壁式構造とメリハリのある空間|お宅拝見

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壁式構造とメリハリのある空間

目 次
  1. 1壊せない壁をプラスに活かし、メリハリのある居心地をつくる
  2. 2物件を見学して購入を即決。知識がなくてもリノベーションはできる
  3. 3大事なこだわりはしっかり実現。無理なくコストをコントロール

服飾関係の仕事をされているNさんは、賃貸で引っ越しを考えていたところ、友人の紹介で見学した中古マンションが気に入り、購入を即決してリノベーションをすることに。選んだのは築39年の壁式構造。撤去できない構造の壁がいくつかありましたが、むしろ壁を活かすことで、結果的に居心地が異なるメリハリのある家になったといいます。Nさんと、リビタの担当コンサルタントの飯田勇人さんに、たくさんの工夫が詰まった家づくりについてお話を聞きました。

壁式構造とメリハリのある空間

壊せない壁をプラスに活かし、
メリハリのある居心地をつくる

——ダイニングキッチンとリビングの間に壁があり、2つの空間が全く異なる居心地ですね。

Nさん このマンションは壁式構造で、撤去できない構造の壁がありました。リノベーションといえばスケルトンにするイメージがあったので、どうしようかなと思いましたが、壊せない壁をプラスに活かし、ダイニングキッチンとリビングを使い分けることに。どちらをリビングにするか迷ったのですが、人が集まることが多いので広いほうをダイニングキッチンにしました。リビングは一人で過ごす場所だから、コンパクトでもいいかなと考えたのです。

——延べ床面積が45㎡強とコンパクトな物件ですが、キッチンには造作のカウンターもあり、余裕のあるつくりになっていると思います。

Nさん コンパクトでも空間にゆとりがあって、居心地のいい家にしたいという希望はありました。料理が好きで、友人たちが来た時もキッチンに立って話しながら作業ができるし、数人でキッチンに立てるので、広めにつくって正解でしたね。キッチンが広くて使い心地がいいから、普段の食事も、面倒でもちょっとつくろうかなという気持ちになります。

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——キッチンカウンターから連なるように、キッチンと通路の間に壁があります。この壁は新設することをご希望されたのですか?

Nさん 食器をたくさん持っているので、キッチンを隠したいという希望があったのです。最初は壁ではなく、カウンターを高くして隠すという方向でした。圧迫感が出そうだなと感じて、設計担当の「キャンプサイト」勝又みづきさんと相談したところ、カウンターは一般的な高さにして、壁をつくろうというアイデアが出てきました。完成してみると、この壁がオブジェのようなアクセントになっていて、とても気に入っています。ただの壁ではなく、開口があり、上部が抜けているので、狭さを感じさせません。

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——一方、リビングは真っ白な空間で、植物がたくさんあってリラックスした雰囲気ですね。

Nさん もともと床はダイニングと同じオークのフローリングだったのですが、入居後にDIYで白のフロアタイルを張りました。リビングは一人でリラックスしてくつろぐ場所。私の場合、無機質でクリーンな白っぽい雰囲気のほうが落ち着くように感じ、やってみたらとてもしっくりきました。壁式構造で壊せない壁があったことで、結果的にダイニングキッチンとリビングの居心地が異なり、オンオフの切り替えができるメリハリのある家になったと感じています。

壁式構造とメリハリのある空間
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物件を見学して購入を即決。
知識がなくてもリノベーションはできる

——玄関側には寝室がありますが、ドアをつけずにカーテンで仕切られています。このカーテンはNさんが調達したのですか?

Nさん そうです。バンブーカーテンというものなのですが、海外のカフェの間口でよく見かけて、いいなと思っていたので、WEBで探して購入しました。自分の生活スタイルを考えると、寝室のドアはなくても大丈夫そうだなと思ったので、思い切って付けないことにしたんです。各スペースは壁で区切られていますが、全体的にはゆるやかにつながっているワンルームのような感覚で暮らせています。

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——ダイニングキッチン、リビング、寝室とそれぞれ居心地が異なりますが、全体のテイストにはまとまりがあります。仕上げはどのように決めていったのですか?

Nさん 好きなイメージの空間の写真を集めて、勝又さんと相談しました。白をベースに黒、グレーなどポイントで使って、木の雰囲気も少し入れたいという希望でした。色や素材のセレクトや組み合わせなどは、仕事でも馴染みがあり、好きなテイストもはっきりしていたので、スムーズに決められたと思います。木の分量が多すぎても少なすぎても違うなと思っていたのですが、キッチンカウンターの天板をフローリングと同じ木材にして調整するなど、トータルでバランスを整えていきました。

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——ここからは、コンサルタントの飯田勇人さんにも入っていただき、どのようにリノベーションを進めて行ったのか、詳しくお伺いします。まずは、リノベーションをしようと思ったきっかけを教えてください。

Nさん 実はリノベーションをしたいと考えていたわけではなく、単純に引っ越しをしようと賃貸物件を探していたのですが、友人からリビタのことを聞いて、この物件を紹介してもらったのです。住宅を購入することは想定外だったのですが、物件を見学してみると、日当たりがよく、エリアも申し分なく、とても住みやすそうな環境だったので、即決してしまいました。リノベーションの知識もなかったので、最初は分からないことだらけでしたが、「リノサポ」のサービスで飯田さんにご担当いただき、ご紹介いただいた設計者の勝又さんも好きなテイストが似ていたので、信頼してお任せすることができました。

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——リビタのコンサルタントが紹介する設計者は、どのように選ぶのですか?

飯田 Nさんのお好きなテイストに近い方を候補として考えることはもちろんですが、今回はNさんがリノベーションを予定していなかったこともあり、細かいことが決まっていなかったので、限られた時間の中で進めていくにあたって、相談がしやすく、ほどよく引っ張ってくれるタイプの方がいいと考え、勝又さんをご提案しました。

Nさん 何でも話しやすかったし、引っ張ってくれました(笑)。細かいところまで説明しなくても、分かってくれたのでやりやすかったです。

飯田 本当に相性が良く、打ち合せも盛り上がり、勝又さんの提案がNさんにピンポイントで刺さっているなと感じていました。また、Nさんのポジティブな姿勢と決断力の強さも、スムーズに進んだポイントです。リノベーションではほとんどの場合、予算調整が必要になり、今回もご希望通りというわけにはいかない部分もあったのですが、Nさんがスパッと決めてくださったので、より良い方向にまとまっていったなという印象がありました。

壁式構造とメリハリのある空間
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大事なこだわりはしっかり実現。
無理なくコストをコントロール

——予算の調整で、難しかったところなどはありますか?

Nさん スタート時点から、軽い気持ちで始めて、予算のこともあまり考えていなかったのですが、やっぱりいろいろやるとお金がかかるということも理解できて、できるだけ予算をかけない方向で調整していくことになりました。でも、予算的に難しければ、前向きに他の方法を考えるという感じで、それほど無理なく調整できたと思います。

飯田 具体的には、壁・天井は塗装風クロスでいいと、早い段階で決めていただきました。浴室・トイレの設備やミラーなども既存活用。床は幅広のオークで、白っぽいものというご希望はキープして、既存の床の上から張ることで予算を押さえています。キッチンはtoolboxのものですが、シンク下部はオープンなので、収納部分はNさんにお任せしました。造作のカウンター下部も同様です。Nさんが以前の住まいで使っていた食器用シェルフを入れることにして、その高さに合わせて設計しました。

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Nさん 食器用シェルフは使い慣れたものだったし、活かせるものは活用できればと考えました。造作のカウンターの下に収まっているので、ダイニングからは見えず、すっきりと暮らせています。食器、キッチンツール、洋服など物が多いこともあり、見せる収納と隠す収納はしっかり考えてメリハリをつけたいと思っていたので、物を収める場所はきちんと確保したかったんです。ウォークインクローゼットも、広めにスペースを取ってもらいました。予算を調整するために、飯田さんや勝又さんと一緒にさまざまな工夫を考えましたが、大事なこだわりはしっかり実現しているので、妥協したという感覚はありません。

壁式構造とメリハリのある空間
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——当初は想定していなかった「リノベーション」を経験されて、いかがでしたか?

Nさん 自分でリノベーションをすれば、とても暮らしやすく、まるごと満足できる家になるということを知りました。賃貸ではなかなか良い家が見つからず、とても苦労していたから、こんな方法があったのかと目から鱗です。家を買うのは大変なことだと考えていましたが、実際に体験してみるとそれほど重く考えなくてもいいのかなと。一生ものと考えると何も決められないので、将来的には賃貸や売却という選択肢もあるという前提で、気楽に考えてリノベーションに向き合えたのが良かったのだと思います。

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——ご自身の体験から、リノベーションをスムーズに進めるコツなどを教えてください。

Nさん 直観やインスピレーションを大事にして、迷ったら聞いたり、周囲の人に助けてもらったりすること。心地よく暮らすためにリノベーションをするという目的を忘れないように、楽しんでやることも大切かなと思います。私の場合、下調べなども何もしていなかったのですが、分からないなりに、何が好きで何が嫌かなど、最初に自分の希望をできるだけ具体的にお伝えするようにしました。ちょっとしたキーワードなどもお伝えしておくことで、飯田さんや勝又さんをはじめとしたプロフェッショナルな方々が、かけらをていねいに拾い集め、上手くまとめてくれたと感じています。

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文:村田保子/撮影:古末拓也
取材・撮影:2019年4月
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