菅野有希⼦さんインタビューVol.4
愛着が持てる道具探しから楽しむ、エシカルな家事
会社員を経て2016年に独立。雑誌・書籍・WEBメディア等で、食からインテリアまでライフスタイル提案のスタイリングを幅広く手がける。”暮らしを楽しむ”をテーマに、小規模な撮影ではフォトフラファーを兼ねることも。うつわ好きが高じ、公私にわたる知見を生かして食器ブランドの商品開発にも携わる。
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リノベーションした住まいで暮らすテーブルコーディネーターの菅野有希子さん。インタビューVol.1〜3では、地球にやさしい暮らし方から、サステナブルな食べ物の選び方まで語ってくれました。今回は、掃除・炊事・洗濯という”毎日の家事”のシーンから考える、楽しく続けられて環境にも配慮した暮らしについて話を聞きました。
お風呂掃除に、へちまを取り入れる
ー菅野さんが、おうちの家事を”地球にやさしく”という視点で見直したきっかけは?
環境に関心を持つと、「日常的にできる地球にやさしいアクションとして、家事に関することが多いな」と気づいたんです。急に、「東京都のごみ捨て方法を地球にやさしいルールに変えよう」と言っても難しいけれど、毎日の家事なら変えられます。小さいアクションですが、蓄積していけば大きなアクションになると思って始めました。
ー掃除シーンで、エシカルを意識して変えたことは何ですか?
着なくなったTシャツや端切れを掃除に使うことから始めました。簡単にできて、自分にとっても不快に感じることがないので定着しています。
地球にやさしい掃除用具について調べていたときにいろんな人がトライしていたのが、へちまです。最初は固いのですが、使ううちに柔らかくなって扱いやすくなります。へちまは中身がスカスカだから、水切れがとても良いんです。プラスチックのスポンジだと、絞っても水がぽたぽた垂れていたのに、へちまにしてからは水垂れのストレスがなくなり、プラスチックごみ削減のためだけでなく、使い心地の良さから選ぶようになりました。
掃除シーンに関しては、他にもいろいろトライしています。食器用スポンジをプラスチックから、びわこふきんに変えてみました。びわこふきんは多少の汚れなら洗剤を使わずに洗えるそうですが、私は四角いスポンジで泡だてて洗うのに慣れているから扱いづらかったんです。本当は、びわこふきんを快適に使えるようになればいいのでしょうが、今のところプラスチックスポンジの快適さを手放せません。食器用スポンジは個人的な課題として、今もいろいろ調べながら快適に続けられるものを探しています。
ーいろんな人のおすすめでも自分には合わない、というアイテムはありますね。
そうですね。地球にやさしいと言っても、自分が使いづらいと思いながらやっていると家事が負担になって続けられないと思います。
それに、家事って学校で習わないですよね。気付いたらやらなきゃいけなくなっていて、皆が自己流でやっているから正解はない。育った家の風習もあるし衛生観も違うから、いろんな人の情報を参考にして、自分の感覚に合っているものを探していくのがいいと思っています。大人の自由研究みたいな感じで、楽しみながら取り組んでいます。
ラップに代わる保存方法を試す
ー次は炊事シーンについて。菅野さんが意識して変えていることを教えてください。
まずは、ラップを使う頻度を減らすことです。ラップは使い捨てプラスチックの代表格で、キッチンアイテムの中でも使う頻度が高いので、なるべく減らしたいと思っています。保存するための蓋が必要なら、食器を蓋にしてもいいと考え、食べ残したものにボウルをかぶせたりしています。
食器の使い方で言うと、昔の食器には蓋つきのものがたくさんありました。重箱よりも気軽に使えるものとして、最近になって蓋つきの食器が出てきています。例えば、漬物などは蓋つきの食器に入れてそのまま保存できます。食器ではありませんが、最近スタッシャー(プラスチックフリーの食品用保存容器)を買いました。それまではパンをラップに包んで冷凍していましたが、今はスタッシャーで保存しています。
ーラップを使わずに保存する意識を持てば、いろんなアイデアが出てきますね。
ラップの代用品だと蜜蝋ラップが有名で、私も使ったことがあります。蜜蝋ラップを快適に使える方はそれで良いと思いますが、私は蜜蝋のベタベタした感触があまり好きになれず定着しませんでした。
使ってみて良かったのは、さらしです。日本で昔から使われてきただけあって使い勝手がいいし、摩耗を気にせずガンガン洗えて清潔です。ラップの代用だけでなく、濡らしたさらしに野菜を包んで冷蔵庫で保存したり、サラダの水切りにも活用できます。
さらしを適当なサイズに切って台拭きに使い、汚れが目立ってきたらコンロ周りや調理台を拭いて、最後に床や玄関を拭いてから捨てる。同じ“捨てる“でも、化学繊維のものを捨てるより罪悪感が減ります。
軽い汚れなら、洗剤ではなくホタテパウダーを使う
ー洗濯シーンでは、どんな工夫をしていますか?
地球にやさしい洗濯は難しくて、私も勉強中です。そもそも洗剤を使うことで水を汚してしまうから、洗剤を使わない洗い方がベストだという話があります。ただ、汚れがひどい時は洗剤を使うしかない。私は、汚れた部分にピンポイントで洗剤を使って、ひどい汚れと軽い汚れで洗剤の量を使い分けるようにしています。
軽い汚れの場合は、ホタテパウダーを使っています。DEPTのeriさんが使っていて知ったのですが、ホタテの貝殻は廃棄物として問題になっていた存在のようで、その貝殻を再利用したパウダーです。除菌力・洗浄力があるので、洗剤の代わりに使っています。私は柔軟剤もあまり使わないので、香りづけでユーカリやミントのオイルを加えることもあります。
ホタテパウダーは洗濯以外にも、お風呂やトイレ掃除に使えるそうです。水と薄めてスプレーにしたらキッチンにも使えるので、これからやってみようと思っています。
ーホタテパウダーもそうですが、エコを意識した商品は用途の幅が広いです。
たしかに、今までだとトイレ掃除はこのスプレーでキッチンの洗剤はこのボトルとか、洗剤にもいろんな種類があって使い分けていました。さらに、トイレ掃除シート、電子レンジ用シートなど、家の中には掃除用具が溢れています。エシカルな家事を意識してやってみると、全体的にモノが減って収納スペースがスッキリしたんです。それに、場所で道具を使い分けせず全部同じもので家事をすることは、ズボラな私に合っていました。
エシカルな家事は、環境に対して自信が持てる
ー菅野さん自身は、地球にやさしく・エシカルを意識した家事にしてからどんな効果がありましたか?
意外と、家事が快適になっています。それに、収納スペースがスッキリするのも嬉しい効果でした。あとは、地球を汚しているかもしれないという罪悪感が減ります。環境に配慮した家事を続けることで、「自分は、地球環境を大きくマイナスにすることはしていない」という自信がつきました。
ーエシカルな家事が多くの人に広がれば、インパクトを生み出せるかもしれません。
私がやっていることは、地球環境のために活動している人から見たら、厳密にいうと足りない部分があると思います。でも、地球環境に良いことかつ、自分自身が快適な方法を探さないと続かないし広がらないと思います。
周りの人にシェアする時に気を付けているのは、使ってみてダメだった・続かなかった話もすることです。地球にやさしいものを探している時に、良い評価ばかり見ても選べない時がありませんか。逆に、「この部分が合わなかった」といった意見も知ることで、自分に合っているものを見つけられることがあると思います。家事は、一人ひとり考え方も方法も違うので、いろんな人の参考になるような情報の発信を心がけています。