シンプルな素地の空間を、アートで飾る暮らし
- 所在地:
- 東京都品川区
- 居住者構成:
- 3人(夫妻+子ども1人)
- 専有面積:
- 77.38㎡
- 間取り:
- 1LDK
- 既存建物竣工年:
- 1967年
- リノベーション竣工年:
- 2022年
玄関を入ると左手に8.7帖の個室があり、現在は家族みんなで寝室として使っている。右手にはトイレ、洗面、浴室が並ぶ。通路の先にはドアがあり、その先には26.4帖のLDKが広がる。LDKは将来的に個室をつくれるように考慮され、あらかじめ下地、照明、スイッチ、エアコンの配線などが施工されている。
都心の賃貸で長く暮らしていた40代のOさん夫妻。長男の出産をきっかけに広めの住まいを求めて、目黒駅近くにあるリノベーション済みマンションと巡り合いました。妻はアートギャラリーの運営とともに、年1回熱海で開催される「ATAMI ART GRANT」というイベントを主催するPROJECT ATAMIの総合ディレクターも務めており、シンプルな壁にはたくさんのアートが飾られています。Oさん夫妻に、住まい選びのことや暮らしへのアートの取り入れ方などについてお話を聞きました。
白い壁、オークの床、広いLDKと
個室が1つのシンプルな間取りが魅力
――新居として購入されたリビタのリノベーション済みマンション。気に入ったところを教えてください。
夫 築55年と築年数が経っている建物なのですが、もともとヴィンテージマンションが好きで、時代を感じる外観や共用部の雰囲気がとても気に入りました。室内は広いLDKと寝室として使える個室が1つというシンプルな間取り、白い壁とオークの床で構成された素地のままの空間も、アートを飾って楽しみたい私たちには合っていると感じましたね。
妻 私が出産を控えたタイミングでの住まい探しで、時間もリソースも制限のあるなか、エリアは都心から離れたくない、駐車場は2台分欲しいという必須の条件があり、それを叶えてくれる物件は多くはなかったです。そのなかで条件を満たすこの物件と出会えたことはラッキーだったと思います。前は原宿の賃貸に住んでいたので、物件探しをしていた当初は渋谷区を希望していたのですが、少しエリアを広げてみたことで、この物件と出会えました。仕事で週に1回は熱海に通っているので、新幹線へのアクセスがいい目黒に住めて結果的によかったです。暮らしやすく子育ての環境としてもいいと感じています。
――熱海にもオフィスなどの拠点があるのですか?
妻 熱海にはビューイングルーム兼セカンドハウスとしてリノベーションした住まいがあります。東京の住まいは賃貸だったのですが、セカンドハウスのほうを先に購入してフルリノベーションしました。熱海の街を舞台としたアートイベント「ATAMI ART GRANT」を企画するにあたり、住んでみないとわからないこともたくさんあるので、拠点をもつ方がいいなと思いました。ギャラリーのようなビューイングルームとして使えるよう、間仕切りのないワンルームですが、ベッドスペースや浴室もあり、寝泊まりできるようになっています。仕事で使うことが多いですが、リフレッシュのために週末に家族で出かけて過ごすこともあります。熱海でのリノベーションの経験から、私たちは間仕切りのない空間が好きで居心地もいいと感じていました。だから、LDKが広く個室が1つというこの住まいの間取りにも魅力を感じたのかもしれません。
夫 LDKが26帖以上あり、子どもが歩き出した現状では、とても使いやすく感じています。今後の家族のライフスタイルの変化に合わせて、間仕切りや壁をつくって個室を増やしたりできるように、下地補強やコンセント、スイッチ、エアコンの配管などがあらかじめ施工されているので、将来的に暮らし方に合わせて手を加えられることもいいなと感じました。
暮らし方に合わせてオープンな棚を造作。
後から変更できることは臨機応変に
――入居前に手を加えたところ、部分的にリノベーションしたところを教えてください。
妻 この住まいは、収納を自分たちの使い方やものの量に合わせて、自由につくれることもコンセプトの一つで、収納は自分たちでつくる必要がありました。既製品の家具を配置することも検討しましたが、熱海でのリノベーションの設計を依頼したSALTの尾形良樹さんに相談して、寝室のオープンなクローゼット、キッチンの背面の棚、LDKのデッドスペースの棚を造作することにしました。家事や子育てのしやすさも考慮したアイデアを提案してもらい、置きたい家電に合わせてコンセントの配置なども設計してくれたので、使い勝手がとてもよくて、造作にしてよかったと感じています。LDKにつくった棚は、アイロンをかけるなど、家事ができる天板としても使えるようにつくってもらったのですが、今はお酒のボトルを置く場所になっています(笑)。
――造作した収納は扉をつけずにオープンな棚となっていますね。
夫 扉は後からでもつけられるから、とりあえずオープンにしておこうということになりました。実際に使ってみると、ものが常に目に入って、どこに何がしまわれているか一目でわかる今の状態はとても使いやすいと感じています。
妻 限られたスペースでもあるので、後から変更できることはその都度考えながら臨機応変にやっていこうというのがテーマの一つといえるかも。今は子どもが自由に歩きまわれるように、なるべく床の面積を残しておきたくて、家具も必要最小限のもので暮らしています。
――バルコニー側の腰窓があるスペースは、サンルームのような雰囲気の場所ですね。窓枠に植物や器などが飾られていますが、このスペースはどのように使っていますか?
妻 日当たりがいいので洗濯物を室内干ししたり、子どものものを置いたりするのに使っています。ここにデスクをつくってワークスペースにするという案もあったのですが、今は子どものものが多いので、とりあえずスペースを空けたままにしています。将来、ここが子ども部屋のような空間になる可能性はあるかもしれません。
日々新しい発見をもたらしてくれる、
好きなアートに囲まれた暮らし
――壁や梁のスペースも利用して、たくさんのアートが飾られていますが、飾り方のポイントなどはありますか?
妻 ギャラリーに飾るときは、作品の見せ方などを考慮して飾り方を考えますが、ここは自分の住まいなので、とにかく好きな作品をできるだけたくさん飾るという方針で思いのままに飾っています。好きな作品は数えきれないほどあるので、隙間があれば飾るという感じです。飾りすぎだとは思っているのですが、作品を観ながら暮らしていると、日々作家の存在を感じることができて、作家と一緒に暮らしているような感覚になり、アートが好きな私たちにはとても心地よい空間となっています。
夫 毎日作品を観ながら暮らしていると、日によって見え方が違ったり、印象が変わったりするという気づきもありました。私は友人でもあるHIRO TANAKAという写真家の作品がお気に入りで、2面の長手の壁の真ん中に飾っています。子どもも好きな作品があるようで、作品の前で絵を見つめながら笑っているときがあります。いろいろな発見があり、アートに囲まれて暮らす楽しさを実感する日々です。
――暮らしにアートを取り入れるコツなどがあったら教えてください。
妻 自分の感覚で気に入ったものを買うことが一番大切だと思います。日本ではアートを購入することはまだまだ一般的とはいえず、敷居が高いイメージがあるかもしれません。でも、ギャラリーに足を運び、作家やオーナーに声をかけて会話をしてみると、作品に親近感が湧いたりして、見方が変わることもあります。また、実際に購入してみないとわからないことも多いので、小さな作品でも一つ購入してみると、そこから選び方や取り入れ方が見えてくることも。若い世代は自分がいいと思ったものにお金を出す人が多く、アートを購入する人も増えているように感じています。服を買うように気軽にアートが買えるようなカルチャーになって
――今後、この住まいでやってみたいことや手を加えていきたい場所はありますか?
夫 臨機応変がテーマという話も先に出ていましたが、あまり先のことは考えていません。この住まいであれば、個室をつくったり造作で棚をつくったりといくらでも手を加えられるので、必要になったらやるかもしれませんが、とりあえず今はこの空間を楽しみたいと思っています。
妻 熱海の住まいを自分たちでリノベーションしたからわかるのですが、この住まいはあらゆるところが暮らしやすいように配慮されているのを日々感じています。それはスイッチやコンセントの高さや位置など、とても細かいところなのですが、やはりプロがつくった住まいは快適ですね。私たち家族の現在のフェーズ、立地、予算を考えると、とても満足できる住まいに出会えたと感じています。ベビーサークルがLDKの中心になっている現状のように、数年間は子ども中心の生活になるので、子どもの成長に合わせて置くものを入れ替えたりしながら、しばらくはこのまま暮らしていければと考えています。