シェアハウス運営の裏側と、コロナ禍で変化した「シェアする暮らし」の在り方|シェアする暮らし

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シェアハウス運営の裏側と、
コロナ禍で変化した「シェアする暮らし」の在り方

目 次
  1. 1「シェアプレイス」は、SNSを現実世界に落とし込んだ場所
  2. 2「おかえりがある、ひとり暮らし。」に込められた意味
  3. 3建物を「つくってから」、部屋を「貸してから」が本当のスタート
  4. 4社員のみでは解決できない課題を、エディターとシェアする
  5. 5 「入居者と運営会社の共創」を思い描いた「シェア4.0」

10代から50代までの多世代、そして学生や会社員、フリーランスや経営者といった異業種の人たちが共に暮らすシェアハウス。その運営の裏側には、どのような想いや仕組みがあるのでしょうか。そして、コロナ禍で変化したという「シェアする暮らし」の在り方とは? リビタのシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」エリアマネージャー・加藤陽介さんにお話を聞きました。

加藤陽介(右)
まちづくり系のNPOや、建設会社での勤務を経て、2014年にリビタに入社。現在はプロパティマネジメント部で「シェアプレイス」のマネージャー業務を担当。プライベートでは、自社の団地型シェアハウス「りえんと多摩平」をはじめ、二畳半箱型移動式シェアハウスなど、コミュニティのある暮らしを満喫してきた。

馬場澄礼(左)
取材ライター。2018年に「シェアプレイス調布多摩川」のエディター(コミュニティ編集者)として、3ヶ月間シェアハウスに住みながら、交流イベントの企画やSNSでの情報発信を担当。そこで出会った人・コト・ハコ(建物)の影響を受けて、現在はシェアスペースの運営や、空間デザインの記事制作などに携わっている。

馬場澄礼(以下、馬場):加藤さんは、シェアハウス運営のお仕事を7年ほど担当されながら、入居者として住まわれていたご経験もあるんですよね。ぜひ今日はいろんなことを教えてください。

加藤陽介(以下、加藤):「シェア」というキーワードにご興味をお持ちの方や、場づくりをされている方に、この記事を読んで何かを持ち帰っていただけるようがんばります。

「シェアプレイス」は、SNSを現実世界に落とし込んだ場所

馬場:いつ頃から、なぜシェアハウス事業をはじめることになったのでしょうか?

加藤:いまある物件のなかで最も歴史が長いのは、2006年にオープンした「シェアプレイス東戸塚」なので、シェアハウス事業をはじめてからもう15年以上経っています。
新規事業を立ち上げたのは、当時mixiなどのSNSが普及しはじめたことと、独身寮や社宅を手放す企業が増えたことが主な理由だと聞いています。

馬場:mixiって、共通の趣味や仕事を持つ人たちがオンライン上でつながって、交流を楽しめるサービスですよね。

加藤:はい。SNSって、普通に生活していたら出会わないような人たちが、気軽に交流できるプラットフォームじゃないですか。それをリアルで実現する場所として「シェアプレイス 」が誕生しました。

馬場:最初のコンセプトはSNSのリアル版だったのですね!

加藤:そうなんです。シェアハウスと聞くと、5〜6人で戸建てを借りて住むイメージをされる方も多いかもしれませんが、リビタの物件は現状だと最小で12室、最大で112室になっています。

馬場:確かに、企業寮や社宅をリノベーションした物件が多いですよね。「ある程度の規模感」を大切にされている理由って、どんなところにあるのでしょうか?

加藤:基本的には、50人前後から暮らせる建物を探して、オーナーさんからお借りするようにしています。事業性を保つため、という理由もありますが、それよりもコミュニティを形成する上で50人って「ちょうどいい距離感」を保てる人数なんですよね。

「おかえりがある、ひとり暮らし。」に込められた意味

馬場:「ちょうどいい距離感」ですか。

加藤:自分もシェアハウス暮らしを経験して実感しましたが、5〜6人だと距離が近すぎる分、オンとオフを切り替えづらくて。「共同生活だけど、距離感は自分で決められますよ」「そのときの気分に合わせた過ごし方をしてくださいね」と選択肢を提示できるように、ある程度の人数で暮らせる共用部の床面積や動線計画などを大切にしています。物件探しでは、そこに立地や静けさなどを加味している感じですね。

馬場:「シェアプレイス」のコンセプトになっている「おかえりがある、ひとり暮らし。」を実現できる場所、ということでしょうか。

加藤:はい。これまで一般賃貸に住まわれていた方でも過ごしやすいように、交流のための共有スペースと、プライバシーを守れる個室をしっかりと分けた空間設計にしています。

加藤:物件ごとに間取りやデザインは異なるのですが、極力キッチンカウンターを設置するようにしていて。料理をする人と食事をする人が、自然と顔を合わせられる場所なので、「今日は何をつくってるの?」「一口食べてみる?」といった会話が生まれやすいんですよ。コミュニケーションを誘発する仕掛けとして、キッチンのデザインを大切にしています。

馬場:実際に私も住んでみて、「シェアプレイス」は自分のペースを保ちながら、人とのつながりを育める場所だと感じました。みなさん平均で何年くらい住まわれるんですか?

加藤:平均で2年弱、長い方だと10年くらいですね。もちろん、長期間住んでいただけたら運営側としてはありがたいのですが、自分たちは「シェアプレイス」という場所を「人生の通過点」と捉えているんです。きっと、何か目標を持って入居される方が多いと思うんですよ。
友だちを増やして価値観を広げたいとか、共同生活に慣れたいとか、ビジネスや人生のパートナーを見つけたいとか。なので「シェアプレイス」での暮らしを通して、それぞれが目標を達成したり成長したりして、巣立っていってもらえたら嬉しいですね。最近では、入居者さん同士の結婚も増えていて「おめでた退去」と呼んでいます(笑)。

建物を「つくってから」、部屋を「貸してから」が本当のスタート

馬場:それはおめでたい卒業の形ですね! リビタさんと入居者さんって、ただ「貸して終わり」じゃない、温度感のある関係性を築かれていますよね。

加藤:ありがとうございます。シェアハウス初心者の方にとっては、多種多様な人が共に暮らすコミュニティに入っていくのって、結構ハードルが高いと思うので。ご入居後もサポートできるように、社員がコミュニティーマネージャーとして担当物件に顔を出すようにしています。

馬場:入居していた頃を思い返すと懐かしいです。自分も含めて、何か相談したいことや話したいことがある人は、加藤さんにお声がけしていましたね。雑談を交えながら。

加藤:やっぱり物件を「つくってから」が本当のスタートなのかなと。社員がコミュニティ促進のお手伝いをして、物件の魅力づくりを担っていきたいとも考えているので、定期的にリビタ主催の交流イベントを実施するようにしています。
入居者さん主催の面白そうなイベントも多々ありますが、運営会社が企画したオフィシャルイベントって、誰でも遠慮せずに参加できると思うので。シェアハウス暮らしを経験したことがある社員や、入居者さんと年齢が近い社員がお客様目線に立ちながら、積極的なコミュニケーションを図るように心がけています。

馬場:コミュニティ促進と言えば、これまでも何度か物件内のコミュニティ編集者を募るエディター企画を実施されていますよね。2021年は「シェアプレイス経堂」での活動が印象的でした。

加藤:このエディター企画は、過去に3回ほど実施していて。実は、馬場さんだけじゃなくて、自分も元エディターなんですよ(笑)。そのご縁がきっかけでリビタに入社しています。

社員のみでは解決できない課題を、エディターとシェアする

加藤:自分が参加した1回目の「りえんと多摩平」は、日野市にある旧多摩平団地を再生させた物件なので、若者を集めて多世代交流を促したかったそうなのですが……東日本大震災直後のオープンだったこともあり、なかなか入居者さんが集まらなくて。
でもリビタのオフィスは都心にあるので、距離が離れていて社員が気軽に立ち寄ることもできず。リビタのみでは解決できない課題を乗り越えるために、「住まいながらシェアハウスという場所を編集するエディター」という企画がはじまったそうです。

馬場:私も参加させていただいた2回目の「シェアプレイス調布多摩川」は、個室や共有スペースが広かったり、敷地内に大学の国際寮があったりと建物のポテンシャルがとても高い物件でしたね。

加藤:はい。85室ある大型物件なのですが、リビタでは活かしきれない部分もあったので、リビタ入社後に自分が企画者としてエディターさんを募集しました。10,000㎡を超える敷地の広さを活かしたまち開きイベントや、入居者さんと国際寮に住む学生さんとの交流イベントなどを実施したことで新たな風が吹き込み、満室稼働につながりました。

マルシェ、ワークショップ、ガレージセールなど計48店舗が集結した「​​いっぴんいち」。

馬場:少しでもお役に立てたなら嬉しいです。3回目の「シェアプレイス経堂」は、なぜ募集されたのでしょうか?

加藤:やはりコロナですね。集まることや、シェアすることが懸念されるなかで、正直「これからどうしていこうか?」という不安があって。コミュニケーションは絶対になくならないし、今後も交流価値の必要性は感じているけど、それは事業者側の仮説であるため、確信が持てるような未来のイメージが描きづらくなっていました。
そこで、入居者の方々のリアルな声を汲み取るために、物件のオープンに合わせてエディターさんを募集することにしたんです。当初は3名枠を想定していたのですが、40名以上の方からご応募いただきました。

馬場:すごい倍率ですね! みなさん、誰かとつながりたいという想いをお持ちだったのですね。

加藤:特に広告は出さずに、自社のwebサイトとSNSのみの告知だったので、反響に驚きました。この応募数自体が、コミュニケーションが求められていることの裏付けなのかなと。交流価値を再認識できたというか、「これからも自分たちがやってきたことを信じていいんだ」と思えましたね。

馬場:明るい兆しが見えてよかったです。「シェアプレイス経堂」は、エディターさんがいることでどのような変化が生まれましたか?

加藤:入居者さんからは「引っ越してすぐの頃は不安だったけど、積極的に声をかけてくれるエディターさんがいたおかげで、コミュニティに入りやすかった」とか、「リビタと入居者の仲介役になってくれたことで、スムーズに意見が反映されてよかった」とか、「SNSの発信を見て物件の申し込みを決めた」などのお声をいただいています。
みなさんのご活躍もあって、3ヶ月間のエディター活動中に、無事に満室にすることができました。このバトンを次につなぐために、2021年9月オープン予定の「シェアプレイス下北沢」でも、新たなエディターさんとご一緒することが決まっています。

「入居者と運営会社の共創」を思い描いた「シェア4.0」

馬場:最後に、リビタさんが思い描くこれからの「シェアする暮らし」について教えてください。

加藤:リビタでは、これまでの「シェア」という概念の変化を3段階のフェーズで捉えていて。「シェア1.0」はモノの共有。「シェア2.0」はモノと人と場の共有。「シェア3.0」は、そこに価値観の共有が加わる状態です。

加藤:そして、コロナによって一時的に「人と場」が切り離された今、衛生対策だけでなく、コミュニティに対する働きかけを行うことで「人と場」が再起する必要性を感じています。「シェア3.0」には単純に戻らないかもしれませんが、その先の「シェア4.0」を住まい手と運営側が共に考え、実践し、「新しいシェア文化を創り育て」ていきたいと考えています。

馬場:「シェア4.0」、そして「新しいシェア文化」ですか。

加藤:はい。たとえば「シェアプレイス経堂」は「ワークスペース付きのシェアハウスに住みたい」というご意見を反映した空間ですし、他物件では敷地内にキッチンカーを誘致したり、ライブラリーを新設したりしています。時代背景を読み解き、ご要望に耳を傾けながら、いま求められている暮らしの形をご提案できたらいいですね。
原宿にある「THE SHARE」では、「シェアサイクルが欲しい」というご意見をいただいたので、コミュニティサイクルのポートを物件に誘致しました。「シェアプレイス調布多摩川」では、入居者さんから「敷地内に菜園をつくりたい」という声が上がったので、現在ヒアリングをしながら試運転をはじめています。

馬場:「入居者同士の共創」だけではなく、「入居者と運営会社の共創」がはじまりつつあるのですね。

加藤:ちょうどいま、そうした未来を思い描いているところです。「シェアプレイス」は、運営会社が決めた制度や仕組みに依存せずに、入居者さんが自発的に生活するための受け皿でありたいと願っていて。でも、人間ってチャンスやきっかけがないと成長ステージを上げづらいじゃないですか。だから、自分たちはただ部屋をお貸しするのではなく、新しい一歩を踏み出すようなお手伝いができたらいいなと考えています。
「シェアプレイス」をイベントやサークル運営の練習の場にしていただいてもいいですし、共同生活で価値観をぶつけ合いながら、学校や会社では教えてもらえない人との関わり方を学ぶのも、すごく意義があることですよね。

馬場:「シェアする暮らし」って、みんなで成長していける暮らし方ですよね。

加藤:その通りですね。もし「シェアプレイス」でそうした実感を掴んでもらえたら、リビタが運営する大人のためのシェアスペース「BUKATSUDO」や、ローカルの魅力をシェアする「ザシェアホテルズ」にも足を運んでいただけたらなと。住まうことだけでなく、シェアしながら働くことや遊ぶこと、泊まることを体験していただき、新たな発見をしてもらえたら嬉しいです。

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