俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|前編
ほりもとゆうき。1974年、和歌山県生まれ。國學院大学卒業。俳句結社「蒼海」主宰。二松学舎大学、東京経済大学非常勤講師。俳人協会幹事。2016年度「NHK俳句」選者。2019年度4月より「NHK俳句」第4週「俳句さく咲く!」選者。第2回北斗賞、第36回俳人協会新人賞受賞。著書に句集『熊野曼陀羅』(文學の森)、『俳句の図書室』(角川文庫)、又吉直樹との共著『芸人と俳人』(集英社文庫)、穂村弘との共著『短歌と俳句の五十番勝負』(新潮社)など著書多数。
http://horimotoyuki.com/
俳人・堀本裕樹とBUKATSUDOかもめ句会 ~初春の京都吟行~
「俳句」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
松尾芭蕉、ご年配の趣味、ルールが細かい、難しそう、など、世代によってその印象は異なるかもしれませんが、“17音の世界一短い詩”とも言われる俳句は、今あらためて注目され、若い世代にもファンが広がりつつある文化でもあります。
みなとみらいの“大人の部活がうまれる街のシェアスペース”「BUKATSUDO」では、俳人・堀本裕樹さんを講師にお招きして連続講座「俳句のいろは教室」を2015年2月に開講。2016年4月からは「BUKATSUDOかもめ句会」として、兼題に沿った句を持ち寄る形式で毎月1回の句会を開催し、アットホームな雰囲気で俳句を楽しむ時間を共有しています。
まだまだ寒さが続く2月中旬、堀本さんとBUKATSUDOかもめ句会の面々が集合したのはなんと “京都”! 「RAKURO 京都-THE SHARE HOTELS-」を拠点に行われた、初春の京都吟行の様子をご紹介します。
「吟行」とは、俳句や和歌を詠むために景色のよい所や名所旧跡に出かけることを言います。今回集まったのは講師の堀本さんと、いつもBUKATSUDOかもめ句会に参加する関東からのメンバー、そして京都・三重・滋賀・和歌山など関西各地にお住まいの方々も加わり、計15名。堀本さん主宰の句会に参加経験がある方や、堀本さんの著書を通じてこの世界に興味を持ち、俳句に親しんでいるという共通点で、出発前から早速打ち解けはじめていました。
行程の参考にしたのは、RAKURO京都で宿泊者に提供しているオリジナルマップ。京都の魅力を発信する企画会社「らくたび」とのコラボレーションでつくられており、定番のスポットから2度目、3度目の京都旅行をされる人にも嬉しいディープなスポットも多数掲載されています。今回はRAKURO京都のある丸太町エリアに近い3枚を持って出発しました。
RAKURO京都からすぐ、街なかに広がる自然「京都御苑」
平安時代からの奥深い歴史と広大で豊かな自然を感じられる京都御苑では、咲きはじめたばかりの梅や蝋梅に迎えられました。
「今回は、立春(2月4日)を過ぎているので初春の季語を選びます。自然や人など、風景を細かく見て、俳句の題材になりそうなものを探しましょう」と堀本さんからアドバイスをいただき、いよいよ吟行のはじまりです。
美しい庭園と宮家建築の「閑院宮邸跡」。無料で見学できる展示室には、京都御苑の四季折々の動植物が紹介されていて、なかでも存在感があったのはアオバズクの食痕(親鳥がヒナに餌として昆虫を与えるため、足や羽などを取り除いてを巣下へ落としたもの)の標本。その展示を誰よりも長く見つめていたのは堀本さんでした。
庭園の池には静かに佇む鷺(サギ)が数羽。
「鷺は季語になる?」
「青鷺だと夏の季語。冬鷺だと冬の季語だけど……鷺そのものは季語にはなっていないね」
歳時記をめくり、視界に入るさまざまな情景とこの時期に使える季語を照らし合わせながら歩きます(歳時記はスマートフォンのアプリにもあります)。
少年野球の試合が行われているグラウンドのそばを通りながら、地元の人々にとって京都御苑が身近なくらしの場でもあることを実感しました。
歩きながら季語を見つける、そのライブ感が吟行の醍醐味
晴れてはいるものの、2月の京都はやはり冷え込んでいます。ときおり雪がちらつく空を見上げて「風花(かざはな)だね」と言う堀本さん。
「風花」は冬の季語なので本来は「季違い」ですが、吟行では実際に見たもの・体験したことを表現するため、こういうときは使ってよいと教わりました。
RAKUROから徒歩20分ほどで到着したのは、江戸幕府初代将軍 徳川家康が築城した世界文化遺産・元離宮 二条城。
連休の中日ということもあり、国内外から詰めかけた観光客で大変な賑わいでした。国宝・二の丸御殿では数々の壮麗たる壁画や襖絵、空間装飾を見学。徳川家の栄枯盛衰と約400年もの歴史を感じながら、踏むたびにきゅっきゅっと鳴る鴬張りの廊下を進みました。
「吟行で見たもの・感じたものをふりかえり、仲間と共有する「句会」」
後編につづく