普段の暮らしも快適にする、防災備蓄と収納の工夫|住まいのヒント

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暮らし再発見マガジン のくらし by ReBITA
住まいのヒント

普段の暮らしも快適にする、防災備蓄と収納の工夫

目 次
  1. 1防災備蓄は1カ所にまとめない。分散収納が備えになる
  2. 2普段も暮らしも便利に。収納を整理整頓する工夫
  3. 3普段使いするものと備蓄を兼ねるローリングストック
  4. 4防災ポーチや防災ボトルは、手軽にできる対策
  5. 5まとめ

さまざまな専門家にお話を聞いて、「リノベーション」や「住まい選びのコツ」をわかりやすく身につけるための「学ぶシリーズ」。地震や台風など、自然災害が多い日本で暮らす私たちにとって、欠かせないテーマである防災を取り上げます。前編に続き、防災と収納の専門家である熊田明美さんに、防災備蓄品の収納方法について教えていただきました。熊田さんがご自宅で実践している方法を参考に、災害時の安心と普段の暮らしの快適性を両立する防災備蓄を考えていきましょう。

防災備蓄は1カ所にまとめない。分散収納が備えになる

防災備蓄とは、災害時にライフラインが止まったり、物資の入手が困難になったりした場合でも生活できるように、水、食料品、日用品、衛生用品、医薬品などを備えておくことを指します。家族構成や子どもの年齢に応じて、必要なものをリストアップして1週間分程度を目安に備蓄しておくことが望ましいとされています。

まず、水は飲料用と調理用あわせて1人1日3リットル(農林水産省推奨)が目安になり、たとえば4人家族なら、1週間分として84 リットル。2リットルのペットボトル約42本分になります。日本の住宅事情を考慮すると、これを1カ所に収納することは難しく、玄関、廊下収納、リビング、居室などに分散して収納することをおすすめしています。

熊田さんの自宅の玄関。シュークローゼットの約3分の1を防災備蓄の収納として活用。長期保存水を中心に、食料品・衛生品などの備蓄品を収納。

分散収納は、地震で居室や収納のドアが開かなくなったときなど、備蓄している水などを取り出せなくなってしまうリスクも分散できます。戸建ての場合、1階と2階に収納することで、浸水時や半壊時にすべての備蓄が使えない状況を避けられます。自家用車があれば後部やトランクなども分散備蓄の場所として活用できますね。
ウォーターサーバーは、普段の飲料水と防災備蓄を兼ねるものとして優秀です。サーバー用にストックしているボトルは備蓄分として数に含め在庫管理をします。停電時にも使えるウォーターサーバーか事前に確認することをおすすめします。

食料品の備蓄は、レトルトや長期保存が可能なパンやアルファ化米が中心になります。インスタントスープやフリーズドライの味噌汁など、お湯でつくれる温かいもの、お菓子なども在宅避難時にあると嬉しいものです。食料の防災備蓄品は家族の好物を揃えておくと、避難時の気持ちの支えになります。新しいものを取り入れる際は、最初に家族で試食をして、自分たちの好みに合ったものを選ぶようにしましょう。
食料品はキッチンに収納することが多いですが、家族が長く時間を過ごす場所に分散して収納しておくと安心です。例えばリビングや寝室に水と一緒にゼリー飲料などを備蓄しておくと、部屋に閉じ込められたときに水分と栄養を摂取できます。ゼリー飲料はコンパクトで常温保存が可能。場所を取らないため、防災備蓄におすすめです。

リビングの防災備蓄。長期保存水、ゼリー飲料、ナッツ、野菜ジューズなどを収納。
リビングの防災備蓄。長期保存水、ゼリー飲料、ナッツ、野菜ジューズなどを収納。

大地震などの災害が起こるときに、家の中のどこにいるか予測することはできません。しかし、家族構成や子どもの年齢によって、ある程度イメージをもっておくことは可能です。乳幼児がいて日中のほとんどの時間をリビングで過ごすなら、リビングの備蓄量を多めに。子ども部屋や書斎など、各居室で過ごす時間が長いなら、それぞれの部屋の備蓄を充実させましょう。

普段も暮らしも便利に。収納を整理整頓する工夫

防災備蓄品は、どこに何があるか、分かるようにしておかないと、使うときだけでなく、消費期限の管理も難しくなります。また、家族にも収納場所を共有しておくことが大切です。

細々したものの収納はボックスを活用。品目が分かるようにラベルを貼り、消費期限も分かりやすくメモしておく。

防災備蓄に限ったことでありませんが、レトルトなどの細々したものは、種類ごとにサイズが合ったボックスやカゴに立てて収納して、奥に入っているものも把握できるようにします。
また、ボックスやカゴには、品目を明記したラベルを貼ることをおすすめしています。ラベルを用意するのが面倒な場合は、マスキングテープにマジックで書いて、貼っておくだけでも十分です。

消費期限が分かりづらい缶詰は、消費期限を書いて貼っておくと見落としが少なくなる。

消費期限のある水や食料品は、ボックスに消費期限の日付を明記したラベルを貼っておくと、管理がしやすくなります。定期的に消費期限をチェックして、期限が過ぎる前に新しいものに入れ替えるのを忘れないようにしましょう。
階段下や納戸、押し入れ下段など奥行きのある収納は、出し入れが面倒になってしまうため、キャスター付き台車を使いその上に収納ボックスなどを置くようにします。収納場所のサイズに合わせて連結できるキャスター付き台車は、奥行きのある収納が格段に使いやすくなる便利なアイテム。収納に使いづらさを感じている方は、ぜひ一度試してみていただければと思います。

普段使いするものと備蓄を兼ねるローリングストック

キッチンの吊戸棚に並ぶ、おかゆ、味噌汁、スープ、焼き菓子のローリングストック。

飲料水の防災備蓄としてウォーターサーバーをご紹介しましたが、食料品や日用品もこれと似たような考え方として、ローリングストックという方法があります。ローリングストックとは、普段使いする食料品や日用品を少し多めに買っておき、古いものから消費して、消費した分を買い足し、常に一定の保管量(在庫量)を備蓄する方法です。
とくに食料品や飲料水は、長期保存が可能な防災備蓄専用品だけではなく、普段から食べたり飲んだりしているものを、ローリングストックとして防災備蓄に含めると、家族が収納場所を把握でき、経済的な負担も少なくなります。

注意点として、普通のストックと災害時のストックは分けて考える必要があります。災害時に食べたり使ったりしないものは、厳密に管理しなくてもそれほど困りませんが、災害時に必要なものとしてストックする場合は、消費期限切れを起こさないように、保管しておく在庫量を決めて、管理の方法を仕組み化することが重要です。消費期限が切れていて、災害時に食べられない使えないでは備蓄の意味がありません。

レトルトカレーのローリングストック。消費期限が見やすいように上下逆にして収納。品目のラベルの左にある黒いラベルが最低在庫量。

我が家の場合、品目のラベルの隣に、最低在庫量の数字を示した黒いラベルを貼って管理しています。また消費期限がパッケージの下に印字されているものは、上下を逆にして目に付きやすいようにして、消費期限が近いものが手前になるように収納。私が知らない間に家族が食べていることもあるので、月1回在庫量をチェックして、数が減っていれば買い足します。

ローリングストックは、普段の生活で使うものと防災備蓄を兼ねる便利な手法ですが、在庫数や消費期限を管理する手間がかかります。管理が不得意な方がローリングストックをしようとすると、ストレスになってしまうことも。適切に管理ができず災害時にあるはずの備蓄品の在庫が切れていたという事態にもなりかねません。
管理が面倒だと感じる場合は、長期保存が可能な防災備蓄専用品で揃えて、数年に一度入れ替えをしたほうが、手間がかからず安心できると思います。

熊田さんは飲料水の備蓄状況や消費期限を一覧表にして管理。自分が管理しやすい方法を見つけて仕組み化することが大事。

防災ポーチや防災ボトルは、手軽にできる対策

災害は家の中にいるときに起こるとは限りません。外出時に災害が起こることを想定して、防災ポーチや防災ボトルの準備をして、外出するときにバッグの中に入れておくことをおすすめします。

熊田さんがいつもバッグに入れている防災ボトルと防災ポーチ、携帯用ポンチョ。簡易ライトと笛はバッグにつけている。

防災ポーチの中身は、ウェットティッシュ、除菌シート、マスク、ティッシュ、常備薬、絆創膏、携帯用トイレなど、災害時にあると自分が安心できるものです。防災ボトルはプラスチックのドリンクボトルに、防災グッズを詰めたもので、水に強く、水筒としても使えるメリットがあります。また、携帯用のレインポンチョは、コンパクトで軽く、雨具や防寒着として災害時にとても役立ちます。簡易ライトと笛はキーホルダーのようにバッグにつけておくと安心ですね。

防災ポーチや防災ボトルは、災害時だけでなく、電車やエレベーターなどに閉じ込められたときにも役立ちます。バッグを自分の居室に置いておけば、部屋に閉じ込められたときにも使えます。
また、これらは100円ショップなどで入手でき、手軽に安価につくることができますので、防災の第一歩として備えをつくり、バッグに入れることから始めてみてもいいかもしれません。まず1つ対策を実践することが経験となり、住まいの整理整頓や防災備蓄へとステップを進めていくきっかけにもつながります。

熊田さんのご自宅のリビングには太陽光発電によるポータブル電源も。夏なら扇風機を一晩使える程度の電力を供給できる。

まとめ

不用品を処分して収納場所を確保し、どこに何があるか分かるように整理整頓することや、避難経路をふさがないように通路を空けておくことなどは、日常の暮らしの快適性にもつながります。また、ローリングストックは、料理をする時間が取れないことも多い、忙しい日々を支えてくれる習慣にもなりそうです。この機会に防災という視点で住まいの中や備蓄品を見直し、普段の生活も心地よく、災害時にも安全で落ち着いて過ごせる暮らしをつくってみませんか?

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