#5 引き算の美学でベースをシンプルに。家具と小物で彩る、自由に育てる住まい|住まいのヒント

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#5 引き算の美学でベースをシンプルに。
家具と小物で彩る、自由に育てる住まい

目 次
  1. 1物件探しは能動的な情報収集に尽きる。 購入の決断には割り切る感覚も必要
  2. 2カーペットの色からベースをワントーンに。素材やグリーンを取り入れて洗練されたアクセントに
  3. 3DIYで棚をつくり、植物やアートを飾る。暮らしながら楽しみが続く住まいづくり

物件探しは能動的な情報収集に尽きる。
購入の決断には割り切る感覚も必要

飯田 世田谷線沿線の賃貸マンションに以前もお住まいだったとのことですが、このエリアを気に入っていらっしゃったということでしょうか?

齋藤 一人暮らしのときは代々木に住んでいて、結婚して初めて住んだ家が世田谷線沿線でした。住み始める前までは支線であるということから利便性などの点で不安があったのですが、住んでみると松陰神社や上町に素敵な店がたくさんあって、住み心地がすごくよかったです。子どもが生まれてからは、夫の実家に頼れることもありがたくて、できれば世田谷線沿いで住まいを購入したかったのですが、マンションが少ないエリアでもあり、なかなかいい物件に出会えずにいました。子どもが保育園に入るまでには決めたくて、少しエリアを広げて探したら、この物件が見つかって、すぐに購入を決めました。

飯田 この物件はどのように探したのですか?

齋藤 1年半くらいかけて、検索サイトや散歩の途中などで常に探しながら、とてもたくさんの物件を見ました。エリアが一番大事だったので、土地を購入して新築を建てることや、戸建てリノベーションなど、あらゆる選択肢を検討して、たまたまこの物件が見つかって、第一希望のマンションリノベーションが叶いました。ちょうど不動産の価格が上昇している時期と重なって、その経緯を見てきているだけに、プロ目線で見ると高いと感じてしまうことが多かったですね。決断するときは、割り切る感覚も必要だと感じました。

飯田 プロだから情報が早く入ってくるとか、物件が見つけやすいのではないかと思われがちですが、この業界にいても一般の方と同じように、検索サイトで見つけている人がほとんどですよね。

齋藤 購入の決断までに早く動けるというのはあるかもしれませんが、物件探しに関しては、アドバンテージはありません。物件探しはいかに自分から能動的に情報収集するかに尽きるなと感じました。

飯田 この物件を購入した決め手はどんなところでしたか?

齋藤 夫の実家からの距離が自転車で10分以内のエリアであることがマストの条件で、それが叶っていたこと、南向きで日当たりがいいこと、あとは周辺環境や管理体制がよくてマンションの資産価値が下がりにくそうなこともポイントとして高かったです。ずっと住むつもりですが、将来的な相続のことなども考えて、資産価値は重要視したところでした。

飯田 面積が約95㎡と広めの物件ですが、広さも決め手だったのでしょうか?

齋藤 3LDKが確保できればいいと考えていて、80㎡くらいあればいいと思って探していました。だから、ちょっと予算オーバーだったんです。でも、広さがあったことで、動線や収納のつくり方に自由度が生まれて、結果的にはよかったと感じています。

カーペットの色からベースをワントーンに。
素材やグリーンを取り入れて洗練されたアクセントに

飯田 リノベーションについては、どのように設計や施工を進めていったのですか?

齋藤 この物件は過去にリビタで何度かリノベーションを手掛けたことがあり、ある程度できることできないことがわかっていて、効率のよいプランが練られていたので、それをベースにしてアレンジを加えていきました。こだわったところとしては、収納を大きめにしたかったので、寝室側にウォークインクローゼットをせり出すようにつくりました。家事効率を考えて、キッチンから洗面室へ抜けられるようにして、LDKと寝室をつなぐ通路をクローゼットと兼用にして回遊動線にしています。

飯田 予算調整も必要だったと思いますが、ここだけは譲れないというところはありましたか?

齋藤 オープンキッチンにすることはマストでした。そのうえでコンロ前は油跳ねが気になるので壁を作りたかったのと、リビング側にせり出すキッチンの奥行寸法も、部屋の間口に制限があったため既製品にはないサイズ感にしたかったです。そうなると既製品では難しいので造作することにしました。空間に調和するようにつくりたかったので、キッチンは予算をかけてもいいから、こだわってつくりたいと思ったところですね。

飯田 仕上げの材料などは、どのようにセレクトしましたか?

齋藤 この物件は、床がカーペット限定という規約があり、カーペットが一番のポイントです。カーペットの色から全体のカラースキームを考えて、仕上げの素材を選んでいきました。建築はシンプルにつくって、家具で空間の調和をとるのが基本的な方向性。R100 tokyoのコンセプトであり、ブランドディレクターだった建築家の芦沢啓治さんの教えなのですが、空間を上質なものにする心得として、表面にみえる素材には疑似的なものを使わない、例えば木目でいえば突板か無垢材を選定する、など本物を使うことを意識しました。

飯田 床や壁は白とグレーのグラデーションで構成されており、大きな面積を占める部分の仕上げはとてもシンプルですよね。ベースがプレーンだから木が印象的に見えるし、家具も映える。コントラストが効いているなと思いました。

齋藤 木の分量と種類の選び方は難しく、同じもので揃えるとのっぺりとした印象になり、ミックスすると存在感が出すぎてしまう。木の使い方にはとても高度な技術が必要なことを知りました。

飯田 黒っぽいものやスチールなどの硬い印象の素材が少ないから、とても柔らかくて優しい印象の空間に仕上がっていますね。床がカーペットだからこそこの空間が成り立っていると思います。もしフローリングがOKだったとしても、カーペットを選んでいましたか?

齋藤 フローリングを選んでいたかもしれません。カーペットのよさは知っていて、興味もありましたが、子どもがいるので、メンテナンスなどの不安はありました。でも、経験してみた今、フローリングがNGという理由で購入を諦めるのは、もったいないと言えます。今はその快適さにとても満足していて、自分では選べなかった豊かさに気づかせてもらいました。カーペットは汚れたときのケアに少し手間がかかりますが、コツさえつかめばほとんどの汚れに対処できます。手間を上回る心地よさや癒やし、音の影響を減らしたり、ホコリを吸着したりする機能的なメリットもあり、迷っている方がいたらぜひカーペットを選んでみて欲しいです。

DIYで棚をつくり、植物やアートを飾る。
暮らしながら楽しみが続く住まいづくり

飯田 リノベーションでは、置き家具や照明ではなく、建築工事で空間をつくろうとすることが多いです。家具などが映える空間をつくるためには、色や面など、ベースを美しく整えることにしっかり予算をかけていくことも大事ですよね。

齋藤 だれでも、フルリノベーションするとなると表現したいことがたくさん出てきてしまって、建築=ハコ側でそれを実現させようと足し算してしまうことはありがちだと思います。もちろんそれが間違っているということではないのですが、逆の発想で引き算するのもありかなと思います。

飯田 ここまでプレーンな内装は、リノベーション済み物件でもあまり見かけません。販売する側としても、どこかにアクセントや特徴をつくって差別化したいという姿勢になりますから。

齋藤 家具や植物などが置かれて完成する空間もあるから、インテリアの重要性はもう少し見直す必要があると日々感じています。リノベーションも成熟してきているから、住まい方の提案として、器としての住まいだけではなく、家具のサイジングや使い方、暮らし方を想起させるようなインテリアの提案などが求められているのかもしれませんね。

飯田 オーダーして造作した家具もあるとのことですが、どんなふうに考えてつくっていったのですか?

齋藤 LDKのサイドボードは、飾り棚として最適、かつ子供の手が届きづらい、高さ90㎝程度のものが欲しかったのですが、既製品だと理想的な高さのものが見つからなかったので、自分でデザイン画を描いてオーダーしてつくってもらいました。ダイニングテーブルとベンチも同様で、スペースに合ったサイズのものが欲しくて、オーダーでつくりました。

飯田 入居後に窓にインナーサッシの追加工事をされていますが、きっかけなどはありましたか?

齋藤 冬を過ごしてみて北側の寝室が寒くて、窓の結露も激しかったので、先進的窓リノベの補助金を活用して、追加工事をすることにしました。やってみて大正解。夏も冬も空調効率がよくなり、前面道路の音も遮断できて、とても快適になりました。

飯田 棚やフックをつたけり、壁に有孔ボードを貼るなど、DIYで手を加えているところもあるのですね。

齋藤 植物やアート、小物などを飾るのが楽しくて、もっと飾る場所が欲しくなって、LDKの壁に棚板をつけました。子どものプレイスペースには子供の作品などを引っ掛けられるように有孔ボードを貼り付けてアレンジ。将来的には北側の個室を子ども部屋にする予定なので、プレイスペースが必要なくなったら、再びアレンジを加えて私の書斎にしようかなと考えています。暮らしながら手を加えることで、住まいづくりをずっと楽しめているような感覚ですね。

飯田 飾るものや家具のレイアウトを変えることで、短いスパンで住まいをアップデートできるのもいいですね。リノベーションはシンプルに、後から変えていける家具や植物、アートなどで空間をつくっていく。ハードとソフトを上手くコントロールされている住まい方が、リノベーションのひとつの形としてとても参考になりました。

カーペット生活やインナーサッシのメリットなど、自身がリノベーションを通して得た経験を周囲にも勧めて、実家でもインナーサッシが採用されたと話す齋藤さん。必要なところにしっかりと予算をかけて、デザイン性も快適性も妥協のない豊かな住まいをつくり上げているからこその説得力がありました。次回も、どんな社員のどんな住まいが登場するか、お楽しみに!

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