変形間取りが魅力に変わる、形状を楽しむアイデアリノベ
- マンション
- 所在地:
- 東京都世田谷区
- 居住者構成:
- 3人
- 専有面積:
- 68.34㎡
- 間取り:
- 1LDK
- 既存建物竣工年:
- 2002年
- リノベーション竣工年:
- 2025年

玄関を入ると通路沿いにオープンな洗面があり、ルーフバルコニーと一体感のある21.2帖のLDKが広がる。10.6帖の寝室は、将来的に2つの個室に分けることも想定している。寝室とLDKを隔てる壁は収納を兼ねており、アーチ型の間口が空間のアクセントになっている。LDKと寝室の一角には夫と妻それぞれのワークスペースが設けられている。
IT企業に勤める30代のOさん夫婦と2歳の長男が暮らすのは、築23年、約68㎡の中古マンションをフルリノベーションした住まい。長男の誕生とリモートワークの定着をきっかけに、斜めの壁と広いルーフバルコニーが特徴の個性的な物件と出会い、その魅力を存分に引き出すリノベーションを実現しました。設計を担当したフーニオデザインの前野慧さんを交えて、Oさん夫婦の住まいづくりについてお話を聞きました。

斜めの壁と広々ルーフバルコニー。
他にはない形に惹かれた住まい
――住宅を購入しようと思ったきっかけとこの物件を選んだ理由を教えてください。
妻 以前は約50㎡の賃貸マンションに住んでいたのですが、子どもが生まれたことで手狭に感じるようになり、購入することにしました。コロナ禍でリモートワークが定着して、2人のワークスペースが必要になったことも大きかったです。

夫 この物件は斜めに壁が走っており、平行四辺形のような個性的な形状が気に入りました。オーソドックスなリノベーションではなく、面白いことができそうという期待がありました。広々としたルーフバルコニーも大きな決め手になりましたね。周囲に高い建物がなく、景色が開けていることもあり、空間が広く感じられるところもよかったです。
――リビタのリノサポでリノベーションをすることにした経緯を教えてください。
妻 物件を探しているときに、リビタが手掛けたリノベーション済みマンションを見学しました。仕上げのデザインや素材の組み合わせ方が好みで、シンプルながら見せたくない部分はしっかり隠すなど、ディテールが丁寧につくられているところに惹かれて、リノベーションをするならリビタにお願いしたいと思いました。この物件は自分たちで見つけたものですが、購入する前にリビタに相談して、コンサルタントの山田笑子さんに一緒に見てもらい、おおまかな間取りやゾーニングなども提案してもらうことができ、思い描いているリノベができそうだと確認できたことも、とても心強かったです。

壁の角度に合わせてLDKを配置。
ベンチとデッキで内外をつなぐ
――ここからは、設計を担当したフーニオデザインの前野慧さんも交えてお話をお聞きします。リノベーションの設計ではどのようなことを希望されましたか?
夫 物件の個性的な形状を活かしたいというのが一番の希望だったのですが、形状が複雑だからこその難しさもありました。窓の位置や柱・梁の出っ張りなど、フラットでない面が多く、それらを美しく納めたいという気持ちも強かったです。具体的なリクエストとしては、妻と同じ会社に勤めていて、2人ともリモート会議の時間が多いため、それぞれのワークスペースをつくって欲しいとお伝えしました。
妻 リモート会議でハウリングすると困るので、ワークスペースはデスクを並べるのではなく、壁で仕切るか、物理的に離れた場所につくりたいと考えていました。でも、それぞれ個室にするのではなく、できるだけ連続した空間を広く使いたいとも思っていました。
――ルーフバルコニーに面した広々としたLDKと寝室というシンプルなプランで、ワークスペースはLDKと寝室の一角にそれぞれ設けられています。このプランはどのように決めていったのですか?
夫 斜めの壁に沿ってルーフバルコニーとLDKを一体的につくるこのプランは、私たちの想像を超えたものでした。どんな住まいになるのか期待感が大きく、妻とも意見が一致して即決しました。予算的には最もハードルが高かったのですが、プランを決める際に、リビタの山田さんからコスト調整について具体的なアドバイスをもらい、現実的に検討することができました。
前野 この物件は窓が多く、長辺の斜めの壁が広いルーフバルコニーと接していることが大きな特徴です。それをできるだけ活かすには、壁の角度に合わせて最大限の広さでLDKを配置することだと考えました。一般的な掃き出し窓ではなく、窓枠の下部が高めの位置にあるため、このレベルに合わせてベンチを設けて、その上に屋根のように低めの天井をつくることで、梁や柱などノイズとなる要素も吸収することができます。ルーフバルコニー側にもデッキを設けることで、LDKと屋外の一体感をより感じられるようになったと思います。

――ご夫婦のワークスペースはどのように使い分けていますか?
妻 LDKの一角は夫、寝室の一角は私のワークスペースです。オープンな空間で距離間を保ちながら快適に仕事ができています。個室にすると圧迫感が出るため、このスタイルで正解でした。今のライフスタイルに合わせ個室は1つにして、将来的に必要になったら壁をつくるなどして個室を増やせるというのも、リモートワーク中に広い空間で仕事ができるのでよかったと感じています。
ホテルライクで上質な仕上げに。
曲線を取り入れた居心地のよい空間
――LDKと寝室を仕切る壁はクローゼットにもなっているのですね。
前野 このプランは空間を広く使えるメリットがありますが、収納が少なくなってしまうことが懸念点でした。外に面している壁のほとんどに窓があるので、壁に面して収納をつくることが難しく、間仕切り壁に奥行きを持たせ、クローゼットを組み込むことで収納量を確保しました。

――寝室の間口がアーチになっているのも印象的です。
妻 奥行きがある分、アーチが意匠として映えています。私はこのアーチの間口がとてもお気に入りです。
――ニッチや間口のアーチに加え、柱なども随所にアールのデザインが採用されていますね。
妻 デザインのテイストとしては、ホテルのラウンジのような明るくて居心地のよい空間が希望で、過度な無機質さや温かみが出ないようにしたいとお願いしました。一方で暮らしの場として安心感やリラックス感は欲しかったので、曲線を取り入れてシャープになりすぎないように仕上がるといいなと考えました。

――LDKのリノリウムの床や珪藻土の壁・天井など、仕上げの素材はどのように決めましたか?
前野 もともとお持ちの家具を引き続き使う前提だったので、お聞きしていたリクエストと家具のデザインに合わせて、素材のサンプル候補を提案しました。プランが早く決まったことで、素材の選定やディテールに時間をかけることができ、Oさん夫妻の好みを反映した仕上がりになったと感じています。

妻 前野さんが私たちのこだわりを尊重して、細かいところまでサンプルの候補を出して相談してくれたことが、ありがたかったです。キッチンの素材を決めるときは「視界に入る場所は3種類まで」など、設計者目線の的確な助言もいただき、納得感をもって素材を選ぶことができました。

――通路にあるオープンな洗面は、他の場所とは異なる雰囲気ですね。
妻 1カ所は雰囲気を変えて、特別な場所にしたいと思っていました。東欧などの民族的なデザインを手本に、サーモンピンクの珪藻土やテラコッタを採用しました。塗料を工夫することで耐水性も確保し、理想通りの空間に仕上がりました。

――住み始めてから手を加えたことや、今後やってみたいことなどはありますか?
夫 入居後、ルーフバルコニーにDIYで置き型のタイルを敷きました。ルーフバルコニーは使っていないときも、視界に入るだけで広さを感じるのですが、ブラウン系のタイルを敷いたことで、その効果がより強調されたと感じます。ハンモックを置いたり、タープを設置したり、少しずつ居場所として整えているところです。テーブルセットも注文していて「外で朝ご飯を食べたいね」と家族で話しています。
――リノベーションをしてみて感じたことなどを教えてください。
妻 初めてのことで不安もありましたが、リビタの山田さんが随所で、暮らし方や安全性、将来的なメンテナンス、間取りの変更などについて一緒に考えてくれたことで、安心して進めることができました。デザイン性と機能性の両面でサポートしていただき、リビタにお願いしてよかったと感じています。
