『ローカルズオンリー』ムラカミジンさんインタビュー「他者は面白い」人が集まる場づくりの極意KIRO 広島|まちとのつながり

Connection to Town
暮らし再発見マガジン のくらし by ReBITA
まちとのつながり

『ローカルズオンリー』ムラカミジンさんインタビュー
「他者は面白い」人が集まる場づくりの極意
KIRO 広島

目 次
  1. 1”旅の給水所”の始まり
  2. 2みんなで集まり・みんなで宣伝して・みんなで帰る
  3. 3自分と対極にいる人は面白い
  4. 4原爆ドームの対岸にあるベンチ
  5. 5川沿いを散歩
  6. 6『亀屋』の川通り餅

”ローカルの新しい魅力をシェアする”ライフスタイルホテル THE SHARE HOTELS。『KIRO 広島』は”瀬戸内ローカルへの分岐路”をテーマに、広島市から新たな旅路を提案するホテルです。今回は、バリスタが日替わりでドリンクを提供する『cicane -liquid stand-旅の給水所』や、3階『THE POOLSIDE』で不定期開催している”プールビラキ”の企画・運営などを担当しているムラカミジンさんに話を聞きました。

”旅の給水所”の始まり

ー最初にKIRO 広島の空間を見た感想は?

この建物は元々は整形外科の病院でした。職場に近かったので、仲間たちとサンルームを見上げて「あそこは何だろう?」と話していたんです。KIRO 広島になって初めて3階を見て、象徴的な場所だと感じました。リノベーションという考え方はここまでデザインに昇華できるのだなと。装飾的なデザインではなく、用途に合わせたデザインをするという既存の活かし方をしていたので、すごく綺麗だと思いました。当時、広島にはそういう空間があまり無かったんです。食べる・飲むなど目的が分かりやすい空間が多くて、使い手に「自由に使っていいよ」と目的を委ねる場所が出てきたのは最近です。KIRO 広島の空間には、「私ならこうしたい・やってみよう」という思いが浮かびやすい、優しい余白があると思いました。

ーそういう空間で、ムラカミさんは『cicane -liquid stand-』を作りました。どんなふうに始まったのですか?

1階を初めて見た時は何も無くて、「何かやりましょう」というところから始まりました。ちょうどアパレルショップ内にインショップとしてカフェを取り込んでいくのがベーシックになった時期で、ホテルにインショップでドリンクを飲める場所があると便利だし、雰囲気を和らげてくれる役割も担えると考えました。広島以外の地域で”間借り”という現象が出てきた時期も重なっていました。それに、僕の周りでスタートアップをやりたい人や店舗運営に忙しくて本当にやりたいことが出来なくなったという悩みを持つ人たちが集まっていた。この3つの要素と、『コーヒー』『ホテル』というキーワードをどう結びつけるか考えました。

ーcicane -liquid stand-は”旅の給水所”というサブタイトルが付いています。単にコーヒーが飲めるインショップではない、ということですか?

コーヒーだけでなくハーブティー・お茶……最終的には美味しい水でも良いですが、液体全般を扱いたいと思ってliquid standという形式にしました。standという形が決まって、次に中身のあり方と存在の伝え方をどうするか考えた時に、僕が県外で過ごす時に一番いいなと感じるのは、街の人が語るローカルな情報を得られる時だったんです。
今はリサーチ能力の有無に関わらず、キーワードで検索できる時代です。観光名所とそこに付随した情報は自分でリサーチすれば入ってくる。では、それ以外の「この町はあの人が面白い」「このワードで裏メニューが出てくる」といった情報が入ってくる場所があるといい。ホテルだとコンシェルジュが情報を伝えますが、ホテルによって情報が選別されていて、「うちのホテルに泊まる人ならココ」という提案になりがちです。そうではなく、地元のバリスタがいて、地元の人も宿泊者もドリンクを飲みにきて、街の情報が自然に入ってくる”水分補給みたいに情報を得るような場所”になれば良いと思って、旅の給水所と名付けました。

ー結果として、cicane -liquid stand-は地元のバリスタが日替わりでstandに立つ形になりました。

街をガイドできそうな情報を持っている人たちは、普段から街を動き回っているフリーランスや店を構えている人です。ガイド情報を出せるコンシェルジュのような役割が担えて、かつ情報を多種多様にしようとすると日替わりがいい。それに、僕がアパレルをやっていることもあり、”選ぶ楽しさ”を感じてほしくて、コーヒーを選べる状況にしたかったんです。商品をずらりと揃えるのではなくバリスタが日替わりでやることで、“選ぶ楽しさ”も“多様さ”も出せるなと。
KIRO 広島は過ごした時間を体験として提案できればいいなと思います。cicane -liquid standに人を集めるのもいいですが、ホテルの周りに行ってほしい店がたくさんあり、宿泊者が街を動いて街を知ってもらえるという状態のほうが総体として強い。KIRO 広島に泊まることで旅の分岐路に立って、街を回遊すると良いというのが僕の考え方です。

みんなで集まり・みんなで宣伝して・みんなで帰る

ーCicaneのような仕組みづくりの仕事を、他にも多く手がけられていますね。その中でも、『パンタスティック‼®』は、広島を越境して原宿・熊本など全国から呼ばれる企画になりました。どんな経緯で始まったのですか? 

広島県呉市のセレクトショップ『ローカルズオンリー』が広島市内に『CITYLIGHTS』を立ち上げて、そこの企画・店舗運営に関わることになりました。いろんなものをセレクトしていくうちに「どんなものでもセレクトしていいんだな」という気づきが生まれ、セレクトの対象がモノからヒト、コトに変わっていきました。
お客さんが少なくて暇だった(笑)2013年に、野菜をセレクトして移動販売する人・フリーランスでケータリングをやりたい人・ジュースタンドを出したい人が僕の周りにいたんです。CITYLIGHTSがある地域は朝に活動する人が多くて、「僕たちも早起きをして快活に生活してみよう」ってことで、野菜・朝ごはん・フレッシュジュースを扱ういわゆるマルシェができて、僕たちもそこで朝ごはんを食べて……そうやって『あさまちシティライツ』というコンテンツができました。人が集まる場所を体現できた最初の経験です。その後『パンタスティック!!®』やさまざまなイベント企画をやっていくのですが、スキームは全て同じで編集するものがパンやコーヒーに変わっているだけなんです。

ーパンやコーヒーをやる人も、偶然にムラカミさんの周りに集まってきたのですか?

2015年に広島PARCOから、あさまちシティライツとPARCOのイベントを繋げたいという話が出ました。PARCOは広島の中心地にあって、買うものがなくても立ち寄る場所です。もともと僕は、「店は知っているけれど行ったことはない」という人が多いことにジレンマを感じていて、PARCOで何が出来るか考えた時にダイレクトにCITYLIGHTSを好きになってもらうPRではなく、「洋服を好きになってもらう」という裏テーマを持ちつつ、少し手前の「モノを選ぶ楽しさ」を体験してもらおうと考えました。
無意識に選ぶシーンが多いモノをいろいろ考えた結果がパンです。パンは朝昼晩いつでも食べるし、甘い・辛い、おやつ・食事……いろんな選択肢があって、気軽に買える。それに、あさまちシティライツで出会ったパン屋さんに話を聞くと、めちゃくちゃしんどい商売をしているんです。好きだから生き生きやっているけれど、側から見たら作らないと売るモノがなくて、いつ休むんだろうと思う。僕たちと一緒にやるなら広島の象徴的なところで、みんなで集まって、みんなで宣伝して、みんなで元の場所に帰るという媒体的な使いかたをしようと考えました。

ーアメーバのように仲立ちする立ち位置ということでしょうか?

パンタスティック!!®はパン・ジャム・焼き菓子などパンにまつわるモノを幅広く扱う中で、店舗ごとに売れ筋を把握したり、自分がやりたいことを試してみる場所でもあると思っています。僕たちはお客さんを呼ぶ仕組みと場を作り、作る人はパンを作る。お客さんが来る・来ない、売れる・売れないは大きいですが、パンタスティック!!®をイベントと捉えてオーガナイズ側・出店側になると主従関係が付きまとう。そうではなく、僕たちは様々なお店のパンを同じブースデザインで展示販売する、お客さんはパンそのものをフラットに見てもらって選ばれるか・選ばれないか見てみる。「こんな結果になりました」という成功体験を経て、次は何をしようかと回数を重ねていきたいんです。
このスタンスに対して疑問を持つ人と持たない人も分かれます。「まずはやってみよう」という人もいれば「売れ筋は何か? どのくらい売れるのか」と聞く人もいます。でも、出店の意識を統一するよりもパンタスティック!!®に関わる人が「このコンテンツをどう使うか」という思考になればいいんです。店のPRでも、期間限定の店舗を出す感覚でもよくて、「パンタスティック!!®でどう売るか」から「パンタスティック!!®をどう使うか」に思考のシフトチェンジが起きればいいなと。
もう一つ、パン屋さん目線では「コレは売れたけどアレは売れない」という判断があって、そういう視点の気付きをどんどん増やしてほしいです。店にずっといると分からないことは多いから、パンタスティック!!®の経験を経て、その人自体が強くなるのが僕たちの一番の目的です。

ームラカミさんが手がける企画には、「選ぶ楽しさを知ってほしい」という思いを感じます。

今は多くの情報が簡単に入るので、選ぶという行為を放棄できます。でも、自分で選んだモノが良かった・悪かったと体験するのは良いことで、自分のものさしが増えていきます。もし美味しくないパンに出会っても、次は周りの情報に惑わされず自分で選ぼうとするかもしれない。自分で選ぶ人が増えれば、巡りめぐって洋服屋に来るお客さんを増やせるのではないか。自分で選んだ好きな洋服を着ようという人が増えればいいなと思っています。
それに、良い選択肢が増えることはポジティブですよね。手がかりが何もないよりも選択の場所があるのは良いことだと思うんです。

自分と対極にいる人は面白い

ー様々な場を作っているムラカミさんにとって、テンションが上がるのはいつですか?

僕から見て良いと思うものを、他の人は反対側から見て良いと思うのは、一方向だけの”良い”じゃない。そうなると、結果的に良いことが多いと気付きました。「僕はそう考えない・やらない」ということをやっている人と話すと、魅力が増して実現させたくなります。
僕の周りには、発する言葉の強度がすごい人や美味しいものを作る人など僕と対極の人たちがいます。適材適所で、例えば、仕組み作りが得意な僕がサッカーのゴールを決めるのではなく、敵へ与えるダメージが強い人がゴールを決めた時にやりがいや達成感を感じます。

ームラカミさんが仕組みを作った後は、集まった人たちが上手く使っていけばいいと。

僕は休みたいし、ゆっくりしたい(笑)。僕が強く意識するのは仕組みを作ることなので、始まったら終わりという感覚はあります。もちろん仕組みのアップデートは必要ですが、始まったらプレーヤーがいるのでバトンタッチする。一人でやろうとしたり、ずっと関わろうとすると、その先の想像がついてしまう。でも他の人がやると想像のつかない化学反応が起きます。その瞬間を体感することがモチベーションになっています。

ーcicane -liquid standだと、魅力やモチベーションをどこに置いていますか?

cicaneと同じような仕組みの業態で店をやる場所が出てきて、店舗を持つ以外の選択肢が増えてきた実感があります。店を持たない形の活動方法が出てくれば、それだけ様々な入り口から知ってもらえます。
コーヒーショップって、“有名店”とか“美味しい”とかコーヒーを飲む目的でしか行かないんです。でもコーヒーショップ側は、コーヒーにまつわることを盛り上げたいと思っている。目的が違うからって自分たちのコミュニティを閉じていると、どんどん専門用語になって余所者を排除してしまい、盛り上げたいのに言葉が通じなくなる。cicaneはなるべく「コーヒーを飲みに来ている」感覚を薄くして、コーヒーの入り口を変える役割が担えると思います。「なんかオープンな感じだなあ」と、そんな『場所』でいいかなと思っています。

『ローカルズオンリー』ムラカミジンさんの広島のお気に入り

原爆ドームの対岸にあるベンチ

外から見ると、平和記念公園は原爆ドームや広島平和記念資料館がある場所という見え方だと思いますが、広島の人にとっては町の中心にある緑が多くてぼーっとできる大きな公園です。僕はその原爆ドームの対岸にあるベンチが一番好きな場所です。
平和記念公園がある場所は原爆が落ちる前まで町で一番の繁華街だったそうです。原爆ドームはオーストリアの建築家が設計した建物で、曲線が多いのが特徴です。そういう話を知ったうえでベンチから原爆ドームを見ると、「ああ、今は平和なんだな」と思う。負の遺産が感じられない場所はいいなと思うんです。

川沿いを散歩

広島は川が多くて、町が川で繋がる地形をしています。町なかでも川沿いを歩けるシチュエーションが多いので、ぶらぶら散歩してみてほしいです。観光旅行だと観光地をポイントで巡るので、あいだにある景色は見えなくなると思いますが、広島では川沿いを歩いて小さな発見をしてみてください。

『亀屋』の川通り餅

広島といえばもみじ饅頭で、川通り餅は県外では意外と知られていません。求肥にくるみが入っていて、きな粉をまぶしたお菓子です。お饅頭って形状を変えながら全国にありますが、川通り餅はマニアックでもらったことがないという人が多いので、お土産にすると喜ばれると思います。

related SERVICE
関連のサービス
EVENT & NEWS
イベント&ニュース

ReBITA SERVICE
リビタのサービス

▲ 『ローカルズオンリー』ムラカミジンさんインタビュー「他者は面白い」人が集まる場づくりの極意KIRO 広島|お宅拝見