デンマークのくらし【後編】“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”|まちとのつながり

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デンマークのくらし【後編】
“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”

目 次
  1. 1“もっとも歴史あるエコビレッジ「Svabholmスヴァンホルム」”
  2. 2“エコビレッジの日本での可能性”

“もっとも歴史あるエコビレッジ「Svabholmスヴァンホルム」”

デンマークのエコビレッジをめぐる取材。
3つ目は、コペンハーゲンから電車で約2時間、駅から徒歩20分のエコビレッジ「Svanholmスヴァンホルム」430ヘクタールの広大な敷地の中に、農地、カフェ、食堂、保育園を備え約130人の人が暮らしています。

デンマークのくらし【後編】“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”
農地、カフェ、食堂、保育園を備え、エネルギーや食料の自家生産を行う完成されたエコヴィレッジです。

1978年創立と長い歴史があります。もともとは、数家族が貴族が住んでいた土地と家を買い取り一緒に住み始め、それが規模を拡大しながら現在の形になったようです。

スヴァンホルムには4つの共通理念があります。
①Common ideals concerning ecology (エコロジーに対する共通理念)
②Income sharing (収入の共有)
③Communal living (共同生活)
④Self government (自治行政)

デンマークのくらし【後編】“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”
昔は貴族のお城だったという象徴的な建物。築500年。

他のビレッジとの大きな違いは、収入の共有です。スヴァンホルムに住む人たちは、収入の約80%をスヴァンホルムに収めます。デンマークでは、収入の約40%を税金として収めなければならないので、収入全体の40%がスヴァンホルムに入る仕組みになっているのです。結婚するとお祝い金の支給、65歳以上で年金を支給される仕組みも存在するそうです。

また、住人は、①農業②林業③建築④キッチン⑤経営に関わる部門の5つのグループに構成されていますが、それぞれのグループにはリーダー的な立場の人は存在しません。毎週開かれる会議で挙がる検討事項や予算を、全会一致にて決定し、全員が納得するまで繰り返し話し合われます。

デンマークのくらし【後編】“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”
デンマークのくらし【後編】“エコビレッジ先進国で見つけた、持続可能なくらし”
たくさんの牛・豚・ヤギ・羊・鶏も飼育しているので、牛乳・ヨーグルト・卵も自分たちで作っています。

ビレッジ内には広大な土地があり、たくさんの種類の作物を育てています。小麦、数多くの野菜、りんごや洋梨などの果物、ハーブ類や花。すべて完全無農薬のオーガニックです。「自分たちで食べる物は自分たちで育てる。」まさに自給自足の生活を築いているようです。

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広大の土地の向こうに風力発電機を2機持っており、発電した電気は一旦電力会社に売り、それをまた安く購入しています

今回の取材では遭遇することはできませんでしたが、スヴァンホルムには、全世界中からボランティアの若者が集まってきます。彼らは「ゲストワーカー」と呼ばれ、週に30時間働くことを条件として食事と寝床を提供され①農業グループ、②建築グループ、③キッチングループに分かれて仕事を行うそうです。エコビレッジのコミュニティのあり方に興味のある人やオーガニック農業に関心がある人はもちろん、ただの休暇でリフレッシュに来ている人、人生の夏休み期間で来ている人など理由もさまざまだそう。

“エコビレッジの日本での可能性”

今回の3つのエコビレッジの取材から、スヴァンホルムやトーラップのような完全自給自足型の運営形態やコミュニティとの共生度の高い形態は、日本の実情に馴染みにくいため、そのままの導入は難しいと感じました。一方で、 ムンクスゴー型のように不動産会社が介在し運営や開発に携わる形態で、エコへの取り組みも無理のないレベルであれば、日本でも馴染める余地があるのではないかと感じました。

わたしたち日本人は、コミュニケーションにおいて、「相手の意図を汲み取る」「空気が読める・読めない」といった“あうん”のコミュニケーションを前提としがちです。また、これまでの歴史や文化を振り返り考えても、血縁・地縁といった相互関係を大事にしてきたため、その当たり前の相互関係にすっかり慣れてしまっているかもしれません。この相互関係を持続維持するために、衝突をさけ、対話においても積極的な発信を苦手としてきたのではないでしょうか。
しかし、新しいコミュニティ形成や維持の在り方を考えた時に、互いの相性を擦り合わせるプロセスを通じて活発な対話を行うことは、これからわたしたちが模索すべき新しい相互扶助のカタチなのかもしれません。 集落単位でのコミュニティの拠り所として、新しいコミュニティの相互扶助のあり方として、今後エコビレッジのような暮らし方も日本でも広がっていくかもしれません。

 

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