リノベーション×テイスト別事例からみる理想の住まいのつくりかた|住まいのヒント

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住まいのヒント

リノベーション×テイスト別事例からみる
理想の住まいのつくりかた

目 次
  1. 1住宅インテリアの今と昔
  2. 2インテリアテイスト別でみる間取り変更事例
  3. 3こだわりの世界観をつくるうえで取り入れたい間取り変更のポイント
  4. 4憧れのテイストを取り入れた住まいづくりに挑戦

インテリアのテイストは住まう人の好みや価値観を現す要素です。リノベーションを検討する上でもテイストの選定は欠かせません。今回はインテリアテイストの変遷やトレンドにおける昨今の傾向や、代表的なテイストでの間取り変更について、実際の事例を交えながら理想の住まいづくりのポイントを見ていきます。

住宅インテリアの今と昔

理想のインテリアや世界観を考える前に、まずは国内におけるインテリア産業の変遷や、昨今の流行スタイルなどを見ていきましょう。

<国内におけるインテリア産業の変遷>

かねてより住宅産業におけるインテリアは、住宅を構成する重要な一要素でした。戦後から今日に至るまで、日本の住宅・インテリア産業は主に4つの段階に分けられます。

①戦後〜1973年 西洋様式の一般化
戦後から1973年までは、いち早い復興と国民の生活レベルを向上させるため、政府は公営住宅などの公的住宅機関におけるキッチンなどの規格を標準化して、モダンな西洋様式インテリア建材の開発を進めました。工期短縮や低コスト化、大量生産などが重んじられていたため、インテリアへの価値はまだ低い段階にあったのです。

②1973年〜1991年 インテリアテイストの幅が広がる
1973年から1991年の高度経済成長期には、インテリアが商品価値として強化されていきます。着工戸数が減少する中で市場を活性化し、消費者の購買意欲を高めるために他社と差別化されたインテリアが重要とされました。そのため海外様式の模倣や組み合わせなどを行い、テイストバリエーションの幅が広がった時期でもあります。また一般的な間取りの規格とされるnLDKプランが一般化したのもこの時期です。

③1991年〜2009年 インテリアの機能・性能が充実
1991年から2009年の間にはバブル崩壊や震災、少子高齢化の加速、環境問題への意識の高まりなど、社会的課題が大きく浮き彫りとなりました。住宅を取り巻く市場も余波を受け、住宅環境の質的向上が掲げられたことにより、インテリア産業と連携して性能を向上させる動きが活発化していきます。
ユニバーサルデザインやシックハウス対策、省エネルギーといった機能・性能が充実。インテリアは付加価値的な役割から機能面でも役割を果たすようになったのがこの時期の大きな特徴です。

④2009年〜現在 インテリア産業とリノベーションが結びつく
今日では住宅の選択肢も増え、新たに建てることよりも既存住宅を利用することに主眼を置くようになります。そこで著しい成長を見せたのがリフォーム(リノベーション)市場です。生活者が自身のスタイルを表現する空間づくりという観点で、リノベーションが住宅づくりの主体となってきています。インテリア産業もこれまでの多様化や高機能化の動きから、リノベーションに対応すべく幅広い品目を個別で生産するような流れへと変わってきています。

お宅拝見「Rを描く木の壁で、 多彩な居場所を切り分け」より

<インテリアテイストにおけるトレンド変遷>

リノベーションは様々な変遷を経て、住まいづくりの方法として一般化されていきました。
近年不動の人気を誇るテイストは、シンプルな白いシャツのような「ベーシックインテリアテイスト」です。同様に、白い建材とくすみカラーと呼ばれるペールトーンカラーを組み合わせた「北欧テイスト」も定番となっています。
一方2022年には、ドアや家具などポイントに赤みのある木材を取り入れたテイストが人気となりました。家族とともに居心地のよい空間や温かみのある住まいが求められているのかもしれません。

インテリアテイスト別でみる間取り変更事例

多様なインテリアテイストがある中でも、リノベーションをする本来の目的を叶えながら、こだわりの世界観を作り上げた事例をご紹介します。ここでは代表的なテイスト3つをピックアップしました。

①「北欧ナチュラル」カフェにいるような温もりを

国内で不動の人気を誇る北欧テイスト。素材の持つ本来の温もり感や優しい印象を感じさせてくれるため、老若男女から愛させるデザインです。フィンランドやノルウェー、デンマークといった北欧諸国は冬の期間が長いことから、家にいる時間が長くインテリアが発達したと言われています。
木材の持つ温かみを活かしながら、ペールトーンカラーやパステルカラーを取り入れたり、空間にアクセントを入れたり、タイルなどの異素材を組み合わせたり、有機的なつくりが特徴です。

「カフェのような家がいいね」という想いを落とし込んだリノベーション事例がこちら。

お宅拝見「Rを描く木の壁で、 多彩な居場所を切り分け」より

団地と公園が一体となって溶け込んでいる住環境に惚れ込み、ドキドキ・ワクワク感のあるクリエイティブな提案を建築家と作り上げていきました。そして辿り着いたのが、曲線を多く取り入れた有機的なインテリア。梁や構造癖に隙間の空いた薄い曲線の壁を加えることで、存在感を和らげながら光や風、視線の抜け道を作っています。

目線のポイントになる壁はカラフルに。好みの色や色調を建築家に伝え、パステル調の色彩で統一されるように選定。柔らかなミントグリーンやイエローが部屋に彩りを与え、居心地の良さを演出します。

この事例を最も象徴するのは「R」形状の壁です。室内窓や扉を施した緩やかな曲線の壁が、食卓やダイニングなどのパブリックな空間から、作業スペースなどのプライベートな空間までを優しく結びます。色々な方向に視界が抜ける室内窓は、壁で仕切られているものの全体が繋がっているような印象を与えているのもポイントです。

間取り図(before→after)

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<リノベーションデータ>
所在地:東京都多摩市
居住者構成:夫婦
専有面積:80.73㎡
間取り:3LDK
既存建物竣工年:1987年
リノベーション竣工年:2011年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/3831
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②「海外ヴィンテージ」建物の持つ歴史を空間に継承

ヴィンテージテイストとは、使い古された風合いと希少価値の高さを兼ね備えたスタイルです。ヴィンテージという言葉は当初、英語でワイン造りを指す言葉でしたが、のちに「時代もの」という意味を含めて使うようになりました。大切に使い込まれてきたような年代感や手作り感を感じられるものが多く、DIY家具などとも相性が良いテイストです。

ここで見ていくのが建物のヴィンテージ感をそのままインテリアに取り込んだリノベーション事例です。

お宅拝見「海外暮らしを彷彿させるヴィンテージマンション」より

横浜市内の高台にある築46年のヴィンテージマンションを選んだご家族。144㎡の広さと緑豊かな住環境、そして時間を積み重ねて育まれた建物の魅力を活かしてリノベーションを施しました。

壁は塗装、床にはオークの挽板(ひきいた)をセレクト。「傷や汚れも時間を重ねて味わいになっていくような素材が好み」というご家族の意向に合わせて採用されました。空間を仕切る引き戸には木枠+ガラスの建具を取り入れ、全体の繋がりと開放感を感じるつくりに。

そして最も目を惹くのがレンガ仕上げになっているリビングの壁です。

白く塗装するという案もありながら、状態が良かったことと「建物の歴史や痕跡を残したい」という意向から、インテリアとして活かす方向へと進めました。この壁は当初から、建物の外壁と同じ仕上げとなっており、内外の連続性を強調するようなデザインが印象的です。その意匠を継承して、新たな住まいへと生まれ変わっています。

間取り図(before→after)

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<リノベーションデータ>
所在地:神奈川県横浜市
居住者構成:ご夫婦+子ども1人
専有面積:144.71㎡
間取り:3LDK
既存建物竣工年:1975年
リノベーション竣工年:2021年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/10036
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③「インダストリアル」機能美と無機質をキーワードに普遍的な価値を

インダストリアルとは工業的・産業的という意味で、無機質でむき出しなイメージを持つインテリアスタイルを指します。コンクリートの躯体は質感をそのまま残したり、アイアンの無機質な印象を配置したり、無骨な雰囲気が演出できます。また無垢材などの天然素材を組み合わせることで抜け感も生まれます。

「機能美と無機質」をキーワードにインダストリアル風な住まいを作り上げたリノベーション事例です。

お宅拝見「機能美と無機質」より

こちらにお住まいのご夫婦は将来的に実家近くへ移住することを考えていたため、資産価値という観点でエリアや物件を選んだといいます。リノベーションする上でも賃貸に出しやすい空間にしたいと考え、誰にでも受け入れられやすく、住む人が好きに装飾できるようなベーシックなスタイルを目指しました。

コンクリートの躯体を露出させた壁・天井・梁が印象的。さらに床には大判の陶磁器タイルを施しました。断熱材が入っている箇所は露出できないため、新しく壁を作り塗装風クロスで仕上げています。床にはモルタルを採用したかったものの規約があり難しかったため、質感の似たタイルを採用しています。

窓が多く日当たりの良い特徴を活かし、光が届く空間を作り上げたのもポイントです。土間とLDKが一体となったオープンな空間もそのひとつ。見せる収納としまう収納を分けることで、LDKの開放感をキープしたまま、空間を心地良く保っています。

また寝室の壁も上部を開けてガラスにすることで、光を取り込み広々としたスペースへ。コンパクトながら機能性とシンプルな美しさを体現した事例です。

間取り図(before→after)

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<リノベーションデータ>
所在地:東京都渋谷区
居住者構成:ご夫婦
専有面積:55.35㎡
間取り:2LDK
既存建物竣工年:1980年
リノベーション竣工年:2016年
お宅拝見記事:https://nokurashi.com/ownersvoice/3084
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こだわりの世界観をつくるうえで取り入れたい間取り変更のポイント

住まう人や家族の価値観が反映された事例をご紹介してきました。実際にリノベーションを検討する上で、こだわりの世界感を取り込む際のコツはどんなものなのでしょうか。3つのポイントに分けて見ていきましょう。

・目的→間取り→テイストの順に考える
住まいの世界感やテイストを先行して考えたくなるものですが、まず考えるべきはリノベーションをする目的です。その目的を叶える間取りを考案したうえで、好きなテイストを掛け合わせていくフローで進めるのがおすすめです。

・イメージボードなどで世界感の共有をしっかりと
最終的な素材感や色味は、デザイナーや建築士にまとめてもらいます。彼らに希望のスタイルや雰囲気を共有するためには、口頭だけではなく、イメージボードや参考画像など具体的な例を用いて伝えましょう。
お客様によっては、暮らしの中で大切にしたいキーワードを抽出してマインドマップにしたり、参考となるインテリア事例に好きなポイントと苦手なポイントを記しながらまとめていく方もいらっしゃいます。自分らしい伝え方で、価値観を共有することが大切です。

・暮らしの変化にも対応できるような可変性も考慮
10年先、20年先のことも見据えてリノベーションすることも重要です。ライフステージが進むことで住まいの使い方が変わったり、賃貸へ出すことを踏まえ資産価値からリノベーションに踏み切ったりと、さまざまなケースが挙げられます。
インテリアテイストだけにとらわれることなく、リノベーションの目的と将来的な展望をもとに、可変的な間取りを検討しましょう。

憧れのテイストを取り入れた住まいづくりに挑戦

昨今のリモートワーク需要で、住まいの価値が見直される転換期となっています。理想のライフスタイルを落とし込んだ家は、豊かな日常をもたらしてくれるでしょう。
居心地の良い空間は人それぞれ。リノベーションをする上で、まずは目的を明確にすることが大切。目的という基礎に間取りを組み立て、インテリアテイストや世界感で彩っていくイメージです。住まいづくりのプロと相談しながら、ぜひ憧れの住まいづくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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