3年ぶりの「さくらまつり」が象徴する、
シェア型賃貸住宅「りえんと多摩平」の
“多世代交流がある暮らし”
祭りやイベントといった催しは、人々のつながりをつくったり、文化を後世へ引き継いでいく機能を持っています。
一方で、少子高齢化や新型コロナウイルスの影響により、各地の祭りやイベントが存続の危機におかれており、地域にとってつながりや文化継承の貴重な機会が減りつつあります。
そんななか、あらたに催しが生まれた地域もあります。
それが、シェアプレイスのひとつ「りえんと多摩平」がある東京都日野市多摩平。ここでは、旧多摩平団地を再生した「たまむすびテラス」と言うエリアで、2012年から毎年4月に「多摩平の森 さくらまつり(以下、さくらまつり)」が行われています。
新型コロナウイルスの影響による2年間の開催見送りを経て、2022年4月16日(土)、3年ぶりに「さくらまつり」が開催されました。今回はそんな「さくらまつり」の現場を訪れ、そうした催しが地域やシェアハウスにもたらす意味について考えていきます。
「さくらまつり」とは
「さくらまつり」は、多摩平の森にある「たまむすびテラス」で開催されています。
「たまむすびテラス」は、1958年に造成された旧多摩平団地の団地再生事業の一環として2011年に誕生した、多世代交流型賃貸集合住宅。団地型シェアハウス「りえんと多摩平」の2棟、菜園付き共同住宅「AURA243多摩平の森」の1棟、高齢者向け住宅「ゆいま〜る多摩平の森」の2棟で構成されています。
「さくらまつり」は「たまむすびテラス」を運営する3者と、「UR都市機構」や「多摩平の森自治会」、「ひの社会教育センター」という、まちづくりをともに行うパートナーが協力しながら運営しているイベント。2012年から毎年、「たまむすびテラス」の敷地にある桜並木のもとで、ステージでのパフォーマンスや住民による出店の営業が行われてきました。(2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響で中止)
多世代の交流が地域に戻ってきた、2022年の「さくらまつり」
八重桜が見頃を迎えた2022年4月16日(土)に開催された「さくらまつり」の会場を訪れると、青空のもと子どもからお年寄りまで、多くの方が集まっていました。
「たまむすびテラス」にある団地型シェアハウス「りえんと多摩平」の入居者にとっても、「さくらまつり」は春の風物詩。ふらっと訪れるのはもちろん、希望者は出し物を出すこともできます。
3年ぶりの開催となった今回は、2021年に「りえんと多摩平」に生まれたマンガ家のシェアハウス「多摩トキワソウ団地」の入居者による似顔絵ブースの出店をはじめ、占いやフリーマーケットが出店されました。
出店した方からは、「自分が取り組んでいることが、おじいさんおばあさんなど普段接することのない世代の人たちに想像以上に喜んでもらえて驚いた」「この地域で生まれたわけではないけど、地元のような感覚が生まれている」といった声がありました。
「さくらまつり」を通して、みんなでバトンタッチをする
「さくらまつり」の賑わいを、目を細めながら眺めているおふたりがいました。多摩平の森自治会の会長・笹原武志さんと、事務局長の関泉さんです。
「3年ぶりの開催ですけど、やっぱりいいもんですね」と笹原さんが言えば、「さくらまつりって、みんなが集まる機会なんですよね。『あんな小さかった子が、こんな大きくなって!』って、近況がわかるでしょ。それが楽しみなんです」と関さん。ふたりの掛け合いは息ぴったりです。
笹原さんと関さんは、長年このまちで暮らし、このまちを見守ってきました。なんと、笹原さんは2022年で会長30年目、関さんは、事務局長44年目だそう! 「最初は親戚付き合いのつもりで地域と関わってたら、気づいたらまちづくりになってたんですよ」と、笑顔で振り返ります。
少子高齢化や団地の建て替え、新型コロナウイルスなど、環境が大きく変わる中で、人々のつながりを維持していくために、笹原さんと関さんのようにまちを見守り続ける存在は重要です。
そして、ふたりがまちづくりで大切にしていることの一つが、「さくらまつり」のような催しなのだそう。笹原さんは次のように語ります。
「多摩平の森のまちづくりは、日野市やUR都市機構、リビタなど、自治体やいろんな組織が関わっていますけど、どの組織も、担当者の異動がある。そうすると、せっかく『まちをこうしていきましょうね』って話していても、異動のタイミングできちんと引き継がれないこともあるんです。だから、個人同士の形式的な引き継ぎじゃなくて、『さくらまつり』のような催しに、課長も部長も住民も、みんな来てもらう。そうすることで、みんなでバトンタッチをしてきたんです。」
そのように、人から人へバトンタッチされてきたまちにとって、2011年に入居が始まった団地型シェアハウス「りえんと多摩平」はどんな存在だったのでしょうか。もしかしたら、ヨソモノとして警戒する気持ちもあったのでは?
そんな疑問を伝えると、関さんは「いえ、そんなことなかったですよ!」と首を振ります。
「まちって親戚のつながりみたいなものですから、シェアハウスができるって聞いたとき、とっても嬉しかったんです。『若い親戚ができるねぇ』って、みんなで話してましたよ。団地も年寄りが多くなっていたものですからね。若い方々と、こうして一緒に『さくらまつり』ができるのが、本当に嬉しいんです。」
「りえんと多摩平」ができた2011年は、まだシェアハウスという存在も今ほど一般的ではなかった時代。関さんをはじめ自治会のみなさんは、「りえんと多摩平」ができるにあたって、別の地域のシェアハウスをバスで見学に行ったのだとか。しかし今では関さんも、「あのときみたシェアハウスより、『りえんと多摩平』の方がずーっといいですよ!」と、熱を込めて語るほど、「りえんと多摩平」は地域に根付いた存在になっているようです。
最後に笹原さんは、「りえんと多摩平」に新たな可能性を感じているのだと教えてくれました。
「旧多摩平団地って、結構文化的なつながりもあったんですよ。そういうつながりって、建物を建て替えたりしたら途絶えてしまうこともある。でも、今日も『りえんと多摩平』の入居者さんが似顔絵ブースを出していますよね。そんな光景を見て、また文化が多摩平の森で生まれて、つながりが育っていく可能性を感じているんです。」
まとめ
東京のような都市部では、地域のつながりが希薄になっていると言われます。新型コロナウイルスは、その流れにさらに拍車をかけました。
しかしそんな時代において、「さくらまつり」のような地域の催しを起点に人のつながりをつくりだしているのが、今回ご紹介した多摩平の森というエリアです。
そしてそんなエリアにある「りえんと多摩平」には、多様な価値観を持つ同世代だけでなく、多世代とのつながりを育みながら、暮らしを楽しむライフスタイルがあります。「さくらまつり」は、そんな暮らしを象徴するものだといえそうです。
「おかえりがある、ひとり暮らし。」をコンセプトにした、プライベートな時間が守れる個室と、コミュニティが広がる共用スペースをあわせ持つシェアハウス。
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