俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編|シェアする暮らし

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俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編

目 次
  1. 1吟行で見たもの・感じたものをふりかえり、仲間と共有する「句会」
  2. 2俳句をつくるという行為がもたらすものは?
  3. 3俳人・堀本裕樹さんが思う「俳句をつくるくらしの魅力」とは

吟行で見たもの・感じたものをふりかえり、仲間と共有する「句会」

※この記事は「季節を知り、自分を見つめる。俳句をつくるくらし」の後編です。前編はこちらから

再びRAKURO ライブラリーラウンジへ集合し、この日の集大成である句会がスタート。かもめ句会では、このような流れで句会が進みます。

◆出句……短冊に俳句を書き、無記名で提出
◆清記……短冊をランダムに混ぜ、清記用紙に書き写す
◆選句……じっくりと鑑賞し、自分以外の句で気に入ったものを選ぶ
◆披講……自分の名前と、選んだ句を読み上げる。佳作を 1 点、特選を 2 点として点数を足していき、もっとも点数が高かった作品を決定する(点盛り)
◆句評……点数の多かった作品から順に、それぞれが作品を選んだ理由を評する。最後に誰がつくった句かを名乗る

俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編
俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編

さきほどまでの吟行の風景を思い出しながら一句ずつ鑑賞し、ひとり4句(佳作3句、特選1句)を選びます。

俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編

今回出句された45句から、最も多い10点を獲得した句は……

  春雪や藻のさみどりの揺れやまず

なんと、堀本さんの句でした!
「京都御苑の中の庭で、きれいな水が流れる中に藻が茂っていました。その藻の緑の美しさに刺激されて作った句です。春雪の“白”と、藻の“さみどり”を対比させたシンプルな写生の一句ですね」と堀本さん。

次に得票の多かった句は

  食痕の翅(はね)曼荼羅や冴返る

こちらも堀本さんの句でした。
「まるで昆虫採集の標本箱のように展示されていたアオバズクの食痕に触発され、どうしてもこれを詠みたいと思って。曼荼羅のように見えたので“翅曼荼羅”と表現したのと、久々に京都を訪れて体感したこの寒さを、寒が戻るという意味の季語『冴返る』を用いて一句にしました。食べ残しの羽にも『冴返る』を感じたのです」

そのほかにも、この日この時、この面々で京都を巡ったからこそ生まれた句がたくさんありました。

  大文字山より御所へ風花来 (幸代)

行列の鴬張りを踏む余寒 (かすみ)

梅の香やつぎつぎうつる京都弁 (千佳)

春浅き回り廊下を譲り合ふ (みこと)

鍾馗さんに送り出されて春の雪 (果歩)

目の前にある季節と自分の思いを、考えに考えて17音にまとめ、残すこと。句会を通じて仲間とそれを共有することで、思い出がより印象深くなる。旅の記録は、写真やお土産だけではないのだと感じることができた、充実した句会の時間でした。

俳句をつくるという行為がもたらすものは?

2万歩を超える徒歩移動の疲れを、京野菜のおいしいお料理で労いながら、みなさんにとって俳句をつくることがどうくらしと結びついているかを尋ねてみました。

俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編

「日記の代わりに毎日つくっている。生活に彩りが生まれ、どこへ行っても何を見ても句材にならないかとアンテナを張り、時間を有意義に過ごせるようになった」
「始めてまだ3年位。すでに生活の一部であり、アクセントになっている。いつか句集を作りたい」
「仕事よりも大切な趣味。俳句をやるようになって、仕事に振り回されない生き方に近づけている気がする。俳句つながりの友人もできた」
「日常から離れて、自分の世界に没頭出来る大事な時間。季語を勉強することで、日本語の美しさをあらためて感じられる」

俳句という共通言語のもと、京都に集った堀本さんと東西の仲間たち。また句会で会いましょうと約束し、西のメンバーは帰路へ、東のメンバーは宿泊先のRAKURO京都へと別れたのでした。

俳人・堀本裕樹さんが思う「俳句をつくるくらしの魅力」とは

今回ご一緒した堀本さんに、あらためてお話を伺いました。

―初春の京都吟行はいかがでしたか?

久しぶりに京都に来ましたが、独特なこの空気、雰囲気を感じられて楽しかったですね。雑誌やテレビの企画でも吟行をする機会がありますが、やはり多少は緊張するのですが、今回は、BUKATSUDOの仲間と素で楽しめたからこそできた句もありました。
句会には出さなかった句をお見せしましょうか?

  春雪や金箔の照る桜の間

二条城、二の丸御殿で見た「桜の間」がとても豪奢な空間で。その桜の間と春の雪を取り合わせて表現することで、絢爛豪華な光景が少しでも詠めたらと思いました。

俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編

―俳句を生業とする人として、俳句をつくるくらしの魅力をどう感じていますか?

あらゆるものごとに対して丁寧に接するようになることが、俳句を取り入れたくらしのよいところ。俳句を詠もうという気持ちでいると、ほんの些細なことであってもそこにある季節や自然の息吹に気づいたり、自他の思いを感じたりと敏感になります。さらにそれを、十七音の言葉に反映するという行為で、自分の生活をひとつひとつ確かめて、見つめていくことにつながるのだと思います。

―どんな人に俳句をつくるくらしを薦めたいと思いますか?

今のくらしに何か足りない。もうひと味ほしい、そんなふうに感じている人にはうってつけだと思います。俳句をすることはきっと、生活のよいスパイスになります。
季語を知り、季節の事象を知っていくことで生まれてくる豊かなものは、俳句をやってみないとやはりわからない。難しそうとためらっている人や、少しでも興味を持っている人は、すぐ飛び込んだほうがお得ですよと伝えたいですね。早く始めれば、それだけ楽しい時間を過ごせますから。

BUKATSUDOで毎月開催しているかもめ句会は、気軽に参加できるだけでなく、吟行や食事句会などの企画もたまにあり、初心者でもいろいろな俳句の楽しみ方が味わえます。

始めた当初はこれほど長く続くと思っていませんでしたが、より深めていこうという人がこれからもっと増えるはず。僕も昨年に「蒼海」という俳句結社を立ち上げて活動していますが、まず体験してみたいという人にとっては、BUKATSUDOは敷居が低く、迎えてくれるいい仲間も揃っているので最適だと思いますよ。

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