三角本棚と吹き抜け空間|お宅拝見

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三角本棚と吹き抜け空間

目 次
  1. 1玄関ホールやバルコニーの芝生は、家のなかにあるリラックスできる場所
  2. 2手仕事を感じさせる多彩な仕上げ。伝統的な和の設えを集めた和室。
  3. 3三角屋根の天井と合板の壁が囲むアトリエのような雰囲気のLDK

井の頭公園のほど近く、静かな住宅街に建つ、築45年の木造2階建ての戸建てを購入し、リノベーションをしたNさんは、奥さまと娘さんの3人家族。200㎡近くある面積に、吹き抜けの玄関ホール、ワンフロアまるごとのLDK、芝生が広がるバルコニーなど、広々とした開放的な場所を設け、ゆったりとリラックスできる空間を実現しました。リノベーションの経緯や手仕事を感じさせる素材へのこだわりなどについて、詳しくお話をお聞きしました。

三角本棚と吹き抜け空間

玄関ホールやバルコニーの芝生は、
家のなかにあるリラックスできる場所

——とても広い玄関ホールと吹き抜けですね。吹き抜けからは2階の様子も感じられて開放的な雰囲気です。

ご主人:以前住んでいた家にも吹き抜けがあって、その空間が好きだったので、今回のリノベーションでも吹き抜けはぜひ設けたいと思っていたんです。既存の家を見学した時、天井が高くていいなと感じました。床を抜いて一部を吹き抜けにしたら光がきれいに入って気持ちいい空間になるだろうなとイメージできました。

——そのご希望からこの玄関ホールが生まれたんですね。かなり広い空間でテーブルなども置かれていますが、どのように使っていますか?

ご主人:玄関ホールの隣に洗面室と浴室があって、奥には寝室がありますから、朝起きたらシャワーを浴びて、身支度を整え、玄関ホールのテーブルでコーヒーを飲んでホッと一息ついて、そのまま会社へ出勤します。朝は1階だけで完結するので、2階には上がりませんね。

奥さま:玄関ホールのテーブルでお客さまをお迎えすることも多いです。普通なら玄関で立ち話になる場面でも、ここなら気軽に上がっていただけるので、よく活用しています。

三角本棚と吹き抜け空間

——2階はワンフロアまるごとLDKですね。吹き抜けを囲むようにLDKとバルコニーを回遊できるような動線になっています。

ご主人: LDKは家族みんなが一番長く過ごす場所なので、できるだけ広くしてほしいと希望しました。バルコニーは既存のサンルームを撤去して広くしてもらいました。リノベーションの設計をお願いした納谷新さんのご自宅は、屋根が芝生になっているのですが、それを見て気持ち良さそうだなと感じて、バルコニーには芝生を敷くことにしたんです。LDKからも緑が目に入り、開放感があって気持ちいいですね。

三角本棚と吹き抜け空間

奥さま:犬が3匹いるのですが、芝生の上を歩くのが好きみたいですね。喜んでよくテラスに出ています。

ご主人:芝生に座ってハイキングのように食事をしたり、犬と一緒に寝転んだりして過ごすこともあります。自宅にリラックスできる場所があるのはいいですね。普段、仕事などで忙しくしているので、家は疲れを癒してくれるオアシスのような場であってほしい。それが叶って嬉しいです。

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手仕事を感じさせる多彩な仕上げ。
伝統的な和の設えを集めた和室。

——仕上げには印象的な素材がたくさん使われていますね。1階からいきますと玄関ホールと寝室を仕切るガラスの引戸、六角形の磁器質タイルとフローリングなどが目を引きます。

ご主人:仕上げは雑誌やインターネットなどから、好きなテイストを集めて納谷さんと共有し、具体的なサンプルを提案してもらいました。イメージしていた通りのものや使いたいと思っていたものをご提案いただき、スムーズに決めることができました。
ガラスの引戸には紙布(しふ)という和紙を紡いだ糸で織り上げた布を挟んでもらいました。透明なガラスのままだと丸見えになってしまうので、何かで隠したかったのですが、光を通すもので、人の気配もかすかに伝わるものがいいと思って、いろいろ探してたまたま雑誌で見つけたんです。玄関の壁のガラスレンガも光を通すけれど、目隠しにもなる素材で気に入っています。
六角形のタイルとフローリングは納谷さんからの提案です。連続性が出るし、ユニークな雰囲気のものを少し取り入れるのもいいかなと感じました。タイルは、夏は冷たくて気持ちいいです。犬たちもお気に入りでよく寝そべっています。

三角本棚と吹き抜け空間
ガラスの引戸に用いられた紙布(しふ)
三角本棚と吹き抜け空間
玄関のガラスレンガは柔らかい光を通す
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わんちゃんもお気に入りの六角形タイル
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他ではあまり見ない六角形フローリング

——ガラスに挟んだ紙布は、伝統的な工芸品なのですね。寝室の隣の和室にも、手仕事を感じさせる仕上げで構成されていますね。

奥さま:和室は客間として使っているのですが、他の空間とは雰囲気ががらりと変わる場所なので、和の雰囲気の上質な素材を使いたいと考えました。入口や床の間などの床にはスプーンカットという加工がされた木を使っています。建具は木目が美しいオリーブで造作してもらいました。壁はスサ入りの珪藻土です。

三角本棚と吹き抜け空間
スプーンカット加工された和室の入口。職人の手によって生まれた紋様が美しい

ご主人:和室の壁につくり付けた棚は黒皮鉄、天井はキリの羽目板です。地窓から眺められるところにヒノキゴケの庭もつくりました。畳や木の香りと伝統的な和の設えを十二分に楽しめる場所になりました。私はたまに和室で寝るのですが、とても心地いいですよ。

——玄関ホールの壁は、外壁と同じ素材で仕上げられていますよね?

ご主人:外壁はモルタルの質感が好きだったので、それに近いものでクラックが入りにくいものを選んでもらいました。玄関ホールも吹き抜けまで同じ材料にすることで、外と内の連続性が出ていると思います。

三角本棚と吹き抜け空間
三角本棚と吹き抜け空間
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三角屋根の天井と合板の壁が囲む
アトリエのような雰囲気のLDK

——続いて2階に行きます。床がオークの複合フローリング、壁がワラン合板ですね。壁一面に本棚があり、天井は三角の屋根の形に仕上げられていて、温かみのある雰囲気です。

三角本棚と吹き抜け空間

ご主人:壁の合板は、ダークブラウンのオスモカラーで塗装しています。落ち着いたアトリエ的な空間に仕上がって気に入っています。壁面の本棚の一角には、私のワークスペースもつくってもらいました。正面に窓を設けて、外の景色を感じながら仕事をしたりパソコンをしたりして過ごしています。当初のプランでは1階のクローゼットの奥に書斎を設ける予定でした。以前の住まいにも書斎があったのですが、あまり使わなかったので、LDKにデスクがあれば十分事足りると考え、書斎はなくして、その分クローゼットを広くしてもらいました。

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書斎のかわりに作ったワークスペース。コンパクトだがパソコンワークには充分な広さ。

奥さま:本棚も大容量だから、何も入っていない棚がたくさんあって、それが余白になっているので、圧迫感がなくていいですね。一番下の棚は犬たちの居場所にもなっているんですよ。穴にもぐり込むような感じで居心地がいいんだと思います。

——キッチンの天板とダイニングテーブルはオリジナルの造作ですね。同じ素材による仕上げですよね?

三角本棚と吹き抜け空間
三角本棚と吹き抜け空間

ご主人:コンクリートかモルタルが良かったのですが、雑誌か何かでモールテックスという素材を知って、良さそうだったので使ってもらいました。モルタルのような仕上がりだけどクラックが入りにくい特徴があるそうです。この質感もとても気に入っています。

奥さま:キッチンはとにかくシンプルな造りにしたいと思いました。前の家では、システムキッチンをカスタムしたものを使っていたのですが、複雑な機能や引き出しがたくさんあったりしてオーバースペックだと感じていたんです。余計なものは極力省いて造作してもらいました。

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——最後にリノベーションを選択するまでの経緯についてお伺いいたします。冒頭で、今回のリノベの設計者として納谷新さんのお名前が登場しましたが、 Nさんご夫妻は、納谷さんが手掛けたリビタのリノベーション済み戸建て「井の頭の家」の内覧をされて、リノベーションをしようと思われたのですよね? 

ご主人:そうなんです。12年前に京都で新築一戸建てを建てたのですが、東京に転勤になって、私だけ単身赴任していました。家族で東京に住むことになって家を探していたんですが、当初は新築の一軒家に住み替えるつもりでした。「井の頭の家」を見て、リノベーションの面白さに惹かれて方向転換したんです。

——「井の頭の家」やリノベーションについて、どんなところが面白いと思われましたか?

ご主人:井の頭の家」は吹き抜けからの光の入り方、木やモルタルなどの素材が光を受けてとても美しく見えるように工夫されていて新鮮さを感じました。また、あるものを活用して価値を高めていくというリノベーションのコンセプトにも共感しました。空き家などの社会的な問題を解決することにもつながりますから、自分でもやってみたいと思ったのです。それに新築を建てることはすでに経験しているので、次はリノベーションをやってみたいと思いました。

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——既存の物件は築45年ですが、築年数についてはどのように感じられましたか?

ご主人:昔の家は、木材なども良い素材が使われているし、丁寧に建てられている良さもあると思います。天井が高くゆったりと建てられているところも、リノベーションをするなら自由度が上がっていいなと感じました。時間を経た建物がもつ佇まいも良かったので、耐震補強や断熱などをしっかり施せば、リノベーションならではの良い家がつくれると思いました。予算的に新築で建てることが難しいエリア、環境の良い立地でも、中古リノベを選択することで戸建ての家がもてるのも魅力だと思います。
実際にリノベーションをしてみると、構造部分の傷み具合など解体しないと分からないこともあり、計画通りにはいかないことも知りましたが、予算なども含めてコントロールしながら進めていくのもリノベならでは醍醐味だと感じました。

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文:村田保子/撮影:古末拓也
取材・撮影:2017年8月
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