるのはいつも感覚。住む街も家もオフィスも、風通しや日当たりなど、気の流れがいいと感じるかどうかを重視しています。

佐藤さん いつか子どもから手が離れて、自分のためにいろんなことをインプットしたいという季節が巡ってきたら、吉祥寺や西荻窪のような、今よりも少し刺激のある街に暮らしてみるのもいいかなと思っています。夜、街を歩いているだけで何だか楽しいとか、美味しいご飯を食べに行ける店が近くにあるとか。そんな街で中古リノベーションをやってみたいです。

※1 『Airbnb』(エアビーアンドビー) 宿泊施設・民宿の貸し手と借り手をつなぐマッチングサイト。世界190カ国以上の国々の宿が登録されている。

青木 耕平さん・佐藤 友子さんのお気に入り

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

壁に飾られたかわいらしい絵は、佐藤さんのお子さんの作。佐藤さんのお子さんは保育園が終わると、ここで遊びながら佐藤さんの終業を待っているのだそう。子連れ出社を容認し、社内保育の実施も計画しているクラシコムでは、そんな光景がいずれ当たり前のものになるのかもしれない。佐藤さんはスタッフのデスクスペースにも自分の席があり、お子さんと過ごすとき以外は、集中して作業したいときなどにこの部屋を使っているという。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

社内コミュニケーションを大事にしているクラシコム。ミーティングスペースに使っているのは、北欧を代表する家具メーカー「アルテック」の家具。中でも、打ち合わせスペースに使っているラウンド型のテーブルは、「以前使っていたスクエア型よりも対話がしやすくなったんです」と青木さんのお気に入り。ナチュラル過ぎないモダンなデザインも、セレクトの理由だそう。

青木耕平さん・佐藤友子さんインタビュー

佐藤さんお気に入りの道具は、『北欧、暮らしの道具店』でも取り扱っている、スウェーデン生まれの掃除ブラシ。視覚障害を持つ職人によるハンドメイドで、誕生から100年以上経つ、地元スウェーデンでは伝統的な暮らしの道具。ご自宅で細かいものの埃取りとして長く愛用しているという佐藤さん。リビングの壁にぶら下げておいても絵になるデザインもオススメのポイントだそう。

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