内沼 晋太郎さんインタビュー
“場”がつなぐ、本・コト・ヒトとの出会い。
『numabooks』代表。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。一橋大学商学部商学科卒(ブランド論)。 2003年、本と人との出会いを提供するブックユニット『book pick orchestra』を設立。2006年末まで代表を務め、のちに自身のレーベルとして『numabooks』を設立。本にまつわることを中心に、あらゆるプロジェクトの企画やディレクションを行う。2012年、東京・下北沢にビールが飲めて毎日イベントを開催する本屋『B&B』を博報堂ケトルと協業で開業。ほか、読書用品ブランド『BIBLIOPHILIC』プロデューサー、これからの執筆・編集・出版に携わる人のサイト『DOTPLACE』編集長などを務める。著書に『本の逆襲』(朝日出版社/2013)、『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版/2009)。
「本」にまつわることを中心に、多岐に渡るプロジェクトの企画・ディレクションを手掛ける内沼晋太郎さん。リビタが企画・プロデュース・運営するシェアスペース『BUKATSUDO』では、クリエイティブ・ディレクターとして参画。「本と人との出会いを作る」というコンセプトをベースに活動のフィールドを広げる内沼さんに、お仕事のこと、住まいのこと、そして“場づくり”について伺いました。
「本と人との出会いを作る」を仕事にする
―内沼さんのお仕事、「ブック・コーディネイター」とは、どのようなお仕事なのでしょうか?
内沼さん 自分で勝手につけた肩書なので、範囲を決めているわけではないのですが、最初は書店以外の業種、たとえばアパレルショップやカフェなどに本の売場をつくったり、オフィス、集合住宅の共有スペースなどに本の閲覧スペースをつくったりする仕事からはじまりました。
ただ「本を置く」と言っても、そこがどういった目的を持つ場なのかによって、本の役割は変わってきます。たとえば、オフィスの受付に置く本なら、その企業がどういった企業なのかを伝えるようなセレクトが望ましい。オフィス内にある社員用スペースに置く本なら、資料目的なのか、社員のリラクゼーションを目的にするのかによっても、セレクトは変わります。アパレルショップの場合は、本も商品のひとつであるのはもちろんですが、それを通じてお店のコンセプトを伝え、服をはじめとするメインの商材を売りたいという気持ちが「本を置く」行為の背景にあります。そうしたクライアントのニーズを汲み取って、そこにあるべき本を選び、どう並べ、どう見せるかを提案する仕事です。
そこから派生して、書店や図書館などのコンサルティング、本棚や本を並べる空間のデザイン・ディレクションやイベントのプロデュースといった、場づくりに関わる仕事のご依頼を頂くこともあります。
―「ブック・コーディネイター」のお仕事を始められたきっかけは?
内沼さん 学生の頃、僕はミュージシャンになりたかったんです。でも、ある日、自分が作った音楽と自分が好きなミュージシャンの曲とを聞き比べて、「どっちを買いたいか」を考えた時、明らかに後者だった。自分自身も納得しないような音楽を作っていて、ミュージシャンになれるのだろうか。本当のミュージシャンはそうした葛藤を何度も乗り越えていくのでしょうが、その時僕は自分には無理だとあっさり諦めてしまったんです。なら、自分が好きな表現者を紹介する側になろうと思い、仲間たちと一緒に雑誌を作り始めました。
雑誌を作っている時、書店に話を聞きに行ったりしていたのですが、ちょうど佐野眞一さんの著書『だれが「本」を殺すのか』(プレジデント社/2001年)がベストセラーになった頃でもあって、「本が売れない」という出版業界の実情を知りました。それまでは、僕らの世代を指して「若者の活字離れ」と言われていることが、僕は不思議だと思っていました。僕は本が好きだし、周囲の友人には読まない人もいるけれど、読む人もいる。書店に行けばお客さんはたくさんいる。けれど少しずつ内側のことを知るようになると、出版社は本を作ることで精一杯、取次(本の卸売業者)は書店に流通させるので精一杯、書店は売ることに精一杯。書店に来る人が減っているのなら、自分たちが作ったり売ったりしている「その本」の面白さを伝えること以前に、「本というもの自体」の面白さを伝える必要があるんじゃないだろうか。そういうことについて考えるようになったのが、大学3年の時でした。
それで大学を卒業して入社したのが、出版業界で一番大きい見本市を開催している会社でした。「面白い本を作る」のではなく、「本の面白さを伝える」仕事に携わりたいと思っていた僕にとって、出版業界全体を外側から見渡すことができるその会社はぴったりだったように思えたんです。
ですが、僕はその会社を2ヶ月で辞めてしまいました。事情はいろいろあったのですが、ともかく「2年間、一人で食べていけないか、試してみる。駄目ならもう一度就職活動する」ことにしたんです。そして大学時代からの仲間に声をかけ、2003年に『book pick orchestra』をはじめました。
―『book pick orchestra』は、どのような活動を行っていたのですか?
内沼さん 1冊の古本を紹介するためにコラムを書いたり、対談記事を制作して載せたりしながら、ウェブサイトで古本を売りながら、リアルでも新しい売り方の実験をしていました。古本の文庫本を中身が見えない状態にクラフト紙で包み、裏面に本の内容から引用した一節を添えた『文庫本葉書』や、本との出会いを楽しむ会員制・予約制・入場料制のブックルーム『encounter.』などがメディアに取り上げられるようになると、段々と活動が広がっていきました。その後2006年の年末に『book pick orchestra』の代表を離れ、僕自身のレーベルとして『numabooks』を立ち上げて以降も、変わらず「本と人との偶然の出会いを作る」というコンセプトのもと、そうした実験的な活動も続けています。
『book pick orchestra』をはじめたころから『numabooks』以降もしばらくずっと、僕は千駄木にある『往来堂書店』でアルバイトをしていました。ここでは新刊書店の基本的な仕事と出版流通のこと、愛される街の書店の在り方などを学ばせてもらいました。新刊の情報も入ってくるので、少しずつフリーランスとしての仕事が増えそれで暮らしていけるようになるギリギリまで、アルバイトは並行して続けさせてもらっていました。
出会いを提供する“場づくり”への試み
― 2012年には、博報堂ケトルとの協業で、『B&B』を下北沢に開業なされました。生ビールを飲みながら本を選ぶことができる本屋で、毎晩イベントを催されています。『B&B』を開業するに至った経緯を教えてください。
内沼さん 『B&B』の開業は、博報堂ケトルの嶋浩一郎さんに誘われたのがきっかけでした。雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス)の「本屋好き」特集(2001年6/1号)の編集のお仕事を、嶋さんと一緒にお手伝いしている時、たくさんの本屋を見て回る中で、改めて本屋の面白さと難しさを感じました。嶋さんも同じような想いを抱かれていて、「これからの街の本屋」を一緒につくろう、という話になったんです。
生ビールを始めとするドリンクの提供のほか、本以外の雑貨や食品も扱うし、什器である家具もすべて売り物として扱っています。
本や雑誌に関するトークイベントを毎晩行うことは、当初から決めていました。イベントもその時、その場所でしか体験できないコンテンツ。イベントを来店のきっかけにしてもらいたいという想いからです。「毎晩」という点も重要でした。毎晩やっているのが当たり前になると、お客様から「今夜のB&Bでは、何をやっているのかな?」と思ってもらえるようになりますよね。
本に限らず、インターネットで何でも買える時代です。この時代にリアルなショップをやるからには、人がわざわざそこに足を運ぶ意味がある場にしなければいけない。「行ってみたい」と思わせるような期待感や、「また行きたい」と思わせるような品揃えや空間をどうやってつくるか。下北沢という街の知的好奇心の渦となるような場を目指して、日々少しずつ試行錯誤しています。
―横浜ランドマークタワー ドックヤードガーデン地下1階に誕生した『BUKATSUDO』では、クリエイティブ・ディレクターとして、リビタとともにシェアスペースという“場づくり”に取り組まれました。
内沼さん 元商船用の石造りドック跡地で、地下で窓からの光も入らない物件を、「大人のシェアスペース」に再生するプロジェクトでした。リビタからご相談を頂いた時点で、「秘密基地」や「隠れ家」、「部活動」といったキーワードが挙っていました。
最初は「なぜ僕にお話がきたのだろう」と不思議に思いましたが、『B&B』の活動を見てくださったのだと思います。『B&B』で行っている“場づくり”に、リビタが考える“場づくり”と共通するものを感じて頂いたのではないでしょうか。僕は、リビタの企画コンセプトを元に、施設の『BUKATSUDO』というネーミングや、クリエイティブチームの人選とディレクション、そして講座やワークショップといったコンテンツや「部活」を生み出す仕組みのディレクションを手掛けさせて頂きました。
―『BUKATSUDO』はどんな場所なのですか?
内沼さん 「大人の部活が生まれる、街のシェアスペース」です。学生の頃、放課後に部室に寄って、仲間たちと楽しい時間を過ごした思い出を持っている人は多いと思います。『BUKATSUDO』は、働く人たちに豊かな放課後を提供する場所。仲間との出会いや、趣味の集いを通じて、みんなが新たな活動をしたくなるような、そんなシェアスペースになればと思っています。
コーヒースタンドや会員制ワークラウンジ、ホール、キッチン、スタジオ、アトリエといったレンタルスペースのほか、個人やメンバーで利用できる“BUSHITSU”(※2014年10月から貸し出し開始)もあり、使う人次第でさまざまな使い方ができるポテンシャルのある場所です。今後しばらくは、『BUKATSUDO』がどんな場所なのか、どんな風に使うことができる場なのかを知るきっかけにしてもらうべく、さまざまなトークショーや講座、ワークショップを展開していきます。
コンテンツがあって、読む人がいて、みんなで感想を言い合って共有する。そんな風に、『BUKATSUDO』で営まれる活動も、みんなでつくる一冊の本のようなものだと考えています。
―内沼さんが『BUKATSUDO』で“部活”をするとしたら、どんな活動をしますか?
内沼さん 実際に企画しているのですが、「本屋部」をやる予定です。「これからの本屋講座」という、広い意味での「本屋」をやってみたいと考えている人向けの講座をやるので、その卒業生向け。一緒に本屋を見に行ったり、アイデアを出し合ったり、お互いの進捗を確認し合ったりなど、卒業後も仲間として活動を続けて行くための部活です。この講座と部活を通じて、世の中に面白い本屋が増えていけばいいなと考えています。
友人がリノベーションしたアパートに住み、部屋の一部をシェアスペースに
―話ががらりと変わってしまうのですが、内沼さんのこれまでのお住まい遍歴を教えてください。
内沼さん 大学時代から新卒で入社した会社に勤めている間は、埼玉県内の実家に住んでいました。会社を辞めて仲間と『book pick orchestra』を立ち上げた頃、友人がニューヨークに留学することになり、彼が住んでいた荒川区西尾久にあるアパートに住み始めました。
そこは2階建ての古いアパートだったんですが、増築やリノベーションが繰り返されたあきらかに変な物件でした。50平米くらいあったので、僕はそのうちの1部屋に住み、ほかのスペースで古本の在庫を並べて、友人を泊めたり、打合せスペースとして貸し出したり、会費制のホームパーティーを行ったりしていました。パーティー時の残った食料を日々の糧に、貸出料やパーティーの会費を家賃の足しにしながら生活していました。
―アパートの広さや場の面白さを利用して、コンテンツを企画なされていたんですね。
内沼さん 「アパートを編集するモデル」というコンセプトで、その場に「modelroom」と名付けて、さまざまなイベントを企画して運用していました。そこに3年ほど暮らした後、恵比寿に引っ越しました。古いマンションの分譲賃貸で、オーナーがリノベーションをしていて、そこも面白い部屋でした。その後に住んだ中目黒の家は普通の1DKでしたが、部屋に人を集める癖がついていたので、その狭い部屋でもよく映画鑑賞会をしたり、誰かのお祝いをしたりしながら暮らしていました。その家はとても気に入っていて、4年ほど住んでいたのですが、2011年に西麻布に引っ越しました。
「東京」のど真ん中に住んでみる
―どのような心境の変化があったのですか?
内沼さん 当時、千葉県の松戸駅周辺にクリエイターやアーティストを集め、共にまちづくりしていこうという『MAD Cityプロジェクト』が行っていた「脱東京ゼミ」のモデレーターを務めていたんです。地方に拠点を見出すクリエイターが増え始めていた頃でした。その後、あの震災が起こって、それまではごく一部の人の関心だった「脱東京」が、選択肢として、一気に広がりました。僕自身も「脱東京」に興味を持ち始めていましたが、実際に身の回りにも東京を離れる人が少しずつ増えてきたときに、ぼくはまだ今のところ東京にいられるし、いたいと思った。東京以外の場所に暮らすタイミングはいずれ来るかもしれない、だったら今は改めて「東京とは何か」を考えたいと思い、あえて東京のど真ん中っぽいところに住もうと思ったんです。
銀座や六本木などのエリアでも探しましたが、さすがに予算に見合う部屋はなかなかなくて、見つけたのは表参道と六本木の中間にある西麻布の部屋。未だバブルの匂いが残る街でした。
―内沼さんがプロデュースする『BIBLIOPHILIC』で販売中のオーダーラックは、この西麻布の部屋に住む際に作られたものだそうですね。
内沼さん 『BIBLIOPHILIC』は「本のある生活」を楽しむためのブランド。そんなブランドをプロデュースするのに、当時の中目黒の僕の家はIKEAの本棚に何段にも本を詰め込んでいつも溢れているような状態で、本の整理がまったくできておらず、すでに持っている本をまた買ってしまうような始末でした。まずは自分自身が「本がある素敵な生活」を体現しなければと思って、友人でその映画鑑賞会の常連でもあった田中裕之さん(hiroyuki tanaka architects)に依頼してデザインしてもらいました。
一番重視したのは、それぞれの棚のサイズ感です。本はサイズがバラバラですが、なるべくサイズ別ではなくテーマ別に並べて整理しやすく、かつ本を二段重ねにしてしまわないよう、余分な高さや奥行きをつくらないようにするために、ジャストなサイズ感を追及して作りました。棚板を支える縦の板が薄く本をずらりと並べることができたり、棚板の手前側に余裕を持たせて読みたい本をピックアップして立てかけて置けるようにしたり、奥行きの差となった部分をコーヒーやお酒を飲みながら本が読めるようにカウンターにするなど、本がある日常を楽しめるような本棚に仕上げました。
―現在はどのような家にお住まいなのですか?
内沼さん 西麻布の部屋も気に入っていたのですが、その後『B&B』を始めて、店にこまめに顔を出せるようにしたいと考え、近くに部屋を借りて引っ越しました。西麻布の部屋で使っていた本棚が置ける長い壁面があることが条件だったので、希望エリアに当てはめると、条件に合う物件は2件しかありませんでした(笑)。最近は『B&B』や『BUKATSUDO』をはじめ、仕事で人の集まる場所を家の外につくることが多くなったので、ホームパーティ的なことには自然と手が回らなくなっていましたが、また久々にはじめたいですね。
そこに集い、行き交う人から刺激を受ける「シェア」の魅力
―以前のお住まいはシェアスペースとして活用なされるなど、パブリックな使い方をなされていましたが、現在のお住まいもそのような使い方をなされているのですか?
内沼さん 西尾久のアパートは完全に開かれていてほとんどプライバシーがない状態でしたが、それ以降はあくまでプライベートな家であって、時々友達を集めているくらいです。逆に働く場所はずっとシェア的なスペースでした。最初は『book pick orchestra』の在庫があった、先にお話しした西尾久のアパートですね。その後は『encounter.』をオープンしたので、横浜のみなとみらいにあった『北仲BRICK』が主な仕事場でした。大正時代に建築された古いビルで、建築家やアーティストなどが入居していました。ここは共用スペースのような場所はなかったのですが、入居者がクリエイターばかりという点で刺激を受けました。
その後に入居したのが、『co-lab三番町』(※現在はCLOSE)。さまざまな業種のクリエイターが入居するシェアスペースで、僕は現「greenz.jp」編集長の兼松佳宏くんと二人で、ブースをシェアして使っていました。当時ウェブデザイナーだった兼松くんが僕の隣で作っていたのが、最初の「greenz.jp」です。前述の本棚や『B&B』、『BUKATSUDO』のインテリアデザインを手掛けて頂いた「hiroyuki tanaka architects」も、当時『co-lab三番町』にオフィスを構えていた一組です。
『co-lab三番町』を出た後は、しばらく事務所を持たず、『六本木アカデミーヒルズ』の会員制ライブラリーを利用して仕事をしていました。無線LANや電源、コピー機などの利用が可能で、ライブラリーもある、コワーキングスペースですね。その後は『IID世田谷ものづくり学校』(以下、IID)の1室を借り、何社か入れ替わりで友人の事務所とシェアしながらオフィスとして使っていました。
―働く場所に「シェア」を選ばれてきた理由はなんですか?
内沼さん いろいろありますが、一番はそこに集まるいろんな人から刺激を得られることですね。『IID』には6年ほどオフィスを借りていたんですが、『IID』のオフィスは基本的に個室で、他の入居者と交流するのは、施設内にあるカフェやイベント開催時など。集中したい時は籠もることができ、周囲の入居者とほどよくコミュニケートできる距離感が気に入っていました。
リビタが展開する『シェアプレイス』もそうした考え方でつくられていますよね。そして、そんな場を「街」に持ってきたのが『BUKATSUDO』。僕のこれまでの住まい方や働き方、『B&B』でのイベント展開といった経験で得たものが、今回のディレクションに反映されていると思います。
本と人との出会いの場のように、住む場所も働く場所ももっと自由になっていく
―最近、オフィスをお引っ越しなされたそうですが、新しいオフィスはどのような空間なのですか?
内沼さん 今回は普通のオフィスビルの1室を借りて、建築設計事務所「hiroyuki tanaka architects」と、グラフィックデザイン事務所「COMPOUND」、そして編集者の小林英治さんと、僕の『numabooks』とでシェアして使っています。今、オフィスにバーカウンターを作っています。
―バーカウンター!オフィスらしからぬ要素ですが、場の可能性が広がりそうですね。
内沼さん 取引先の方と打合せをする場として、お迎えしてもてなす要素があったらどうだろうと考えたんです。僕らがホストで、打合せに訪れる取引先の方々はゲスト。普通の打合せスペースで話し合うのとは違うものが生まれるんじゃないか、という期待をしています。
―内沼さんご自身の今後の暮らし方の可能性についてはどうですか?
内沼さん 地方に住むことを考えた時期もありましたが、今は現在の暮らし方に満足しています。でも、どう変化するかはわかりません。少し前までは、住まいは家族と一緒か一人暮らしかのどちらかで、仕事はフルタイムの会社勤めで、というのが世の中のスタンダードでしたが、今は少しずつ、住まい方も働き方も、多様なことが許容される時代になってきています。オンもオフもフルオープンにしてシェアしたい人、部分的にクローズドにしたい人、完全にプライベートにしたい人。地方に住む人、都会に住む人。その時その時の自分の働き方や住まい方に合わせて、場所やスタイルを編集できるような生き方が、当たり前になりそうですよね。
内沼 晋太郎さんのお気に入り
下北沢の賑わいの中に潜む「花泥棒」という名の珈琲屋
内沼さんが運営する『B&B』から徒歩30秒ほどの場所にある、1979年創業の『ヴォルール・ドゥ・フルール下北沢南店』。下北沢駅南口からほど近い賑やかなロケーションにありながら、ひっそりとした穏やかな時間を珈琲とともに味わうことができるお店。街の喧噪からしばし逃れて、本の世界に没頭する。そんな時間が内沼さんのお気に入り。個人的な定番メニューは、3種の豆をブレンドした個性的な苦みを持つ「ヴォルール・ブレンド」(700円・900円)だそう。
Voleur de Fleur 下北沢南店
営業時間/12:00〜23:00
東京都世田谷区北沢2-12-15 水内ビル 2F
初心に帰る場所でもある読書タイムのお供
内沼さんがご自宅での読書タイムに愛用していると話す『Professor Chair』は、オールハンドメイドでアンティークの持つユーズド感を追求するイギリスのブランド「Timothy Oulton by HALO」のアイテム。内沼さん初の選書の仕事となった原宿のセレクトショップ「TOKYO HIPSTERS CLUB」(2010年閉店)の展示品だったものを閉店時に購入したという一脚は、「初心に帰ることを忘れずにいたい」という想いを込めて使い続けているそう。
Timothy Oulton by HALO『Professor Chair』color:BIKER TAN
幅680mm、奥行き710mm、高さ730mm、座面高さ480mm、アーム高さ610mm
素材:レザー、キリム、アッシュ ※リバーシブルクッション
140,400円
取り扱い:ASPLUND
心地よいBGMの中で、読書に耽りたい
内沼さんがプロデュースを手掛ける、本のある生活のための道具のブランド『BIBLIOPHILIC』からリリースしている、読書の時に聴く音楽を集めた「Music for Reading」シリーズの一枚。ドイツのエレクトロニカレーベル「Karaoke Kalk」から内沼さんが厳選した14曲には、ダコタ・スイートやトウヤマタケオなどのメロディアスな作品がずらり。音楽CD始め、内沼さん自身が吟味し、使用して開発したという『BIBLIOPHILIC』のアイテムは、どれもこだわりと実用性に満ちていておすすめ。
Music for Reading from Karaoke Kalk By Shintaro Uchinuma
2,592円
レーベル:BIBLIOPHILIC