菅野有希⼦さんインタビューVol.6海の近くで考える、エシカルな暮らしかた|住まいのヒント

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住まいのヒント

菅野有希⼦さんインタビューVol.6
海の近くで考える、エシカルな暮らしかた

目 次
  1. 1エシカルな視点で、暮らす場所を見直す
  2. 2毎日使うから、快適さと環境配慮が両立したコスメを選ぶ
  3. 3食べものを選ぶ視点を変えてみる
  4. 4小さな発見と行動を、日常生活に取り入れていく

リノベーションした住まいで暮らすテーブルコーディネーターの菅野有希子さん。インタビューVol.1〜5では、日常に取り入れやすいエコロジーでエシカルな暮らしかたを語ってくれました。今回は、海の近くに住むことを考えはじめた菅野さんから、海の環境に配慮した暮らしかたを聞きました。

エシカルな視点で、暮らす場所を見直す

ー今回のテーマは、海の近くで考えるエシカルな暮らしです。菅野さんが海に注目したきっかけは?

私は東京生まれ東京育ちで東京が好きなのですが、このマンションに住んで5年が経ち、足りないと感じることが増えてきました。例えば窓からの景色があまり良くなくてカーテンを思いきり開けられないなど、ふとした瞬間で気になるようになってきたんです。それに、40歳になって年齢的にも新しいことにチャレンジするなら今のうちだと考えるようにもなりました。

やりたいことの一つが、海の近くに住むこと。ずっとタイミングが合わなかったのですが、今は一人で自由なこともあって、海の近くで暮らすことを考えはじめました。

ただ、無理に引っ越しはしません。いきなり物件を買うのはハードルが高いので、お試しで二拠点生活もいいなと思っています。すぐに家を持たずとも、まずは友だちの家や短期滞在の宿泊プランでまちを知って、引っ越すかどうか見極めてもいいですよね。

ー先に家を買う・借りると決めるより、まずは自分が感じるまま柔軟に考えてみるほうがストレスが無さそうです。

そうですね。東京の住まい探しは駅までのアクセスが大切ですが、海に近いまちだと駅の近さは騒音が気になってマイナスポイントになるかもしれません。住まいの考え方がガラリと変化する可能性だってあるので、自分がどんな暮らしかたをしたいのか、フレキシブルに考えようと思っています。

ー暮らす場所を見直しはじめてから、菅野さんの中で変わったことはありますか?

以前は、24時間ゴミを捨てられる都心のマンションがうれしかったんです。でも、環境問題に関心を持ちはじめてからは、ゴミが捨て放題の生活に疑問が出てきました。東京のゴミ処理場は焼却炉が充実していて何でも燃やせますが、ゴミを燃やせば二酸化炭素が出ます。ゴミを分別してできるだけリサイクルしたいけれど、東京ではゴミは消えてなくなる感覚があって、エコなマインドで暮らすことがなかなか難しいです。

そして、海の近くに暮らすことを考えはじめたことで、海の環境を気にかけるようになりました。海の近くに住んでいる友だちに聞くと、観光客の多い夏はゴミが増えるのを目の当たりにすると言います。でも東京にいると、海が汚れていくことに、なかなか実感がわきません。海の近くで、エシカルを意識した暮らしをするのもいいかなと思っています。

毎日使うから、快適さと環境配慮が両立したコスメを選ぶ

ー海の環境を意識するようになってから、菅野さんが取り組んでいることはありますか?

まずは、日焼け止めを変えました。日焼け止めに入っている成分(※)が海に流れ出すと、サンゴが死んでしまうんです。サンゴは海の生態系のベースなので、サンゴが死ぬと連鎖して魚にも影響があることを知りました。海に直接入らなくても、日焼け止めを洗った水が流れ出ることで海にたどりつきます。そこで、海に影響を与えない成分でつくられている『ALLIE』に変えました。

※紫外線吸収剤に入っているオキシベンゾンとオクティノクセイトという成分が、サンゴ礁の白化の原因になっていると言われている。

カネボウ『ALLIE』クロノビューティ トーンアップUV

ーALLIEを選んだ理由は?

以前はオーガニックコスメを使ったこともあったのですが、塗り心地が良くなくて続きませんでした。自然なものが全て肌に優しいかというと、実はそうでもないのです。でも、ALLIEは肌に合って使い心地が良かったので選びました。プラスチックを削減したパッケージであることも良いです。コスメは、自分の快適さと環境負荷のバランスで選んでいます。

もう一つ、海の環境のために変えたコスメがボディスクララブです。スクラブに砂糖を使っている『giovanni』を選んでいます。実は、スクラブ剤にプラスチックが使われている商品は多いです。そして、使ったあとのスクラブはマイクロプラスチックとして海に流れてしまうんです。『giovanni』は砂糖のスクラブなので水に流しても罪悪感がないし、ベリー系の甘い香りが好きです。

『giovanni』シュガー ボディスクラブ スイートラズベリー

ー直接肌に触れるスクラブ剤がプラスチックだと、体内に取り込んでしまいそうで怖いですね。

歯磨き粉もそうですよ。歯磨き粉には歯をつるつるにするスクラブが入っているのですが、ここにもプラスチックのスクラブが使われています。私は『auromere』というインドの天然素材の歯磨き粉を使っています。オーガニックの商品は変わった味もありますが、これは馴染みやすいミントで、洗い上がりも良かったので定番になりました。

左:ボディスクラブ『giovanni』、中央:日焼け止め『ALLIE』、右:歯磨き粉『auromereミント』

私は海の環境に関心を持ってから、水を流すという行為を通してたくさんのゴミを出していることに気がつきました。都心にいると、排水溝に流した水はそのまま消失する感覚になってしまいませんか? でも本当は、河川から海に流れ出ているんですよね。

食べものを選ぶ視点を変えてみる

ー海の環境を考えると、いつも食べている海産物への影響も気になります。

スクラブ剤が海に流れ出した結果、魚がマイクロプラスチックをエサと間違えて食べてしまうという問題があるそうです。そして、人間がその魚を食べてしまう(※)。プラスチックによって海が汚染されるだけでなく、日常で食べている魚も危ない状態だと知って怖くなりました。

※マイクロプラスチックは海中の有害化学物質を取り込みやすいと言われている。汚染されたマイクロプラスチックを食べた魚を、人間が食べることによる人体への影響も懸念されている。

もう一つ気になることがあって。友だちと話しているときに、ちょっと先の未来で乱獲と海洋汚染によって魚がいなくなるかもしれないと聞きました。しかも、自分が生きているうちに起きる可能性もあると知って驚きました。魚がいない海なんて、想像ができないですよね。

ーマイクロプラスチックや魚が食べられなくなる問題を知って、菅野さんが取り組み始めたことはありますか?

一人でできることは限られますが、まずは「MSC認証」という海のエコラベルが付いた海産物を探すようになりました。「MSC認証」とは、海の環境と水産資源に配慮した漁業で獲られた天然水産物の証です(※)。近い未来に魚が食べれなくなる問題は、漁業に関係しています。適度な漁獲量にすることで、魚食が持続可能になるそうです。

※「MSC認証」は天然水産物の適正な管理に関する認証マーク。養殖の水産物については、環境と社会に配慮した養殖場に与えられる「ASC認証」がある。

ー普段の買い物では、「MSC認証」の魚をあまり見かけないです。

そうなんです。スーパーでは、なかなか認証マークの付いた魚介類を手に入れる機会がありません。セブン-イレブンやイトーヨーカドーに売っているようですが、地域によってはまだ置いていません。私ができるのは、認証マークの付いた魚があれば買うこと、そして近所のスーパーで「置いてほしい」と声をあげることなのかなと。

たとえば、ソイミートはもともとオーガニックスーパーにしかありませんでしたが、最近はどこのスーパーでも見かけるようになりました。買う人が増えるほど、商品が充実して買える場所も増えていきます。認証マーク付きの水産物も、これから広まっていくといいなと思っています。

小さな発見と行動を、日常生活に取り入れていく

ー海に近いまちでは、さまざまな団体がビーチクリーン活動を行っています。海洋汚染のニュースを聞くと気持ちが暗くなりがちですが、きれいな海を未来につなぐ活動はいろんなところで起きています。

私も、ビーチクリーン活動に興味を持ち始めています。海の近くで暮らす友だちは、散歩中に目についたゴミを拾っていました。海のそばの暮らしには、大して意識をしなくても海のゴミ拾いをする生活習慣があるようで、いいなと思うんです。

まちを歩いていると、道端に捨てられたペットボトルが転がっていたりしますよね。最近は、ゴミになったペットボトルが劣化して排水溝に紛れて、マイクロプラスチックとして海へ流れ出るところが想像できてしまいます。

今の私ができるのは、自分が捨てるプラスチックを減らすこと。なるべく、プラスチックを使った商品を買わないようにすることです。海の近くで暮らすかどうかに関わらず、どんな場所にいても海の環境のために自分ができる範囲で動いていくことが大切ですよね。

『循環させる暮らし』記事はこちら

『お宅拝見』記事はこちら

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