フェイバリット・ビュー 私のくらし #8 季節の手仕事|住まいのヒント

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住まいのヒント

フェイバリット・ビュー 私のくらし
#8 季節の手仕事

目 次
  1. 1季節と遊びながら
  2. 2暮らしの知恵を生きる
  3. 3ふたたび、梅酒から
  4. 4言葉よりも、景色が伝えるもの
  5. 5そして未来へつづく

気づいたら集めているもの。見かけると、ついつい手が出てしまうもの。
どんなに忙しくても、大事にしたい時間。自分らしくいるために、欠かせない瞬間。
そんな、日々を彩る「もの」やホットな「こと」がつくりだす、お気にいりの景色=favorite view。
くらしにフェイバリット・ビューをもたらす「もの」や「こと」を、くらしをリノベーションする、リビタの社員がご紹介します。

季節と遊びながら

今回、リビタ社員・室町がご紹介するのは「季節の手仕事」。

もともと農家を営んでいた祖父母の影響で、子どもの頃から親しみがあった季節の手仕事。
「そろそろ梅の実を収穫して梅酒をつくろう」「青柚子が大きくなってきたから柚子胡椒の準備をしよう」など、庭の果実によって生じる手仕事は、我が家の暮らしの風物詩です。

庭で果実が採れるというと驚かれることがありますが、実家周辺ではよくある風景。

田舎では珍しくない、広い敷地に、母屋、離れ、蔵、そして柿や栗、柚子、梅などの果実がなる樹木や草花が並ぶ庭。子どもの頃は庭や畑、田んぼの側が遊び場で、公園で遊んだ記憶はほとんどありません。

 

祖母と一緒にノビルやヨモギなど野草を摘んで食卓に並べたり、畑になるものを見て「今は空豆が採れるんだ」と旬を知ったり、子どもなりに四季を感じながら大きくなりました。

当たり前に見ていた景色が特別だったと気づいたのは、大人になってから。

東京育ちの友人から「入山料を払って筍掘りにいく」と聞いて、実家の裏山でいくらでも筍が採れるのに、わざわざお金を払うの?と驚いたんです。

暮らしの知恵を生きる

生まれたときから身近だった季節の手仕事を、初めて別の角度から意識したのは高校時代。

読書が好きで、『西の魔女が死んだ』などの小説や、西洋の魔女に関する書籍、ケルト民族の伝承などを読むうち、季節の移ろいを敏感にキャッチして、自然と共存しながら暮らす魔女の存在が気になって。

魔女の考え方や生活の知恵って、農耕とともにある日本の暮らしや習わしと共通するものがあるんです。イギリスの魔女がハーブを煎じるのは、祖母がキンカンやカリンをシロップにして、風邪のときに飲ませてくれるのと似ている。

どちらも、身の回りにある自然を取り入れ、地に足をつけた暮らしを営んでいる。

季節とともに生活する祖父母の背中を見てきた自分だから、魔女に魅かれるんだ、と気づきました。

ふたたび、梅酒から

課外活動が増え、家にいる時間が減った高校時代。大学進学で上京した後は、課題に追われ、コンビニ弁当の生活。社会人になると目が回るほど忙しく、自然とは切り離された暮らしで、季節の手仕事から離れていた時期もあります。

実家では当たり前にこなしていた季節行事にも参加できず、気づけば時が過ぎ去っていました。

主体的に暮らしている感覚が持てず、体調を崩しやすくなったとき、ふと「子どもの頃って元気だったな」と思い出したんです。あの元気は、季節とともにある暮らしによって作られていたのかもしれない、と。

そこで、まずは梅酒作りから再開しました。

同じ梅仕事でも、梅干し作りは、塩漬け・天日干しと作業工程も多く、フルタイムの会社員にはハードルが高め。その点、梅酒ならば、梅の実を強いお酒にドボンと漬けておけばなんとかなります。

休みが1日あればできるので、仕事をしながら取り入れるのにはちょうど良い。できることから少しずつ、祖父母と暮らしていた頃の感覚へと回帰していきました。

言葉よりも、景色が伝えるもの

祖父母は、季節とともに暮らすことが身体に刻み込まれている人たち。四季折々の自然を受け入れ生活する姿を、子どもの頃から当たり前の景色として見てきました。

毎日、毎年、季節に寄り添って暮らしを重ねる家族の景色。「こう暮らしなさい」と言われた記憶はないけれど、ずっと見てきたから身体に染み付いているんでしょうね。

調子が悪くなったら「蜂蜜を摂ろう」「漢方を飲んでおこう」など身近なもので対処したり、スーパーで買い物をするときは旬のものを意識したり。ベランダにコンポストを置いて、その土で野菜を育てたり。

日常の小さな瞬間に、気づけば祖父母の背中を追っている自分がいます。

使っている果実も自然任せだから、出来が悪くてもかまわないし、家族へ参加の無理強いもしません。子どもは、裏山で木の実を拾ったり、お手伝いと称して一緒に作業をしたり、遊びの延長で楽しんでいますね。

そして未来へつづく

季節の手仕事をしていると、「3ヶ月後には、梅酒が飲み頃」とか「もうすぐ青柚子が採れる」とか、少し先の未来に楽しみが増えます。忙しくもあるけれど追われる感じはなくて、むしろ心地良い。

季節の変化を感じることは、暮らしにメリハリをつくることにもつながります。流されるのではなく、自分軸で暮らす感覚がほしい人にこそオススメです。

今は実家から少し離れたところに住んでいますが、ゆくゆくは実家があるこの場所で暮らそうと計画中。
季節の移ろいを大切にしながら、会社で任されている仕事もしっかりとやって暮らす。季節とともにある暮らしと、現代の社会人としての生活バランスを整えて、心地良いハイブリッド具合を見つけるのが目標ですね。

西洋の魔女や祖父母のように、季節を感じる景色とともに地に足をつけて暮らしていきたい。まだまだですが、少しずつ、修行を積んでいきたいと思います。

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