アクセントウォールで空間を彩る
リノベーション事例からみた壁材の選び方
リノベーションによる住まいづくりの魅力は、なんといっても動線や間取り、テイストなどの要素から、自分らしさを表現できることでしょう。その中でも今回は、部屋の印象を左右する「壁材」について見ていきます。
アクセントウォールの考え方から壁材となる素材の種類、さらには選び方のコツまで、実際のリノベーション事例をもとにご紹介します。
これから住まいづくりをしようと考えている方や、いまどのような壁材を選べば良いか悩んでいる方も参考にしてみてください。
アクセントウォールとは
アクセントウォールとは「空間内で目を惹く(アクセントとなる)壁」のことで、他の壁とは異なる素材を用いた特徴的な壁面を指しています。リノベーションを考えたことがある人のなかには、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
例えば白の壁紙を貼っている空間に、1面だけ色つきの壁紙や異素材を導入するだけで、部屋の印象はがらりと変化します。素材によって空間のイメージを大きく変えられるため、こだわりや好みをストレートに表現できるのがポイントです。
一般的な壁素材の種類
アクセントウォールの壁材として、今回は5つの素材を紹介します。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
1.壁紙(クロス)
最もポピュラーな壁素材のひとつに、壁紙が挙げられるでしょう。壁紙(クロス)は、紙や布、合成樹脂などでできたシートの総称で、壁や天井、石膏ボードといった下地に貼ることで装飾と保護の役割をするものです。その種類は幅広く、
・ビニールクロス
・布クロス
・紙クロス
・無機質クロス
・木質系クロス
・メタリッククロス
・オレフィンクロス(樹脂系)
などがあり、質感や機能性も異なります。幅広い種類の中から、リビングルームや水回りなど空間の特性に合わせて適切な素材を選べるのが魅力です。扱いやすい素材なので施工の手間も少なく済み、コスト面を抑えられるメリットがあります。
2.タイル
タイルとは、素焼き材に釉薬をかけて焼成した陶磁器製の素材で、水や汚れに強く、キッチンや浴室など水回りがある部屋によく用いられてきました。カラーバリエーションも豊富で、光沢のあるものからマットなものまで質感もさまざま。タイルサイズや貼り方でも印象が変わるのが魅力です。
一方、材料費と複雑な施工手順によって費用がかかるのが注意点でもあります。
3.木材/古材(板壁)
無垢材や合板などの木材を張って仕上げた壁を板壁と呼びます。木質系の部材は上質感を演出したり、空間を広く見せたりすることができるのが特徴です。無垢材を使えば木目による風合いや香りを感じられるため、寝室やリビングといったリラックスしたい空間の壁素材としておすすめです。
経年変化による味わいを楽しめるのも魅力ですが、寒暖差による影響で反りやゆがみが発生する可能性もあります。部材の特性を理解した上で検討しましょう。
4.塗り壁
塗り壁は古くから親しまれてきた壁材です。内装用としては主に、漆喰や珪藻土、モルタルが挙げられます。漆喰や珪藻土には自然素材らしい素朴な風合いはもちろん、調湿機能や防臭・脱臭効果があるのもポイントです。モルタルは熱の影響を受けにくいことから、倉庫やパントリーなど一定温度で物を保管したいスペースにおすすめの素材となっています。
5.石材
石材は高級感のある壁材として知られています。天然石らしい風合いや、凹凸感が豊かな表情を演出するため、エントランスやリビングのTV裏など、アイキャッチとなる場所への使用として選ばれることがあります。
アクセントウォールに使う壁材の選び方
このようにさまざまな壁素材がありますが、マンションでのリノベーションを考える時、アクセントウォールに使う壁材はどのように選べばよいのでしょうか。ここでは3つの観点からみていきましょう。
・デザイン面
どのようなイメージの空間にしたいのかを想像してみましょう。どの素材を用いるにしても、質感やデザイン性で部屋全体の雰囲気が変わります。インテリアのテイストや、「温かみ」「リラックス」「集中」といったキーワードから空間のイメージを作り上げ、壁材を検討してみるとよいでしょう。
・機能面
壁材の機能面を確認することも重要です。水回りには掃除のしやすいパネル材や、水汚れに強いタイルなどがおすすめです。湿度や温度を一定に保つ効果のある漆喰や珪藻土は、人が集う場所に用いるのもよいでしょう。
また壁紙は、防臭・防カビ・抗菌などといった機能性を持たせたものも多くあるため、コストを抑えながら快適な空間づくりをしたい場合にぴったりです。
・バランス
壁材単体で検討するのではなく、床材や窓枠、家具、カーテンなどのインテリアといった、空間全体のバランスを考慮することも大切です。全体を俯瞰しながら色味や質感、デザインなどの足し算・引き算をして調整してみましょう。
素材別|アクセントウォールにこだわったリノベーション事例
ここでは実際に、様々な壁材を用いてアクセントウォールにこだわったマンションリノベーションの事例をご紹介します。
【石材・タイル】インテリアと機能性を両立させたシェアハウス的空間
「楽しく快適なシェアハウス」をコンセプトに掲げた、家族全員分の個室がある住まいです。空間ごとの壁材にこだわっており、インテリア要素と機能性を両立させています。
洗面とキッチンにはそれぞれグリーンとブルーのタイルを用いて、個性的な空間を作り上げました。
LDKにある造作ソファと相性抜群な石材の壁面も、空間を印象づける役割を担っています。背もたれの裏には間接照明が設けられているため、夜はバーのような雰囲気へ変化します。照明に照らされた石材は、凹凸に合わせて影が落ちてしっとりとした高級感のある印象を演出しています。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都世田谷区
居住者構成:4人
専有面積:115.54㎡
間取り:4LDK
既存建物竣工年:1988年
リノベーション竣工年:2023年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/17258
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【塗装】モルタルのグレーを主体に統一感を持たせる
働くこと、住むことの2つを同居させた住まいづくりの事例がこちらです。
この事例で興味深いのが、パブリックゾーンとプライベートゾーンの機能性を明確に分けている点です。視覚的にもわかりやすいよう、明暗を落とし込みデザインしました。象徴的な寝室の斜め壁はモルタル塗装で素朴な印象に。モルタルのグレーに合わせて、壁や天井、床の仕上げを決めたといいます。
またディテールのパーツ色を、パブリックゾーンは真鍮、プライベートゾーンは黒スチールに定めることで、感覚的にオンオフのイメージを掴めるよう仕上げています。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都江東区
居住者構成:夫婦
専有面積:62.29㎡
間取り:ワンルーム
既存建物竣工年:1984年
リノベーション竣工年:2019年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/629
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【タイル・クロス】ユニークなクロスで子ども部屋を彩る
漫画やフィギュア、音楽にアウトドアなど幅広い趣味を持つご家族のリノベーション事例です。メンズライクな無骨なテイストに大人らしさを添え、バランス良く空間を仕上げています。
リビングダイニングの壁はライトグレーに統一し、巾木を白にしてアクセントをプラス。最後まで色味に頭を悩ませたというホワイトのダクトレールが、空間を広々と見せています。
ステンレスのオープンキッチンに質感のあるグレータイルや、モノトーン調の洗面台に合わせたホワイトタイルなど、異素材を散りばめているのもポイントです。
さらに子ども部屋にもひと工夫。花や鳥が散りばめられた愛らしい壁紙は、娘さんが自分で選ばれました。アクセントウォールとして柄のあるクロスを入れれば、子供らしい特別な空間が広がります。
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<リノベーションデータ>
所在地:神奈川県横浜市
居住者構成:夫婦+子ども1人
専有面積:79.69㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:2003年
リノベーション竣工年:2022年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/12487
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【木材・タイル】木材をアクセントにナチュラルな空間づくり
料理やお酒が趣味のご夫婦の事例です。アクセントとして随所に木材を用いて、温かみのあるインテリアに仕上げました。おふたりが好きだという木材の雰囲気をたっぷりと盛り込みながらも、重くなりすぎないようにホワイトの塗装でさじ加減を調整。
アクセントとして寝室の壁やトイレの壁と天井にも木材を取り入れ、家全体での統一感を持たせています。好きで買い集めているという観葉植物との相性もよく、ナチュラルで心地良い空間が魅力です。
また思い切って遊んでみたかったという水回りも注目です。浴室の壁はビビッドなブルータイルとガラスブロックで都会的な印象に。ご夫婦の遊び心を感じられる空間となりました。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都江東区
居住者構成:夫婦
専有面積:84.53㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:1985年
リノベーション竣工年:2017年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/1156
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【タイル】表情豊かなタイルが演出する“非日常のような拠点”
ホテルのようなメゾネットタイプの物件を、自身のライフスタイルに合わせてリノベーションした事例です。インドアとアウトドアの趣味のどちらも楽しむため、非日常感のある拠点として住まいづくりに挑戦しました。
目を惹くのが、随所に散りばめられた多種多様なタイルの壁です。例えばキッチンは濃いグリーンの縦長タイルで、秘密基地のようなワクワク感を演出。洗面台はグレーの壁と調和するスクエアタイルを採用し、ミニマムな美しさを感じられる空間となっています。
下のフロアへ向かう階段の壁はベージュ調のレンガ風タイルを使用しました。飾り棚には趣味で作った木製の模型を展示し、ギャラリースペースのように活用しています。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都新宿区
居住者構成:シングル
専有面積:83.94㎡
間取り:1LDK
既存建物竣工年:1987年
リノベーション竣工年:2021年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/15938
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【有孔ボード】収納性、防音性のある有孔ボードで暮らしを便利に
等間隔に穴が空いた「有孔ボード」を壁材として利用するアイディアもあります。有孔ボードはフック等を取り付けてフレキシブルに衣類や雑貨を収納できるほか、防音効果もあるため子育て中の世帯にも心強い材質のひとつです。
こちらは、子どもの成長に合わせて2度目のリノベーションをされた事例です。これまでの家にあったL字壁の雰囲気を引き継ぎ、新たに設置した壁の上部には室内窓を設け、壁材として有孔ボードを採用しました。
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<リノベーションデータ>
所在地:東京都練馬区
居住者構成:夫婦+子ども2人
専有面積:72㎡
間取り:3LDK
既存建物竣工年:1980年
リノベーション竣工年:2020年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/330
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アクセントウォールを取り入れる上でのポイント
アクセントウォールにこだわりを持ったマンションリノベーションの事例を見てきましたが、ここで実際にアクセントウォールを取り入れる際に注意したいポイントを3つご紹介します。
1.事前に下地の状態をチェック
中古マンションの壁紙を貼り替える際は、事前に下地の状態を業者にチェックしてもらいましょう。
例えば、石膏ボードの下地が劣化していると、仕上がりに影響することもあります。検討段階で専門業者に物件を確認してもらい、現状の下地の状態を把握した上で壁材の選択肢を絞っていくのもポイントです。
2.壁材サンプルと仕上がりの違いを知っておく
壁材を検討するときには、手のひらサイズのカットサンプルを見本にするのが一般的です。ただ、実際の仕上がりとイメージの違いが発生するということも予め念頭に置きましょう。面積が大きくなることで色の印象は変化するため、可能な限り大判のカットサンプルを用意するのがおすすめです。
また開口からの光の入り方で、サンプルでは気にならなかった凹凸や質感に気付くこともあります。部屋の方角や光の入り方などを想定して質感を観察するのも重要です。
3.職人さんの腕の差が出やすいため注意
壁面のリノベーションには、古い壁材を剥がして、下地を平らにならし、新しい壁材を張り込むといった複合的な工程が発生します。特に壁紙や塗り壁などは、下地処理が目立つことから職人さんの技術によって仕上がりに差が生まれてしまいがちです。
見積もり段階から納得できる金額感を前提に、リノベーション実績などを確認しながら信頼できる会社、職人さんへお願いするのがよいでしょう。
壁選びにも遊び心を持って、理想の住まいづくりを
壁は住まいを形作る重要な構成要素のひとつです。日常生活を送る上で自然と目に入る部分だからこそ、こだわって決めたいインテリア要素でもあります。今回ご紹介したように、壁材には非常に幅広い素材があるとともに、それぞれの特性や質感が素敵な住まいづくりへの鍵を握っています。
ただ、選択肢が多くて費用も材質によって大きく変動するため、決めるのが難しい側面もあります。迷ったら住まいづくりのプロに相談して、組み合わせや予算のコントロールをお願いするのがよいでしょう。今回ご紹介した事例を参考にしながら、ぜひ理想の住まいを実現してみてください。