リビタのひとのくらしとすまい
#3 フットワーク軽く、実験的な住まいづくりで、
経験としてのリノベーションを楽しむ
妻:リビタにてシェアスペースやコミュニティスペースなどの企画・運営を担当
妻:ひとり時間ラバー
妻:アニメ、漫画、哲学
自身の作品や所有しているアートを飾れなかった
プロジェクターの大画面でコンテンツ鑑賞。お互いの趣味や興味を共有しやすくなった
植物を育て始めた
二人で在宅ワークをしやすくなった
くらし、生活をリノベーションするリビタ。豊かな暮らしを追求した個性的な住まいを手掛けるリビタの社員は、どんな住まいでどんな暮らしを送っているのでしょうか。不動産、建築、住まいづくりのプロであるリノサポコンサルタントが聞き手となって、住まい選びのプロセスや住まいづくりに役立つ情報などを紐解いてお届けします。今回は北区にある築40年のマンションをリノベーションした、リビタの地域連携事業部の力丸朋子さん夫妻が暮らす自邸を訪ねました。
予算と面積から出会った物件に導かれたエリア。
まちを歩いてみた感覚で購入を決める
飯田 以前は賃貸の一軒家に二人で住んでいたのですね。家を購入するに至った経緯を教えてください。
力丸 私は写真を撮るのが趣味で、夫はアートをいくつか所有していてギャラリーもやっているので、住まいに作品を飾る場所がほしいという希望がありました。あとは以前の住まいが古い木造だったので、真冬と真夏は空調の効きも悪く、光熱費もかかるという不満もあり、次の賃貸の更新までには、自分たちが理想とする住まいをつくってみたいよねと話していて、家を購入することを計画していました。
山本 予算的に新築は考えておらず、仕事で店舗やオフィスの設計を手掛けているため、自分で設計をしてみたいという気持ちもあり、中古を買ってリノベーションをすることを前提に、リノベーション済みではない物件を探していて、友人からこの物件を紹介してもらったのです。
飯田 この物件の購入の決め手はどんなところでしたか? エリアの決め方についてもどのように考えたのか気になります。
力丸 一番は予算と面積が条件に合っていたこと。エリアから決めたわけではなく、予算と面積からエリアとしてはこの辺りが妥当ということがわかってきて、この物件に出会いました。見学したときにまちを歩いてみて、暮らしやすそうないいエリアだなと感じたことは大きかったかもしれません。
山本 実は以前の賃貸に引っ越す前にも、購入を考えて探していた時期があったのですが、そのときは挫折しているんです。10軒以上見学したけど決められなかった。知識も不足していたし、途中でリノベーション済み物件を見学したりして、判断基準もブレブレでした。結婚前で初めて二人で住むタイミングだったので、コミュニケーションも不足していて、物件を買うことに対してイメージが固まっていなかった気がします。今回は最初に見学したのがこの物件だったのですが、どんな暮らしをしたいかというビジョンが固まってきていたこともあって、迷わず決めることができました。
飯田 挫折したときは一緒に住む前で、まだ二人の足並みが揃ってなかったんですね。ご夫婦の場合、コミュニケーションが取れていて、住まいへの思いが共有できていることはすごく大事だと思います。一方が乗り気でない場合やテンションに差があると、なかなか上手くいかないことも多いですから。
キッチンとダイニングを小上がりにして、
開放感をキープしながら収納を兼ねる
飯田 リノベーションではどのようなポイントにこだわりましたか? 目指した住まいや暮らし方について教えてください。
山本 以前の賃貸で暮らしている間に、自分でたくさん家具をつくっていて、それを使いたいと思っていました。アートや写真を飾る場所とともに、家具の配置も考えながら間取りを導いていったという感じです。あとは、ものが多くて、収納量がかなり必要だとわかっていたので、リビングの広さや開放感をキープしながら、収納を兼ねるような空間にしたくて、キッチンとダイニングを小上がりにして、床下を収納として活用できるようにしました。手前は引き出しで、奥は蓋を開けて出し入れできるようになっています。
飯田 小上がりにしたことで、収納という印象をやわらげながら広いスペースが生まれていますよね。床下の収納にはどんなものをしまっているのですか?
力丸 ストックの日用品とかDIY用の工具、フィルムとか私の写真用品も結構あります。置き場所に困るものや出しておきたくないものですね。通常コンテナを買ってしまっておくようなものは、床下に収まっているから助かっています。
飯田 小上がりの収納の効果で、見えている空間がすごくすっきりまとまっている感じがします。造作家具も軽い印象で、アートや写真とともによい感じで収まっていますね。確かにコンテナなどがあると違和感が出てくるから、収納量が十分にあることがすっきりした印象をつくるポイントかもしれないですね。
力丸 住まいのなかに居場所をたくさんつくることも意識しました。パーティションで仕切って、一人掛けのリクライニングチェアを置いて読書スペースをつくったり、小上がりに座椅子を置いてプロジェクターで動画を観たり、場所を変えていろいろな過ごし方ができます。
飯田 パーティションで仕切るのはいいアイデアですね。壁や家具などで仕切ると圧迫感が出そうなときに、カーテンで仕切る案がよく出ますが、カーテンを設置するのもレールが必要だから制約があります。パーティションは置き家具のようなものだから、移動もできるし、部屋干しやものを引っ掛けて飾るとか、他のことにも使える。気軽に空間を仕切る手段として取り入れやすそうです。
置かれた状況を楽しんで、軽やかにやってみる。
経験としてのリノベーションに価値がある
飯田 アートを飾る場所をつくるために、工夫したことや素材の選び方などで気をつけたことなどはありますか?
山本 どんな作品を置いても許容できる住まいにしたいなと思いながら、天井や壁の素材を選びました。友人の相澤安嗣志さんの作品は、設計の段階から壁に彫り込みをつくって飾る場所を整えたのですが、それ以外は玄関や廊下の壁などに飾っています。
飯田 タイルや洗面のミラーなど、ホテルや商業施設をイメージさせるディテールも散りばめられていますね。
山本 仕事で商業施設の設計をやっているので、使ってみたい素材を実験的に取り入れているところもあります。
飯田 物件を見学したときに想定していたことと、解体や施工が始まってから変わったことや想定外のことなどはありましたか?
山本 解体してからトイレの配管が移設できないことがわかって、限られた面積にトイレや洗面室などの水まわりを収めることに苦労しました。その分、玄関が広くなったので、斜めに下足棚を造作して、その上に写真やアートを飾るスペースを広めにつくれたことはよかったです。
力丸 解体後の状態は予想よりきれいで、下地もそのまま流用できた部分もあり、スムーズに進んだと思います。二人で意見を出し合って、図面ができた段階で、客観的に誰かに見てもらいたいと感じて、リノベーションの仕事をしている知人にも意見を求めました。
飯田 自分の住まいを設計する難しさというのもわかります。お施主さまの住まいならいろいろ提案できることも、自分の住まいだと制限がかかってしまう面もあるかもしれませんね。
山本 自分たちで予算を決めているからこそ、そのハードルが先にきてしまうもどかしさはありますね。
力丸 最初は回遊性のある間取りにしたいという希望もあったのですが、トイレの配管の問題や面積的にも難しくて、理想としていた間取りからは変化していったけれど、コンパクトななかにいろいろな要素を入れることができて、やりたかったことは叶えられたと感じています。
飯田 引っ越すことになったら、またリノベーションをしたいですか?
力丸 やってみたいですね。今度リノベーションをするなら、オープンキッチンにして、料理や食事をしながらコミュニケーションが取れる空間にしたいです。
山本 今回はキッチンを重要視していなかったのですが、暮らし始めてから料理をする機会が増えて、リビングやダイニングの近くにキッチンあることがすごく重要だと感じています。
力丸 二人でキッチンに並んで料理するようになって、「ちょっと狭いね」と話したりしていますが、それも暮らし始めて二人でキッチンを使うようになってわかったことです。
飯田 将来的に2回目のリノベーションもありそうですね。今回の住まいづくりは、経験としてのリノベーションという感覚なのでしょうか。二人とも置かれた状況を楽しめちゃうお人柄で、エリアにも縛られず、物件探しも住まいづくりも、とても軽やかに実験的にやってみたという印象を受けました。リノベーションってやってみないとわからないことも多くて、回数を重ねると精度が上がっていくように感じています。お客さまも2回目のリノベーションは、前回よりもさらに楽しんでいる方が多いです。経験としてリノベーションを軽やかにやってみるという方が増えると、住まいはもっと楽しいものになるだろうなと思いました。
キッチンやダイニングを小上がりにするという思い切ったアイデアで、収納量の課題をクリアして、すっきりと軽やかな空間をつくり上げた住まい。家具やアートの飾り方も含めて、リノベーションのヒントになりそうなアイデアがたくさん詰め込まれていました。次回も、どんな社員のどんな住まいが登場するか、お楽しみに!