菅野有希⼦さんインタビューVol.1食卓から彩る暮らし|住まいのヒント

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暮らし再発見マガジン のくらし by ReBITA
住まいのヒント

菅野有希⼦さんインタビューVol.1
食卓から彩る暮らし

目 次
  1. 1普段の食卓を変えるための3つのポイント
  2. 2食器を作る側に立って、器を見る解像度が上がった
  3. 3ハレの日に取り入れたい立体的な食卓
  4. 4器の新しい輝かせ方を考える。「食器を収納に使ってもいい」

リノベーションした住まいで暮らすテーブルコーディネーターの菅野有希⼦さん。2017年には、自宅リノベーションに込めた思いと暮らしぶりを語ってくれました。(お宅拝見記事はこちら)
今は、新型コロナウイルスの出現によって多くの人が住まいで過ごす時間が増え、食卓に注目が集まっているのを感じているそうです。今回は2回にわたって、菅野さん流の食卓アップデートとエシカルのくらしにフォーカスします。1回目は、菅野さんがおすすめする普段の食卓・ハレの日の食卓をこなれた雰囲気にしてくれるテーブルコーディネートHOW TOを、2回目は菅野さんが最近意識して暮らし方に取り入れているという『エシカルのくらし』について話を聞きます。

普段の食卓を変えるための3つのポイント

— コロナ禍で暮らし方が変わりました。テーブルコーディネートを仕事にする菅野さんは、どんな変化を感じていますか?

コロナ前よりずっと住まいの中の過ごし方に注目が集まっているのを感じます。おうち時間を楽しくする・充実させる趣旨の取材のご依頼も増えました。リモートワークが増え自宅で仕事をする方が増えて、住まいの中でのオンとオフの切り替えを求めているのを感じます。同じ部屋でも仕事をしている時間とリラックスする時間を分けられるインテリアにしたり、生活雑貨を取り入れて気持ちを切り替えたりして、おうち時間を楽しもう・乗り越えようとしているのだと思います。

食卓で言うと、例えば食器1つ買うのもおざなりにせず、オン時間に使うのかリラックスタイムに使うのかイメージしながら選ぶと気持ちの切り替えに役立ちます。新しいお気に入りのマグカップがあれば、気分転換にも良い時間になるはずです。

— 普段の食卓を充実させるために、どんな器選びをしたらいいですか?

ポイントは3つあります。まずは基本になる地味カラーの器を取り入れる。私は”スーツの色”と言うのですが、白・黒・紺・グレーとベーシックな色の食器を選ぶと良いです。といっても、結局白ばかり買ってしまうという方も多いのですが、黒・紺やグレーの食器は使いやすいので検討してみてください。

『きほんのうつわ』中央奥:こなれ小鉢(白・灰)、左下:小皿(灰)、中央手前:小皿(生成)、右:大皿(白・黒)

”スーツの色”だけでは食卓が地味になるので、次におすすめしたいのが食器の素材感を変えることです。陶磁器だけでなく、ガラスや木の器を入れると食卓に変化がつきます。あまり深く考えず、素材を変えて並べてみるとこなれ感が出てきます。

その次に、食卓がしまらないと感じる時のアクセントとして柄物の食器を入れてあげる。「柄物の食器は難しそう」と言われることが多いのですが、洋食器なら花柄、和食器なら染付の藍色は使いやすいです。赤・緑など色がたくさん入っている絵付けの皿や、複雑な柄・大胆な柄が入っている食器は取り入れづらい場合もあるので、まずはブルーの単色で柄物を選ぶと、初めて使う方も取り入れやすいと思います。最終的には自分が好きな柄を選べばいいのですが、ある程度自分で食器を使いこなせるようになってから好みを突き詰めていくといいと思います。

中央奥:fresco kasumi bowl辻野剛(ブラウングリーン・グレー) 左:東京の蚤の市で購入したフランスのアンティーク洋食器
右:CASICAで購入した骨董の和食器

一目惚れで買ったお皿がたくさんあって、並べたら食卓ががちゃがちゃしていたり、派手なお皿が一点あって浮いてしまうことはあります。それはそれで楽しいのですが、まとまりのない食卓に悩んでいたり、これから食器を揃えるという方は3つのポイントを参考にするといいでしょう。

食器を作る側に立って、器を見る解像度が上がった

— ”スーツの色の器”で登場したのは、菅野さんも企画に参加された『きほんのうつわ』ですね。

岐阜県美濃加茂市にあるIDENTITYという会社がライフスタイルメディア『cocorone』を運営していて、その中で「理想の食器を作ろう」と企画したところから『きほんのうつわ』プロジェクトが立ち上がりました。私はプロダクトデザインを勉強してきたわけではないので、料理の撮影やスタイリングの仕事の中で様々な食器に触れてきた知見をもって「こういう食器があったらいいな」という意見を出しています。「こんな食器は料理が合わせやすそう」「この形は使い回しができる」など、経験で培ってきた感覚を伝えています。

ー『きほんのうつわ』プロジェクトの経験を経て、菅野さんの中で器に対する意識は変わりましたか? 

私は食器を使っていろいろ仕事をしていますが、作るほうは全くの素人だったんです。今回のプロジェクトで、窯元に話を聞いたり、実際に作っている現場を見て、どうやって食器が作られているのかを知ったら食器のことがもっと好きになりました。食器に対して興味が深まったというか……食器を見る解像度が上がった感覚です。

先日、石川県小松市にある九谷焼の窯元を訪れました。以前から九谷焼の食器は使っていましたが、単純に柄や色が美しいと思って選んでいたんです。窯元を訪れて、職人が時間をかけて丁寧に絵付けする結果として生まれる深みを感じたり、北陸独特の深みのある暗さに九谷焼の極彩色の絵柄が映えることなどを実体験しました。ただ可愛い・使いやすいではなく、歴史的背景や職人の技のすごさを思い浮かべて、手に取る食器のありがたみを感じるようになりました。

ハレの日に取り入れたい立体的な食卓

— 誕生日やホームパーティーなど、普段の食卓をアップグレードしたいときのテーブルコーディネートを教えてください。

まず、だいたいの食器は丸いですよね。食卓にたくさんの食器が並んだ時に丸・丸・丸って形が単調になりがちなので、変わった形のものを食卓に入れるとリズムが生まれて良いです。今回はカッティングボードをおすすめします。木の形は有機的で同じものは一つもないので、食卓に入ると立体感が出ます。ハムやパン、果物をのせてもいい。他の食器と組み合わせて、ボード上にオリーブを入れた小鉢を置いて、ボードにはハムをのせたりすると綺麗に・可愛くなると思います。

カッティングボード Arte Legno

人が多く集まるときはオーバルの食器がおすすめです。取り皿になるのはシンプルな丸い皿が多いので、大きな皿は少し違うフォルムを選んでみる。オーバルはみんなでシェアする時に便利だし、料理をどさっと盛っても決まりやすいです。

左:サタルニア チボリ(取り皿として使用) 右:アメリカのヴィンテージオーバル皿

次に、豆皿で派手な柄にチャレンジするのはどうでしょうか。醤油や塩を出したい時に、取り皿と別でもう一皿あるといい時ってありますよね? そんな時に派手な柄の豆皿を選んでみる。小さなサイズだからこそ普段は躊躇する絵柄やカラフルなものを選んでも食卓のアクセントになります。豆皿は冒険しやすい価格のものが多いので、思いっきり自分の好みで選んでみてください。

中央奥・左:青木良太の豆皿 中央手前・右:ポルトガル製の小鉢

最後に、大きくて深さのある器や脚付きなど高さのある食器を取り入れてみてください。日常使いはしづらいかもしれませんが、平べったいお皿ばかりで高さがないと食卓がのっぺりした印象になります。見栄えの良い鍋やフライパンなどを持ってきて主役にするのもおすすめです。食卓を見渡して、低い・高い・低いと立体的に見えるようにするとハレの雰囲気が出てくることを覚えておくといいです。

手前:ストウブ ラウンド(ボルドー) 右:木製ケーキスタンドChabatreeアカシア

器の新しい輝かせ方を考える。「食器を収納に使ってもいい」

— 菅野さんは様々な器・食器ブランドを扱っています。どの器を扱う時も大切にしている考え方はありますか?

私自身はあまりセンスがないと思っているんです。美しさというものに対して優れたセンスを持っているとは思っていなくて、それよりも生活をしている人がどんなことを求めているかを気にしています。例えば、食器の写真としてはAだけ出すほうが綺麗だけれど、写真としての完成度だけにこだわらず生活する人への伝わりやすさを優先したBも出してみる。使う人・買う人の気持ちに寄り添えるのがA・B両方を出すことならそちらを優先します。おそらく、クリエイティブなものや写真が好きで美しいものにこだわるなら、ダサく見えるものを出すのは嫌だと思うんです。でも私は、実際にそれを買って使う人に器の特性や魅力が伝わることを優先したいタイプです。私自身も実際に生活をしながらなるべくたくさん食器を使ってみて、実際にどう感じるかを大事にしています。

ー生活者としての目線を大切にしているのですね。そういう生活態度から見えてきたのはどんな景色なのでしょうか?

例えば、長く使っている食器に食べ物の色が滲みでてきたり、擦り切れて形が変わるなど食器自体が衰えてきても「別にいいじゃん」と思うようになりました。変化したからといって捨ててしまうのは悲しいです。作り手さんと話してからは、少し形がいびつなだけでB品として扱われるのはもったいないと感じるようになりました。使い続けた結果として変わったものは「味が出てきた」と考えて、廃棄される食器が減るといいなと思います。

テーブルコーディネートの仕事は新しいものを求めるだけではなく、同じ食器をどんな風に使うかということも含まれています。同じ食器でも、自分なりに新しい面を見つけていくのも良いと思います。例えば、私は食器を収納に使っています。「器とは何かを入れるもの」と考えれば、何を入れてもいいわけです。お皿にアクセサリーを入れたり、大きなボウルに整理する前の領収書をドバッと入れたり(笑)。食品をのせるものにアクセサリーを入れるのは汚いと思う方もいるかもしれませんが、私は「洗えばいいじゃん」と思う。料理で使うのには飽きちゃったという食器は、次の輝かせ方を考えるようにしてみるのはいかがでしょうか。

<後編>はこちら

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