省エネ住宅を目指すには?断熱と消費エネルギーの基準と正しい設備の選び方|住まいのヒント

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住まいのヒント

省エネ住宅を目指すには?
断熱と消費エネルギーの基準と正しい設備の選び方

目 次
  1. 1「断熱」と「エネルギー消費量」は2つでセット
  2. 2エアコンはかなり優秀な省エネ家電
  3. 3暖気と冷気を逃さない、熱交換型換気扇
  4. 4まとめ

さまざまな専門家にお話を聞いて、「リノベーション」や「住まい選びのコツ」をわかりやすく身につけていくための「学ぶシリーズ」第2回。前回に続いて、建築・省エネコンサルタントの黒田大志さんにお話を聞きしました。「断熱性能」と同じくらい大切な「消費エネルギー」のこと、今の時代に合ったエアコンや換気扇の選び方など。今回は、暮らしにより身近な視点から、省エネ対策についてわかりやすく解説いただきました。

「断熱」と「エネルギー消費量」は2つでセット

前回「断熱はエネルギー消費量に直結します」とお伝えしましたが、今回は「この2つは分けて考えましょう」という話をしたいと思います。なぜ分けて考える必要があるかというと、国が「断熱」と「エネルギー消費量」それぞれに基準を定めて、「一定の断熱性を確保しないと、省エネ住宅として評価しません」と謳っているからです。これは2030年までに温室効果ガスを2013年度よりも46%削減しましょう、という大きな目標に向けた対策の一環です。

断熱等級と一次エネルギー消費量等級の考え方

「断熱」と「エネルギー消費量」それぞれの等級について、詳しく見ていきましょう。「断熱等級」には1~7がありますが、日本の断熱性の最低基準は等級4です。これは「冬の室内温度が8℃を下回らない程度」であり、実感として暖かくて快適とは程遠いのですが、国の基準としては「まず人命維持の最低温度を目指して、窓や屋根といったハード面からの断熱性を高めましょう」という考え方です。

もうひとつのエネルギー消費量、いわゆる「一次エネルギー消費量等級」は、住宅の一年間のエネルギー消費量を数値化した指標です。こちらの等級は、設計時に省エネ手法を採用した場合に予想されるエネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)を、標準的な住宅のエネルギー消費量(基準一次エネルギー消費量)で割って算出したBEI(エネルギー消費量の比率)に基づいています。

引用・参考元:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001390008.pdf

そのBEIと、一次エネルギー消費量等級の関係を表した表が以下になります。
(※東京・神奈川エリアの場合)

引用・参考元:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001424534.pdf

BEIが小さいほどエネルギーを削減できているため、等級は高くなります。たとえばBEIが1.0以下はこれまでと変わらないので等級4、0.9以下なら1割削減できたから等級5、0.8以下だと2割も削減できているから最高位の等級6に。基準値以下になってはじめて「断熱に成功して、省エネになった」と認められるんですね。
※省エネ基準は北海道から沖縄まで、8つの段階に分けられています。

国の基準がBELS・ZEHや補助金の基準に

「断熱」「エネルギー消費量」の基準は、単に住宅性能を表すだけでなく、第三者機関による評価制度や補助金の基準にもなっています。たとえば、省エネレベルをエンドユーザーに星マークなどでシンプルに伝えるBELSやHEAT20などの省エネ認定制度。これらも国が決めた基準に基づいています。

また等級が高いほど補助金が支給されたり、住宅ローン控除枠が大きくなる点も注目ポイントです。フラット35の金利も、等級が高いほど有利。「断熱」と「一次エネルギー消費量」の等級が、あらゆる制度の基準となっています。

エンドユーザーにも広がっていく、星マークの省エネ評価

2024年の4月からは、新築の売買物件に省エネ性能を表示させることが義務付けられました。不動産ポータルサイトにも「エネルギー消費性能」や「断熱性能」が星マークで表示されていますね。

引用・参考元:https://www.mlit.go.jp/shoene-label/

ZEH水準にもチェックが入っていますが、ZEH(Net Zero Energy House)は「ここまで断熱性能が高くて一次エネルギー消費量を抑えられているなら、省エネ住宅として認めますよ」というもの。断熱等級5以上なら、屋根に太陽光パネルを載せるとエネルギーの収支がゼロになるレベル。実際に載せる・載せないは別として、購入する方は太陽光パネルの導入を検討しやすくなりますね。

これからは中古物件も、新築と同じ流れになっていくと思います。実際に「国の基準に合致するように工事したい」という買取再販企業は増えています。中古マンションが、国の基準レベルまで性能を高めるのは比較的簡単です。中住戸などの条件によりますが、基本的には内窓を付けて、LED照明や水栓を交換すれば、ほとんどの住戸は断熱等級4をクリアすると思われます。タワーマンションはもともと断熱性が高いので、性能アップするのはもっと簡単です。前回お話ししたように、これから中古住宅を購入する方は住宅性能も意識して選ぶとよいでしょう。

エアコンはかなり優秀な省エネ家電

省エネの基準の次にお伝えしたいのが、設備についてです。住まいの中で一番エネルギーを消費している設備は空調機(エアコン)です。でもエアコンはかなり高効率な省エネ設備なんです。まずは、エアコンの仕組みについてお話しします。

少ないエネルギーで冷気・暖気をつくるエアコンの仕組み

エアコンの室外機には、空気中の熱を集めて温度をコントロールするヒートポンプ技術が使われています。空気は圧縮すると温度が上がる・膨張させると温度が下がる、という性質を利用しているんですね。1のエネルギーで3~7のエネルギーを生み出せるヒートポンプ技術は、日本が世界トップクラス。エアコンやエコキュート、冷蔵庫など、私たちの身の回りにあるさまざまな家電に使われています。

引用・参考元:http://hayashi-1101.co.jp/asahihands/airconditioner/

そもそもエアコンには冷媒ガスといわれる液体(常温では気体の状態)が入っていて、室内機と室外機を結ぶ冷媒配管を循環しています。
夏は室内の暖かい空気から熱交換した冷媒ガスを室外機へ運び、おもいっきり膨張させて冷やした空気で冷媒ガスを熱交換することで冷やします。その冷えた冷媒ガスを室内機に戻して、室内の空気へと当てることで部屋を冷やしています。暖房はその逆で、室内の空気で冷たくされた冷媒ガスを、ヒートポンプの力で圧縮させた暖かい空気に当てて熱交換することで、暖かい冷媒ガスを部屋に戻しているんです。

冷房中の室外機から熱い空気が出ているのは、室内から奪った空気を外に出しているからです。都心を中心にヒートアイランド現象が起こっているのは、冷暖房を使うビル群が圧倒的に多いことが理由なんですね。

以上のことを踏まえると、夏と冬、どちらの空調における消費エネルギーが多いかわかりますよね。たとえば真夏の外気温が35度で、室内を26度に設定するとしたら、その差は10度。でも真冬は外気温が0度で、室内を18度くらいに設定したらその差は18度。設定温度と外気の温度差が大きいほどヒートポンプの負荷が大きくなるため、冬のほうが電力消費が大きくなります。

エコキュートも同様に、ヒートポンプの仕組みを使っているので、給湯器の中でもかなり省エネな部類に入ります。エコジョーズのガス給湯器やエネファームなどの電気温水器に比べると導入費用は高くなりますが、深夜電力を使ってお湯を沸かせば電気代を安く抑えられます。また高断熱浴槽や節湯水栓の導入も補助金の対象です。省エネ家電の導入は経済効果につながるので、そのあたりも調べておくとよいでしょう。

10畳の部屋なら、6畳用のエアコンで十分

ちなみにエアコンを買う時、みなさんは畳数表示を目安にしていませんか? 実はエアコンの畳数表示は1964年に制定された基準のまま。断熱材がなく隙間だらけの住まいを基準として定められた規格なんです。つまり現代の一般的な住まいに対して、オーバースペックになっているということ。

断熱等級4レベルの住宅であれば、10畳の広さなら6畳用のエアコンでも対応できます。もし等級5.6のZEHマンションなら、10畳用のエアコン一台で十分。もちろん部屋の間取りや空気の流れによりますが、それくらい今の住まいとギャップがある規格なんです。

引用・参考元:https://kadenfan.hitachi.co.jp/raj/lineup/xjseries_n/

カタログに掲載されている表示も、1964年の低断熱の住まいを基準にしています。6畳用のエアコンなら暖房時、2.5kwの「能力」に対して、430wの「消費電力」。これは2.5kwのエネルギーが必要な広さの空間を、約1/4エネルギーの430wで暖められますよ、という意味です。
「通年エネルギー消費効率(APF)」が7.4と書いてありますが、ここは5を超えてたらかなり消費効率が高い。最近は7を超える製品もあるほどで、エアコンはものすごくエネルギー効率が高い機器なんです。だから感覚的には、等級4レベルの断熱性がある住宅なら、それぞれのエアコンが1.3~1.4倍の効果を発揮すると考えても問題ありません。

エアコン選びは、みなさんがすぐに取り掛かることができる省エネ対策の一つです。

暖気と冷気を逃さない、熱交換型換気扇

それから人が吐き出す息や調理時の二酸化炭素、観葉植物の水蒸気で、室内の空気は必ず汚れます。だから必ず換気は必要なんです。住宅であれば「室内の空気を1時間ごと0.5回以上入れ替えなければいけない」と建築基準法で定められているほど。その基準をクリアするには24時間換気や換気経路の確保など、計画的な換気が必要です。

でも換気をして、せっかく暖かくなった室内がまた寒くなってしまった経験はありませんか? 吸気口から冷たい空気が入ってきたり、暖気が外に逃げたりといった非効率を防ぐには、熱交換型換気扇がおすすめです。こちらは換気の際に逃げていく室内の暖かさ(涼しさ)を空気で熱交換しながら換気する仕組みです。

引用・参考元:https://shikishima-town.com/blog/word-heat-exchange

換気システムには第一種から第四種まであり、それぞれ給気・排気の方法が異なります。熱交換型換気扇は第一種換気です。給気・排気どちらも機械で換気を行い、空気の流れをコントロールしやすいことから戸建てやマンションに適しています。熱が逃げない=省エネでもあるため、導入すると給付金の対象にも。

とくに断熱等級5以上の住宅は、熱交換換気扇に変えた方がエネルギー効率が高くなります。リノベーションをする場合は「換気扇を熱交換型に変えるべきか」なども検討するとよいでしょう。

一般の方はあまり細かいことまで知る必要はないけれど、さまざまな評価基準があることやエアコンの仕組み、選び方などを、省エネのスタートラインとして知っていだけるといいのかな、と思います。

まとめ

国の省エネ制度の考え方から、エアコンの選び方、換気と省エネの関係まで、わかりやすい日常生活の場面を通して「省エネ」についてお話しいただきました。もちろん、住まいを100%完璧に省エネ化するとなるとコストがかかります。だからこそ黒田さんは「リノベーション会社と話し合って『どこから手をつけるか』といった優先順位を整理することが大切です」と強調されていました。
また個人でエアコンを購入する際は、住宅の性能と照らしてオーバースペックにならない製品を選ぶこともポイントです。国が推奨する省エネ対策は補助金の対象になることもあるため、これからリノベーションをする方はチェックしておきましょう。

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