最小限の間仕切りとたっぷりの余白。
家族の暮らしとともに育つ住まい
- 戸建て
- 所在地:
- 神奈川県川崎市
- 居住者構成:
- 4人
- 建物面積:
- (延床)120.31㎡|土地面積:225.27㎡
- 間取り:
- 2LDK(戸建てリノベ)
- 既存建物竣工年:
- 1972年
- リノベーション竣工年:
- 2018年

くらし、生活をリノベーションするリビタ。豊かな暮らしを追求した個性的な住まいを手掛けるリビタの社員は、どんな住まいでどんな暮らしを送っているのでしょうか。不動産、建築、住まいづくりのプロであるリビタの社員の住まいを訪ね、住まい選びのプロセスや住まいづくりに役立つ情報などを紐解いてお届けします。
今回は築46年の戸建て住宅をフルリノベーションしたさんYさんが登場。妻と2人の娘と暮らす自邸を訪ねました。
リノベーション時は戸建事業部に在籍。その後営業企画部を経て、現在は賃貸事業部で運営・マネジメントを担当。
【以前の住まい】
学芸大学にある中古マンションを購入して、フルリノベーションして住んでいた。間取りは1LDK、面積は約70㎡。子どもが小学校に進学する前に住み替えを検討。
【現在の住まい】
敷地、室内ともに余白が多く、住みなが暮らしをつくっていくことを実践。犬との暮らしを楽しんでいる。移動は車が多い。

妥協できる部分を明確にして、
広さと環境を優先した住まい選び
――以前は都内のマンションをリノベーションして暮らしていたとのこと。住み替えにあたり、2回目のリノベーションは戸建てを選んだ理由を教えてください。
Yさん 子どもが成長してきて、以前の住まいでは手狭になってきたため、住み替えを考え始めました。子どもたちにのびのび育ってほしいと考え、都心から少し離れてもいいから、周辺環境が豊かで広々としたゆとりある住まいを求めて、都内からエリアを広げて物件を探しました。広い住まいを求めるなら、マンションより戸建ての方が、選択肢は多くなります。また当時、戸建事業部に所属して、「HOWS Renovation」というリビタの戸建てリノベーションを扱う仕事をしていたため、自分でも戸建てリノベを経験して住んでみたくなったというのもモチベーションの1つでした。

――この物件は、最寄り駅から徒歩20分ほどのエリアにありますが、周辺は落ち着いた住宅街で緑も豊かで、子育てによい環境ですね。このエリアや物件を選んだ決め手、気に入ったポイントなどはどのあたりですか?
Yさん あまり郊外すぎると通勤が大変になるので、都心から1時間くらいのエリアで選ぶとなると、駅に近い物件は価格的に高額となる。物件を選ぶときにどこを妥協できるかを決めることはとても大切です。私たち家族は駅からの距離を妥協して、その分敷地や面積が広い住まいを求めました。すべてが平均点の「優等生」のような家ではなく「何か目に留まる特徴を持つ家を選ぶ」という考え方で、物件を探していました。この家は敷地面積が約225平米で、不整形の変形地の真ん中に建物があり、四方の余白が庭になっています。今では考えられないようなゆとりのある区画割りで、南向きかつ間口も広く、ゆとりのある大らかな佇まいは、他にはない尖った魅力だったと思います。駅からの距離を妥協したことで、面積あたりのコストは圧倒的に低く抑えることができました。この条件に魅力を感じる人は自分以外にもいるはずで、将来的な資産価値としても変わらないのではないかと感じています。

――南向きでこれだけ間口が広い敷地は、探してもなかなか出てこないでしょうね。
Yさん この立地を活かして、南側に大きな窓を設けたことで、室内はとても明るく、冬も日射取得率が高く暖かい住まいをつくることができたことも、とてもよかったと感じています。
空間の使い方を決めず、可変性を考慮。
本当に必要なものだけをつくる
――敷地に余白とゆとりがあることも特徴ですが、室内も大きな吹き抜けがあり、間仕切りがなく、大きなワンルームのような空間になっていますね。
Yさん 余白を残して、住みながら手を加えるというのは「HOWS Renovation」のコンセプトでもあるのですが、この住まいでも最初に個室をつくったり、使い方を決めたりすることは極力避け、可変性を考慮して設計しています。大きな箱のような空間をつくって、子どもたちの成長や家族の暮らし方に合わせて、後からつくっていけばいいという考え方ですね。リノベ-ションをするとなると、あれも、これもと詰め込みたくなるのですが、最初から完璧につくろうとすると、本当に自分たちに必要なものや自分たちが好きなものが、見えづらくなることがあります。我が家の場合は、本当に必要なものだけをつくろうと考えて、間仕切りは最小限に。2階も個室をつくらず、カーテンで空間を仕切って家族の寝室にしています。長女が小学校に入学するタイミングで、この住まいに入居したので、リビングの一角に長女のデスクを置き、数年後に次女のデスクを隣に並べて子どもたちのスペースにしました。必要になったら2階に壁をつくって子ども部屋にすることも考えていますが、今のところ子どもたちから「個室がほしい」という声はなく、家族の気配を感じながら、ダイニングテーブルや自分のデスクで勉強するスタイルが気に入っているみたいです。

――土間や小上がりも広さがあり、空間のゆとりを感じさせますね。
Yさん 土間や小上がりも余白として、何でも使える空間にできるよう広めにとっています。子どもの勉強スペースとリビングは引き戸で仕切ることもできるので、小上がりスペースは客間としても使えます。昨年犬を飼い始めたので、土間は犬のスペースにしようと思いましたが、リビングのソファが好きみたいで、あまり土間では過ごしてくれません(笑)。当初、犬を飼う予定はなかったのですが、土間のような余白をつくっておくと、そういった変化にも合わせていけると感じています。

――浴室と洗面室は2階にあり、浴室はバルコニーに面していてとても開放的ですね。洗面室もかなりの広さがありますが、広い水まわりをご希望だったのでしょうか?
Yさん バルコニーもつくり直していて、コの字型で出入り口が2つあり、回遊できる造りになっています。バルコニーも余白の1つですね。洗面室は広くしておくことで、部屋のようにも使える空間になればと考えていました。リノベ-ション時は想定していませんでしたが、コロナ禍のリモート会議で、この広い洗面室が大活躍しました。子どもたちもずっと家にいたので、個室のように使える洗面室があってよかったです。
――仕上げについては、どのように考えられたのですか?
Yさん 仕上げは予算をかけずシンプルに、過度につくり込まないことを意識しました。経年した既存の柱や梁などは、デザイン的にも重要な要素。それらと相性のよい素材として、突板フローリング、塗装壁など、自然素材を中心に選び、ビニール系の素材はできるだけ避けました。キッチンの収納部分も木で造作しましたが、使い心地もよく、経年変化によって味わいが増してきて、とても気に入っています。
中古戸建てのリノベーションは、
住宅性能の向上にしっかり予算をかける
――庭には立派な樹木や植栽が整えられていますね。こちらの庭もリノベーションしたのですか?
Yさん 庭は暮らし始めてしばらくしてから庭リノベのプロに依頼して、整備してもらいました。もともと植えられていたサクラ、モミジ、ウメ、カキなどの落葉樹を活かし、石をグリッド状に配置して、道路に面して設けられていた塀を撤去しました。庭をオープンにしたことで、ご近所さんから話しかけられる機会も増え、交流が深まっています。庭が広いので、雑草を抜いたり落ち葉を掃除したりするのは大変ですが、果実が実ったり、花が咲いたりする変化を、家族やご近所さんとともに楽しんでいます。最初は庭まで手がまわりませんでしたが、後から手を加えられる部分は、暮らしながらゆっくり考えていくのもいいと思います。
――暮らしながら少しずつ整えていくのもリノベーションの楽しみ方の1つですよね。反対に最初にやっておいたほうがいいことはありますか?
Yさん この住まいは、築46年ということもあり、構造だけを残し、フルスケルトンにして大規模なリノベーションをしました。その際、耐震性能の確保や断熱性能、気密性能にはとくに力を入れ、次世代省エネ基準相当をクリアしています。リノベーションをしたのは2018年で、今ほど住宅性能は重要視されていませんでしたが、リビタでは早い段階から、調査・診断を徹底して、耐震性、断熱性、気密性の向上に取り組んできました。実際にこの住まいもリビタの基準に沿ってしっかり住宅性能を向上させたことで、とても快適に過ごせています。ほぼワンルームで天井が高く気積の大きい空間ですが、夏は1階と2階1台ずつのエアコン、冬は基本的に床暖房のみで対応が可能です。中古戸建てにおいて、住宅性能が現在の基準に合っていないと、資産価値が下がっていく可能性が高く、後から施工することも難しい部分です。2025年4月から、新築住宅では省エネ基準適合が義務化されました。今後は中古住宅にもその流れがくるはず。目には見えないところですが、これから戸建てリノベをするなら、性能はしっかり向上させておくことをおすすめします。
――ご家族が住まいに合わせて大らかに暮らしていらっしゃる様子がよくわかりました。今後、手を加えたい場所や検討していることはありますか?
Yさん 私たち家族は想像していたよりも、状況に合わせて暮らしていくのが得意だったようで、子どもたちが成長したり、犬を迎えたり、暮らしは少しずつ変わっているのですが、今のところ大きな施工をしなくても、快適に暮らせています。家具やアートなど、気に入ったものを揃えていくことは今後も楽しんでいきたいです。また、設備などを導入することで、現状の基準に合わせて省エネ性能を上げていけるといいなと考えています。自分で試してみたくて、3年前に太陽光発電システムを搭載したのですが、昨今の光熱費高騰を受けて、やっておいてよかったと感じています。設備は後からでも導入できるため、最新の情報を取り入れながら、資産価値を維持していきたいと考えています。
子どもの成長や変化を受け止め、家族の暮らしとともに大らかに育っていく住まい。Yさん家族の住まいづくりと暮らしぶりには、戸建てリノベの自由さと可能性が詰まっていました。性能や広さ、余白の設計など、自分たちの住まいに本当に必要なものを見極め、大切なポイントにしっかりと予算をかける姿勢には、多くのヒントがあるはずです。次回はどんな社員が、どんな住まいを見せてくれるのでしょうか? ぜひお楽しみに!