昭和レトロにリノベーション。築60年の一軒家の味わいを活かす
- 所在地:
- 東京都江東区
- 居住者構成:
- 夫婦+子ども2人
- 専有面積:
- 99.38㎡
- 間取り:
- 4LDK+土間
- 既存建物竣工年:
- 年
- リノベーション竣工年:
- 2011年
―こちらに住む前は、どのような住居にお住まいでしたか?
Fさん:新居のすぐ近くにある墨田区内の賃貸マンションです。妻の実家が近くにあるので、そこに家族4人で長年住んでいました。実は、幼い頃から引越しが多かったこともあり、家を買って1つの場所に永住したいという感覚は希薄で、ずっと賃貸でもいいかなと思っていたんです。できれば同じエリアに住み続けたかったし、住まいに利便性を求めるなら、むしろ賃貸の方がいいのかな、と考えていました。
―家を購入しようと思ったきっかけは何ですか?
Fさん:子供が大きくなって、前の家が「物理的に限界」だったからです。でも、いざ探し始めてからが大変でした。
田舎(地方)の出身だからか、マンションにはあまり魅力を感じず、家を買うなら 一戸建てだと思っていましたが、予算とエリアの都合から難しい。消去法で中古のマンションを見学したこともありました。
でもまったく希望の物件がなかった。元々、与えられたもの(予め用意されたもの)をそのまま使うのが嫌いなこともあって、既存の間取りはどれも気に入らないし、やはり準備された選択肢の中からチョイスするのは無理だと痛感しました。
Fさん:そんなときに、「リノベーション」という言葉や考え方を知り、これなら自分の考える住まいや生活が実現できるのでないかと。時を同じくしてリビタが主催していたリノベーションのトークイベントにも参加。ゲスト講師陣のお話が腑に落ち、それまでのモヤモヤが消えて、中古物件を購入してリノベーションをすることに決めました。なかなか良い物件にめぐり合えず、半ば諦めに近い感情だったので、物件探しには苦痛さえ感じていましたが、やり方次第では自分の好きなように出来るリノベーションという新たな選択肢を得た途端、がぜん興味やアイディアが沸き出し、物件探しが「苦痛」から「快感」へと変わっていきましたね。
―現在の住まいはどのように探したのですか?
Fさん:リビタにお願いしようと決めてから、仕事の都合でしばらく物件探しを中断していたのですが、たまたま妻の実家の隣の土地が古家付きで売り出されるという話があり、リビタに仲介をお願いして購入することにしました。古家は築60年の木造2階建てを、40年前にリフォームした元美容室兼住居。建替えを前提に実質土地だけの価格で販売されていたのですが、予算的に更地にして新築を建てる余裕もないし、元々中古の戸建てを探してリノベーションしようと思っていたので、本来、滅失される運命にあった古家を活かすことにしました。言い換えれば、「リノベするしかなかった」とも言えます(笑) 。
―中古を買うことに対する不安はありませんでしたか?
Fさん:元々、中古品の傷やへこみ、剥がれなどの経年劣化にはまったく抵抗がなく、むしろ好きで、逆に真新しいものにはあまり興味を感じません。以前から年代ものの家電や雑貨をコレクションしていて、古いものやヴィンテージへの愛着は人一倍持っています。
また、学生時代にニューヨークに留学していた時に、アンティーク家具付きの築100年のアパートに住んでいた経験があり、古い空間で古いものに囲まれて生活することの心地よさを知りました。古い建物の内装を改装したギャラリーやショップなどが並ぶ街並みを見て、新旧の要素が共存している様子に共感を覚えたこともあって、最初から「新築」は考えませんでした。
しかし、古いが故の不安要素やマイナス要素が少なからずあるのも確かで、基礎部分の補強・耐震工事、雨漏りの補修のための屋根の葺き替えなど、安全に住むために必要な最低限の工事には、結果的にリノベ費用全体の約半分をかけました。見た目には関係しない地味な工事ですが、中古の不安を取り除き安心して生活するためには絶対外せない予算でもあります。
―この住まいを選んだ決め手は?
Fさん:なんといっても立地が妻の実家の隣だったことです。建物をリノベーションすれば、予算の折り合いがつけられることも決め手でした。物件は18年間空き家だったので、相当の傷みを覚悟していたのですが、内覧してみると意外ときれいな状態だったので、上手く活かせばいい方向に持って行けそうだと。セミナーなどに参加して、いろいろ勉強していたことで、「元はどうあれリノベーションすれば変わる」と、既存の状態に惑わされずリノベーション後のイメージを持つことができたのも、スムーズな決断につながっています。
―プランのコンセプト、こだわりのポイントを教えてください。
たくさんの人が集まる多目的でパブリックな土間
Fさん:元美容室の店舗スペースだった玄関すぐの空間は、白い壁とコンクリートの土間。商店街に面した窓からは、通りを行き交う人が見えるオープンな雰囲気です。この土間は、家族がそれぞれの友人や仲間を呼んで自由に使えるパブリックな空間としてつくりました。私は仕事の打ち合せに、ガールスカウトやPTAの活動に参加する妻は仲間とのミーティングに、中学生の娘はバンドの練習に、高校生の息子は友達を集めて宿題をしたり、遊んだりと、日常的にたくさんの人たちとシェアしています。週末には、近所に住む親戚や甥っ子、姪っ子が集まって皆で賑やかに食事をする場所にもなりますね。 テーブルは、なかなかイメージ通りのモノが見つからなかったので、結局、松の古材の天板、黒皮鉄の脚の組み合わせをリメイク家具店にオーダー。古材は昔の蔵で使われていた床材ですが、工房のある埼玉の山奥まで足を運び、自分で気に入った板をチョイスしました。1700×780mmと大きめなので、大人数が集まっても大丈夫だし、作業台としても使えます。2階に自分の個室があり、通常はそこで仕事をしていますが、煮詰まったときなど、気分を変えて土間をワークスペースとして使ったり、コーヒーを楽しむカフェ空間として使うことも多いです。
築60年の味わいを活かし、昭和レトロの演出を楽しむ
Fさん:土間から続く小上がりの空間はリビング。趣味の本だけでなく、仕事で資料として使う雑誌などが並ぶ本棚もここに置いてあるので、ライブラリーのような場所でもあります。2階へ続く急勾配の古い階段もそのまま残しました。 築60年ならではの年季の入った柱や階段、40年前の浴室の玉石タイル、型ガラスなどの既存物件に残るパーツを最初に見た時に、これらを上手く活かして、古い要素と新しい要素が混在する(新しいけど懐かしい様な)空間にしようと考えました。床は構造用合板でラフに仕上げ、リビングにはカリモクのソファやホーローの照明をコーディネイトして、ミッドセンチュリー風に。その奥のダイングキッチンは、デコラ天板のテーブル、合皮錨打ちの椅子、花柄のキッチン雑貨などを集めて、昭和の団地の食卓を思わせる雰囲気にしました。結果的に趣味で集めてい る、昭和の生活雑貨や20~40年前のテレビやラジオなどのレトロ家電ともマッチして満足のいく出来栄えです。
収納で間仕切った2階は、家族のプライベート空間
Fさん:1階がいろいろな人が集まって、キッチンの奥まで自由に入ってもらえるようなオープンな空間に対して、2階は家族のための空間になっています。子どもたちももう中学生と高校生で、個々のライフスタイルがあり、大人が4人いるようなものなので、それぞれのプライベートな空間と収納を設けました。造作の収納家具で間仕切りした4つの空間は、物理的に個室になっているわけではありませんが、気持ち的には「個」が保たれた自分だけの空間になっています。
―引っ越してきてから、変わったことはありますか?
Fさん:今までは、色んな意味で(?)「家族以外の人を呼べない家」でしたから、毎日のように、隣に住む両親や近隣の親戚、友人など、家族と関わりのある人が、土間や家に出入りしているというのは大きな変化です。こういう感覚は、このエリア(下町)ならではのモノなのかもしれませんが、(自分の育って来た環境には無いものなので)大らかでいいな、と新鮮に感じています。たくさんの人がいつも自由に出入りしている家をイメージして、1階の土間をつくったので、想定していた通りに機能しているのが嬉しいです。
―これからやってみたいことは?
Fさん:1階の土間では、白い壁をスクリーン代わりに、PCの画面やDVDを投影することもできるので、このスペースを上手く使って、写真やイラストなどを展示するギャラリーとして使用したり、トークショーやイベント、ライブ、料理教室などを開催したり、近隣の商店街などの地域貢献に活かしたりと、多目的でパブリックな活動を考えていて、出来ることから少しづつでも実現していければと思っています。
将来的には、隣の実家と合わせて建替えすることも考えています。あと何年住むか分かりませんが、それまでは味わいのあるこの空間を思いっきり楽しみたいです。
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