暮らしを変える光のデザイン。
空間を豊かに彩る、光と影の取り入れ方
さまざまな専門家にお話を聞いて、「リノベーション」や「住まい選びのコツ」をわかりやすく身につけるための「学ぶシリーズ」。前回に引き続き、お話をしてくれたのはインテリアスタイリストの岩佐知布由さんです。居心地のいい部屋をつくるために欠かせない照明の効果的な使い方について、岩佐さんのご自宅を実例に挙げながら、わかりやすく解説していただきました。
照明を考えるための基本のキ
照明が変われば、暮らしが変わる
照明はお部屋づくりの大切なポイントのひとつです。照明ひとつで、部屋の雰囲気はがらりと変わります。インテリアスタイリストとして仕事をするときは、照明計画から携わることも多いのですが、賃貸住宅の場合はそこまでの自由度はありません。それでも工夫次第で、雰囲気のある落ち着いた部屋をつくることは十分に可能です。
私自身、普段は賃貸物件で暮らしているので、今日はそうしたひとりの生活者としての視点から、効果的な照明の使い方をご紹介できればと思います。
照明は“足し算”で考えよう
照明を考える上でまず基本となるのが、空間ごとに最適な明るさを考える、ということです。その空間の用途に応じて、求められる明るさは自ずと変わってきます。そうした細かい調整をしていくために、「備えつけのシーリングライトで部屋を均一に照らす」よりも、照明をいくつか組み合わせて使うことをお勧めします。
照明については“引き算”ではなく“足し算”で考えるといいと思います。複数の小さな光源を組み合わせ、その空間に必要な明るさを満たしてくイメージです。このとき白熱灯などの暖色系の明かりと、蛍光灯などの寒色系の明かりが混在すると、部屋の印象がちぐはぐになってしまうため要注意。まずは空間ごとに、寒色か暖色かを決めておくといいでしょう。
間接照明を上手に活用しよう
やわらかな光が、くつろぎを演出する
ゆったりとくつろげる空間をつくる上で、欠かせないのが間接照明です。あらためて説明すると、間接照明とは、光源を天井や壁、床などに照射させ、その反射光で空間を照らす照明方式のこと。光源が直接目に入らなくなるため、まぶしさを抑えられ、リラックス効果が期待できます。
そのやわらかな光は、洗練されたムードを演出するのにも適しています。商業施設などで多用されるのは、そのためです。自宅でも、寝室やダイニングなどリラックスしたい空間には、積極的に間接照明を取り入れるといいでしょう。ちなみに部屋全体が明るすぎると、間接照明はその効果をほとんど発揮しません。照明は足し算で、と言ったのはこのためでもあります。
光だけでなく、影も楽しもう
間接照明には、壁の色味や質感を際立たせ、空間全体の立体感を演出する効果も。また間接照明を部屋のコーナーに置くと、壁と壁の角が曖昧になり、部屋に奥行きがあるようにも感じられます。
さらに光と影のコントラストが生まれやすくなることも、間接照明の大きな魅力のひとつです。たとえば、大きな観葉植物がある部屋であれば、クリップライトなどで下から照らしてみるのも面白いと思います。葉っぱの影が、壁に大きく映し出され、独特のムードが演出できるはずです。光だけではなく、影も含めて考えることが、間接照明を上手に使いこなすコツとなります。
空間ごとに理想の照明を考えよう
ダイニングは温かく、ドラマチックに
ここからは、実際に私の部屋を例に挙げながら、空間ごとの照明の使い方を具体的に紹介していこうと思います。
まずダイニングの照明は、例えばペンダントライト1灯を吊るす場合、シェードの形状にもよりますが、60〜100W相当の明るさで食卓を照らすと良いと思います。光の色合いについては、電球色〜温白色くらいの方が、料理がおいしく見えるはずです。
照明器具は空間全体を照らす「拡散タイプ」と、光を一点に集める「集光タイプ」に分けられますが、ダイニングの場合は集光タイプのものを選ぶと、まるで食卓にスポットライトが当たっているようなドラマチックな雰囲気を演出できます。
ちなみにシリーリングライトの土台となる「埋め込みローゼット」は部屋の中央にあるけれど、ダイニングテーブルは壁際にずらして置きたい、という方も多いはず。そういうときは、テーブルの真上の天井にフックを取り付け、そこを経由するようにペンダントライトのコードを引っ張ってくると、簡単に照明の位置を調節できます。安全性を確保するために、重い照明の時はフックの耐荷重と天井の下地材の有無を、必ず確認するようにしましょう。
ペンダントライトを使う場合、食卓の天板から照明の下端までの距離は、60~70cm程度が最も落ち着くと言われています。恐らく多くの人がはじめは「ちょっと低いかな」と感じるかと思いますが、ぜひ一度試してみてください。
リビングはさまざまな照明を組み合わせて
私の部屋はリビングが小さく、窓も大きいため、日中はダイニングと兼用のペンダントライトひとつで、明るさは十分です。暗くなってきたら、そこに必要な光を足していきます。
たとえば、引っ越してきた当初、壁際に置いている椅子の周辺が暗かったので、最初はフロアライトを置こうと考えました。けれどちょっとスペースが足りなかったんです。そうかと言って、ブラケットライトを設置するのは、賃貸物件としては少しハードルが高いと感じました。
そこで裸電球型のペンダントライトを、フックに引っ掛けて使うことにしました。元々付属していた引掛シーリングに変換アダプターをつけて、コンセントから直接電源をとっています。ボール球の透明なガラスの質感や、フィラメントのレトロな雰囲気も含めてなかなか気に入っているのですが、白熱電球は熱くなるので周囲には十分に気をつけてください。
手元だけ明かりがほしいというときは、卓上ライトを使うことも多いですね。最近は、USB充電式のポータブルライトの品揃えが充実していて、オブジェとしても使えそうなさまざまなデザインの商品が発売されています。お気に入りのアイテムを探してみるのも楽しいのではないでしょうか。
キッチンと玄関は使い手に合わせて
キッチンは、手元を真上から照らすように蛍光灯がついていることが多いと思います。作業をする上では合理的なのですが、私は寒色の光がどうしても苦手で……。壁のコンセントに暖色系のLED電球をそのままつけて使っています。料理をするには、これで十分ですね。
食器棚には角度を変えられるスポットライトを設置。壁に向かって光を当てると、間接照明としてキッチンの隅をやさしく照らしてくれます。ガラスや陶器に反射した、光と影のゆらめきが魅力です。
玄関にはダウンライトを設置していますが、実はあまり使っていません(笑)。やっぱり全体的に明かりは控えめの方が好きなんです。玄関ホールがある家であれば、その高さを活かして、縦に長いデザインのペンダントライトや、シャンデリアのような照明をつけても素敵だと思います。
キッチンや玄関周りに限りませんが、そこで暮らす人の年齢に合わせて、光量を変えていくことも大切です。一般的に年齢が上がっていくと視力が落ちて、まぶしさも感じにくくなるので、そういう場合は、空間全体を少し明るめにしておいた方が、安全面からも好ましいと思います。
寝室は何よりも「くつろぎ」を大切に
寝室は、やはり間接照明を中心に組み立てるといいでしょう。目に直接光が入らないので、入眠もスムーズになります。光量もダイニングやリビングより控えめに。調光できるタイプを選ぶのも良いと思います。
寝室で読書などがしたいのであれば、そこだけ必要な明かりを足してあげればいい。ベッド脇などにテーブルがあるのであれば、そこにサイドライトを置いてもいいし、フロアライトで明るさを補うのもいいと思います。その人のライフスタイルに合わせて、リラックスできる空間をつくることが、何よりも大切です。
まとめ
光はかたちがないものなので、お部屋づくりを考える際についつい後回しにしてしまう人も多いかと思います。けれど照明は、想像以上に空間の心地よさを大きく左右するものです。「なかなか落ち着く部屋がつくれない」と悩んでいる方は、一度照明を見直してみるといいかもしれません。光と影を上手に使いこなすことができれば、あなたの暮らしがもっと豊かなものになるはずです。