“駅”が地域に化学反応を起こす。-新潟駅直結の複合型シェアスペース「MOYORe:」がもたらすものとは(前編)-|まちとのつながり

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まちとのつながり

“駅”が地域に化学反応を起こす。
-新潟駅直結の複合型シェアスペース「MOYORe:」がもたらすものとは(前編)-

目 次
  1. 1みんなの駅の交流拠点「MOYORe:」とは
  2. 2駅を「交通の拠点」から「暮らしのプラットフォーム」へ
  3. 3MOYORe:で起きていること
  4. 4地域での場づくりに必要な「炊き立ての白いご飯」
  5. 5MOYORe:を軸に、さらに拡がる交流の輪

「まちづくりとのくらし」では、これまでにリビタと関わった自治体や、まちづくりに携わる人々との対談や取材を通して、暮らしにまつわる可能性を様々な切り口から発信していく予定です。

本シリーズの第三弾は、新潟駅直結の新たな複合型シェアスペース「MOYORe:(モヨリ)」から考える「まちづくりとのくらし」です。

MOYORe:」は、新潟駅直結商業施設の「CoCoLo」南館1階に2020年9月に誕生した複合型シェアスペース。オープンから2年が経ち、「MOYORe:」を起点に地域で新たなつながりが生まれています。

今回は、そんな「MOYORe:」が生まれた背景や、この場でこれまでに生まれたコト、今後の展望を、関係者の話から紐解いていきます。

プロフィール

上田 智之 |東日本旅客鉄道株式会社 新潟支社営業部事業課副長
大阪府出身。大学卒業後、人が多く利用する駅や鉄道車両で面白いことをしたいという動機で東日本旅客鉄道株式会社に入社し流通事業や広告事業に従事。特に商品の開発、イベントの企画、広告や宣伝など自身のアイデアを活かして新しい魅力を創ることを生きがいにしている。2021年に新潟へ転勤。地元行政や企業と連携しながら新潟駅の再開発と周辺地域のまちづくりに現在尽力中。

三九二 和孝|JR東日本新潟シティクリエイト株式会社 執行役員地域商社部長

新潟市出身。1981年に当時の日本国有鉄道新潟鉄道管理局に採用され、山形県庄内地区、新発田駅での勤務を経て新潟駅に異動。その後国鉄改革を迎え、JR東日本グループに属しながら人材育成・人材開発やホテルメッツ等の立ち上げ業務を複数行う。現在はJR東日本新潟シティクリエイト株式会社で MOYORe:をはじめ 新潟の地域の魅力を発信する事業に従事している。

原田 智子|株式会社リビタ MOYORe:コミュニケーションマネージャー
北海道札幌市出身。旅好きが高じて色々な土地を旅しながら、国内外からバックパッカーが集まる宿のマネージャー業務を経験。その後株式会社リビタに入社しTHE SHARE HOTELSの新規立ち上げや、地域人材の発掘、支配人等のホテル運営業務を経て、現在所属する地域連携事業部へ異動。2020年9月からはMOYORe:にてイベント企画を推進しながら、あそぶ・まなぶ・はたらくを実践中。

みんなの駅の交流拠点「MOYORe:」とは

「みんなの駅の交流拠点」と聞いても、「MOYORe:」を訪れたことがない方は、どんな場所なのかイメージが思い浮かばないでしょう。
「MOYORe:」オープン時のステートメントには、このようにあります。

物質的な近さよりも、精神的な近さ。
ここに来れば、何かがある。ここに来れば、誰かと出会える。
街の人だけでなく、この街を訪れる出張者や観光客にとっても「最寄り」の駅になる。
また、新潟に来たときに、訪れたくなる。

あたらしい駅の交流拠点MOYORe:があることで、
街と駅、街と人、街と街を繋ぐ
そんなみんなにとっての「最寄り」の駅になること、
海と大地がもたらす豊かな食文化と、職人の手で受け継がれたものづくり文化のある新潟で、
地域の皆さまの新たな発見や出会いの拠点となることを目指しています。

街と駅、街と人、街と街を繋ぐ、みんなにとっての「最寄り」の駅になるー。「MOYORe:」という名称に込められた想いを体現するような機能が、この施設には備えられています。

たとえば、出張者の新幹線や電車の待ち時間にも利用できるワークラウンジやミーティングルーム。

また、ビジネスやカルチャーなど、ジャンルを問わず地域内外の人々を集めたさまざまなイベントが開催されるホールもあります。

また、工具などを備えたアトリエでは、工作やDIYのワークショップをしたり、ちょっとしたものづくりをすることが可能。

そのほか、ヨガのレッスンなどに利用できるスタジオや、展示・物販ができるポップアップスペースなども。「MOYORe:」は駅にありながら、こうしたさまざまな機能を有することで、ジャンルを超えた人々の交流が生まれる可能性を秘めた、まさに「みんなの駅の交流拠点」なのです。

駅を「交通の拠点」から「暮らしのプラットフォーム」へ

そんなユニークな存在である「MOYORe:」ですが、開業の背景には新潟市の街の歴史と変遷、そしてJR東日本グループとしての街への強い想いがありました。

新潟市は、信濃川・阿賀野川の河口に開かれた川湊とともに育ち、古くから日本中の物や情報が集まる北前船の最大の寄港地として発展してきました。

新潟市中心部は、料亭や旧豪商の邸宅などが集積し、当時の花街文化、湊町文化の面影を今なお残す「古町」地区、全国展開のブランドなど大規模な商業施設が集積する「万代」地区、そして新潟の玄関口として、鉄道の高架化や南北を結ぶ幹線道路の敷設、駅前広場の整備等の再開発が進行しさらなる発展を魅せる「新潟駅周辺」地区等に分けられます。

こうした歴史的な背景や性格の異なるエリアの分断が、新潟市の街の課題となっています。このことから、最近では新潟市が推進する古町から万代、新潟駅までの都心軸2kmエリアの魅力発信、活性化を図る『にいがた2キロ』という取り組みも活発化しています。

参照元:新潟都心のまちづくり「にいがた2km」(新潟市)

こうした状況の中、現在JR東日本新潟支社で新潟駅の再開発と周辺地域のまちづくりを担当する上田智之さんは、次のように語ります。

上田:JR東日本は地域に駅を構え、そこを拠点に人々の生活や移動をお手伝いする事業を主軸としているので、地域の方々との関わりは切っても切れません。人々がビジネス、教育、観光と様々な目的を達するための場所(人やモノと交流するきっかけ)が地域になければ、駅の利用やその地域への移動という需要は生まれず、地域が元気でなければ我々JR東日本は存在できません。

そのため、JR東日本は地域と連携した「まちづくり」に取り組んでおり、他の地域との繋がりや関係人口を創出し、そこから定住人口の維持・増加に結び付け、地域社会の持続的な成長につなげることを目指しているのです。

そんな中、JR東日本グループとしてMOYORe:を開設した狙いは何でしょう?

上田:JR東日本では駅を「交通の拠点」という役割を超えて、ヒト・モノ・コトがつながる「暮らしのプラットフォーム」へと機能を転換させる「Beyond Stations構想」に取り組んでいます。
その一環として新潟駅の連続立体交差化事業を契機に、にいがた2kmエリアの地域のショク(食・職)文化の担い手と連携したまちづくりに取り組んでおり、そのプラットフォームとして新潟駅に「MOYORe:」を開設しました。

Beyond Stations構想

東日本旅客鉄道株式会社 上田 智之さん

MOYORe:で起きていること

2020年9月に誕生した「MOYORe:」では、「地域内外のプレイヤーが集まり、交流と創発が生まれ始めている」と、施設を統括するJR東日本新潟シティクリエイトの三九二 和孝さんはその手応えを語ります。

三九二:数々のイベントを行ってきたMOYORe:ですが、一例をご紹介するとすれば「MOYORe: NIIGATA NEIGHBORS」でしょうか。これは新潟市内外で活躍する一芸をもったゲストを「日替わりマスター」として招き、参加者とざっくばらんに話しながら交流を促すというものです。

単純に見えますが、我々としては地域で活躍する人たちの個々の動きや想いを可視化できる。またゲストの方も地道にやってこられた活動の発表の場となる。そして参加者の方にとっては地元の方々との関係性がつくれる交流機会になるという、皆にとって有意義な場となっています。

2022年10月までに計14回開催され、128名の方が参加したそう。このイベントを通して、ゲスト同士や参加者の化学反応が生まれているといいます。

三九二:たとえば2021年7月22日に開催した会では、新潟で魅力あふれる取り組みをしている人を模したプリンをつくって新潟を発信する「プリンエディター」の活動などに取り組むマルヤマトモコさんをゲストに招いたんですが、国内最大級のダンスフェスティバル「にいがた総おどり」の総合プロデューサー、能登剛史さんをモチーフにしたプリンを発表してくれたんですよ。

そしたらそれがきっかけとなって、能登さんが「にいがた総おどり」20周年記念の写真展や映画の上映会を「MOYORe:」で企画してくれたんです。そんなふうに、地域内外のプレイヤーがつながって、コラボレーションが起き始めていますね。

JR東日本新潟シティクリエイト株式会社 三九二 和孝さん

地域での場づくりに必要な「炊き立ての白いご飯」

「MOYORe: NIIGATA NEIGHBORS」の開催など、「MOYORe: 」の企画運営を担うのが株式会社リビタです。

横浜みなとみらい「BUKATSUDO」をはじめ様々な施設の企画・運営を通して、「コミュニケーションマネジメント」「コンテンツ企画・運営」「集客・プロモーション企画」等のノウハウを培ってきたリビタ。そのノウハウを活かし、「MOYORe: 」でもスペースの企画・運営を通じた交流や創発づくりに取り組んでいます。

リビタの担当者として「MOYORe:」のコミュニケーションマネージャーとなったのは、原田智子。リビタでは「LYURO 東京清澄」の立ち上げ担当や「THE SHARE HOTELS」の支配人としてホテル運営を経たのち、地域連携事業部へ異動。これまでさまざまな地域で、場を通じた交流を生み出してきました。そんな原田は、「MOYORe:」の担当になったときのことをこう振り返ります。

原田: 新潟に来て最初に思ったのは、ほんとに新潟って全部揃っているなということです。以前勤めていた金沢の様な北陸の雰囲気もあれば、東北・北関東の色もある。全国5位という大きな県の面積の中にいろんな歴史・産業・文化が隣り合っている。そして何より新幹線のおかげで東京との接続もいいので情報や人の行き来も多い。そんな豊かな環境の中で私は何をやっていこうかな?って最初はちょっと悩みました。課題が多い方が燃えるタイプなので(笑)

株式会社リビタ 原田 智子

そんな原田はコミュニケーションマネージャーとして、イベントの企画・運営から司会まで担ったり、また新潟駅界隈で起こる様々な活動について上田さんや三九二さんの壁打ち役になったりと、欠かせない存在になっているそう。そんな原田の印象を、三九二さんはこう語ります。

三九二 :原田さんはいろいろな施設でコミュニケーションを生み出す仕事をしてきた経験もあって、その企画力や運営ノウハウには助けられています。特に、イベントにおけるゲストの魅力を引き出しつつ、来た方にも気持ちよく参加してもらう技術は、ほんとうに素晴らしいなぁと感じていますね。

原田はじめリビタのメンバーは、地域連携事業に取り組む際に大切にしていることがあるといいます。それは、“炊き立ての白いご飯”のような存在である、ということだそう。いったいどういうことでしょうか。

原田:私たちリビタが地域の仕事をするとき、忘れちゃいけないのが常に“よそもの”であるということです。嫌われちゃいけないし、いい感じに溶け込まなきゃいけない。そんな時に浮かんだイメージがまさに新潟の誇るお米、“炊き立ての白いご飯”なんです(笑)

ご飯って、どんなおかずとでも合うし、エネルギー源にもなるし、飽きがこないですよね。この3つの役割を持つ存在が、地域で場づくりをする際には重要なんじゃないかと思っています。

MOYORe:を軸に、さらに拡がる交流の輪

かつての新潟港がそうであったように、さまざまな人やモノが集まり、交わり合う「港」は、ビジネスや文化が育まれる場所でした。原田は、「駅も、現代における港のような場所なのでは」と語ります。

人が集まり、交流し、創発が生まれるー。そんな、交通拠点から一歩進んだ駅の可能性を予感させてくれるのが「MOYORe:」という場所なのです。

再開発工事が進行するJR新潟駅(2022.10現在)

「MOYORe:」の活動は、まだ始まったばかり。現在も地域のプレイヤーが掘り起こされ、つながりつつあるそうですが、今後はコロナの様子を気にしながら、「MOYORe:」を起点にどんどん別の地域に飛び出していくなど、さらに交流の輪を広げていく試みも進行中です。

たとえば、越後妻有地域で開催される世界最大規模の国際芸術祭「大地の芸術祭」との連携も動き出しています。後編では、そんな「MOYORe:」と「大地の芸術祭」の連携について、ご紹介していきます。

MOYORe:の詳細はこちら

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