ホームレス小谷さん・もんちゃんさんインタビュー
人とのつながりがお金や暮らしにつながる
【写真左】小谷真理(こたに・まこと)
1983年兵庫県生まれ。2002年にNSC(吉本総合芸能学院)に入学し、大阪を拠点にお笑い芸人として活動。2013年のコンビ解散を機にピン芸人として上京。キングコング・西野亮廣氏の家に居候するも、家賃滞納で家を追い出されてホームレスになり、SNSを駆使して路上や駅前で寝泊まりした時の出来事を発信し始める。「地球が家!世界の人が家族!」を掲げ、ネットショップ作成サービスBASEにて『(株)住所不定』を開設、自分の1日を50円で売る何でも屋さんをスタート。2013年10月末、Twitterのフォロワーだったもんちゃんと結婚。何でも屋さんを続ける傍ら、キングコング・西野亮廣氏、SHOWROOM株式会社代表・前田裕二氏が共同で立ち上げた、住所非公開の会員制スナック「キャンディ・五反田店」(https://camp-fire.jp/projects/view/37553)にて、夫妻でママを務める。
Twitter:@kotanimakoto
【写真右】もんちゃん
ホームレス小谷こと、小谷真理の妻。小谷氏のフォロワーの1人であったが、50円で仕事依頼したことがきっかけで、交際0日で結婚。現在は夫・小谷真理と共に「キャンディ・五反田店」にてママを務める。
Twitter:@_thank_u___
小谷さんは元お笑い芸人。現在は家を持たない「ホームレス」にもかかわらず、お金や食べ物にも困らず、毎日幸せに暮らしているといいます。さらにホームレスになってから結婚をし、昨年は毎月のように海外へ。なぜそのような生活が送れるのでしょうか——。交際0日で小谷さんと結婚し、いまは一緒に会員制スナックでママを務める妻のもんちゃんさんとの暮らし方、家やお金を持たなくても困らない理由について夫妻に伺いました。
1日50円で自分を売って「信用持ち」に
——ホームレスになり、ネットショップ作成サービス「BASE」で、自分の1日を50円で売る何でも屋さんを始められましたが、そのきっかけは?
小谷さん:キングコングの西野亮廣さんに勧められたのがきっかけです。50円というのも、「BASE」で一番安い金額設定だったからで、特別な意味はありません(笑)
——1日50円ですと、アルバイトをしたほうが稼げますよね?
小谷さん:今までのアルバイトはクビになってばかりで、新しい仕事はことごとく面接に受からなくて……。ちゃんとした仕事ができなかったという事情があります。
——1日50円のお仕事で、具体的にはどんな依頼を受けてきたのですか?
小谷さん:草むしりをしたり行列に並んだり……ヘアヌードのモデルもやりましたね。今もそうですが、基本的にNGなしで何でもやります。困っている人を見ると助けたくなるので、自分で言うのも変ですが、それらの仕事は今までのアルバイトよりも自分なりに真面目にやっていたと思います。そこで僕に依頼してくれた人が、そのままご飯をごちそうしてくれたり、泊まらせてくれたりして。
——キングコングの西野さんが小谷さんを称する「信用持ち」や「恩の力」によるものなのでしょうか。
小谷さん:正直に言うとわからないです。何も考えずにやってきた結果がそうなっただけです。
仕事を依頼した日から3日目の夜、結婚の話が出て1時間後に入籍
——もんちゃんさんとは、この50円でのお仕事依頼を通してご結婚されたのですよね?
もんちゃんさん:お仕事を依頼した日、西野さんと親交のある方と小谷が飲む約束をしていると聞いて、お金を持っていなかった小谷の分も交通費を支払って付いていくことにしました。もともと西野さんのファンだったので。そのまま同じイベントに参加したりして、名古屋、神戸、東京と結局3日間くらい一緒にいたんです。
小谷さん:だから僕は西野さんのファンのヒモのようなものです(笑)
もんちゃんさん:それで3日目の夜、私たちと知人ふたりの4人で飲んでいるときに、話の流れで結婚したら面白いかなって、勢いで1時間後に入籍しちゃいました。
——結婚となると、小谷さんの経済状況について心配にならなかったですか?
もんちゃんさん:暮らし方が異なっていましたし、結婚しても一緒に住む必要性もないと思っていたので心配はありませんでした。周りに面白い人たちがたくさんいたので、何かあったときは周りが何とかしてくれるかなとも思いました。
——それで小谷さんはホームレスで1日50円のお仕事、もんちゃんさんが名古屋でフリーター生活を、それぞれ送られていたのですね。
もんちゃんさん:私はお金よりも「時間持ち」になりたくて、ずっとフリーターをしていたんです。自分の時間を自由に使うほうが大事なので。結婚するとお金の不安は誰しもが感じると思うんです。子どもは育てられるのかな、家を買うなら住宅ローンは支払っていけるのかなとか。でも私の場合はそのお金の不安以上に、時間がなくなるほうが嫌だったので、小谷の経済状況についてはあまり気にならなかったですね。
小谷さん:僕もそうです。僕が言いたかったことを全部言ってくれました!(笑)。
SNS時代だからこその対面することの重要性
——浅草花やしきでの結婚式費用を集めたり、自費出版した自叙伝『笑うホームレス』の費用を集めたりと、何度もクラウドファンディングを成功させていますが、成功させるコツはあるのでしょうか?
小谷さん:僕たちはキングコングの西野さんの影響が大きいので、クラウドファンディングにおいても西野さんに勧められて始めました。結果的にサポートしてくださる人たちは、1日50円の仕事で出会った方々や困っているなと思って僕がお手伝いさせてもらった方々なんです。
——「信用持ち」や「恩の力」につながっているのですね。
小谷さん:そうですね。1日50円の仕事で対面を繰り返してきたことが、クラウドファンディングの成功にもつながったのでしょうね。
もんちゃん:私もそう思います。何の関係性もない人をサポートしたいとは、なかなか思えないものですが、小谷に会ったことがある人や1日50円で仕事を依頼したことがある人は、ある意味その方々の生活の一部に小谷がいるわけですから、支援してあげようと考えるのではないでしょうか。私も過去に一度、1日50円で仕事をしてみたのですが3日でギブアップしました。精神的におかしくなっちゃって……。だからこの仕事を続けている小谷はすごいと思いますね。
小谷さん:もんちゃんは真面目に頑張り過ぎるのかもなあ。1日50円なんだから、適当に手を抜きながらやらんと(笑)。
もんちゃん:それができるからすごいんだよ。
小谷さん:これも結果論ですが、SNSなどで誰ともつながれる時代だからこそ、実は僕のように対面することが大事で、その繰り返しがクラウドファンディングの成功にも結びついているのでしょうね。
家がなくても人との関係性があればそこが家になる
小谷さん:僕の住まいは地球です(笑)。家がなくて困るという感じもないですね。たとえばSNSで今日泊まらせて欲しいと発信すれば、数十件のリアクションがありますし、泊めてくれる家が全国にあるので、正直固定の住まいを持とうという考えがないです。だから、みんな家族です。
——生活する上で、小谷さんにとっての家や住まいとは?
小谷さん:クラウドファンディングにも似ているのですが、人とのつながりや関係性があれば、それが家にもなりますし、生活や暮らしにもつながるのではないでしょうか。
「お金はコーヒーと一緒」使いたいときにあればいい
——お金に関してはいかがでしょうか?
小谷さん:これも家と同じで、あまりお金を持っていたいという気持ちがないんです。今は1日50円の仕事をしながら、「キャンディ・五反田店」という会員制スナックをもんちゃんと経営し、会社にしていますが、僕の役員報酬は1ヵ月50円です(笑)。お金って、もっとぐるぐる回ったほうが面白いと思うんです。
もんちゃんさん:クラウドファンディングなどで私たちにお金を使ってもらい、私たちにお金ができたときには寄付などにお金を使います。困っている人にお金を使えば、不思議と必要なときにお金がまわってくるんです。
——最後に、お二人の考えるお金との上手な付き合い方とは?
もんちゃんさん:皆さん、お金を特別扱いし過ぎだと思います。お金も一つのモノとして捉えて、もっと自然体で付き合うのがいいのではないでしょうか。小谷にとってお金はコーヒーみたいなものなんです。小谷がお金をくれと言うのは、コーヒーを飲みたいと言うのと一緒。コーヒーは飲んだらなくなるし、お金も使ったらなくなります。飲みたいときにコーヒーがあればいいように、小谷の中でお金は使いたいときにあれば良いものなんです。
小谷さん:お金は貯められるから邪魔だとも思います。お金だけが特別なモノだと意識せずに付き合えたら、僕のようにお金を持っていなくても幸せに生きていけると思いますよ。